東京海上の比などでの植林、1千億円超の経済価値創出

7年連続でのカーボン・ニュートラルや「セブ行動計画」にも寄与

2020/10/04

 東京海上ホールディングスは、気候変動や自然災害の激甚化という社会課題の解決に貢献していくために、東京海上グループの方針や取組みを「気候変動に対する基本的な考え方」としてまとめ、9月28日に公表した。

 その発表によると、東京海上グループは、「安心と安全を届けるという事業目的は、保険商品の提供だけに留まるものではない。専門知識を活用することで、大規模自然災害が発生した場合の被害を最小限に抑え、復旧・復興を促進することができる」と考えている。国立研究開発法人防災科学技術研究所などと連携し、新しい防災・減災ソリューションの開発にも取り組んでいる。

 東京海上グループは、アジア太平洋地域では、2015年から⺠間セクターを代表し、アジア太平洋経済協力(APEC)の財務大臣プロセス(FMP)における災害リスクファイナンスおよび保険(DRFI)の革新と促進を支援している。DRFIは、アジア太平洋地域の持続可能な財政の将来へのロードマップ「セブ行動計画」の下での優先政策課題として特定されており、深刻度を増す気象災害の影響を受けるコミュニティーの強靭性を高めることを目的にしている。

 自身の事業においても、気候への悪影響に対処すべく、CO2排出量の削減目標を設定している。東京海上日動では、2020年までに2006年のベースラインと比較して事業活動に伴うCO2排出量を40%削減する目標を設定し取り組んでいる。また、2006年のベースラインと比較して、2050年までに60%削減という⻑期目標も掲げている。

 また、東京海上グループとして、2013年度から7年連続でカーボン・ニュートラルを達成した。これは、フィリピンなどアジア太平洋地域でのマングローブ植林を通じた継続的な国際貢献の取組みによるものである。マングローブ植林は、脅威にさらされている生態系を活性化するだけでなく、CO2排出の吸収と固定を通じてCO2排出量をオフセットする。ちなみに、東京海上グループの2019年度のCO2排出量11万1,172トンに対し、CO2吸収・固定・削減量は13万3,617トン(マングローブによる吸収・固定:13万トン、グリーン電力証書:3,617トン)であった。

 1999年にマングローブの植林を開始し、2020年3月31日現在、フィリピンなどアジア太平洋地域9カ国の1万1,240ヘクタールにマングローブを植林した。そして、1999年4月から2019年3月末までの20年間のマングローブ植林により生み出された生態系サービスの経済価値は累計1,185億円に達しているとの試算結果を得ている。

 マングローブは「海の森」と呼ばれ、アジアやアフリカ、南アメリカ等の熱帯・亜熱帯地方で、海岸線や河口付近等の汽水域(海水と淡水が混じりあう場所)に生い茂る植物群の総称である。地球温暖化の主要因と言われる二酸化炭素(CO2)を吸収し多く蓄えること(固定)で地球温暖化の抑制に役立つ。また、高波や津波、海岸浸食、洪水等の自然災害から人々の生活や生態系を守る「みどりの防波堤」の役割を果たす。実際に2004年12月のインド洋大津波や、2013年11月にフィリピンに甚大な被害をもたらした台風30号(フィリピン名:ヨランダ)襲来の際には、マングローブ林の背後に暮らす多くの人々や建物等が守られた。

 さらに、2019年10月には、東京海上グループは、国連「SDGsの目標14の達成に向けた海洋行動コミュニティー」に参画し、2007年に公表した「マングローブ植林100年宣言」を改定して、マングローブを基盤とした解決策の提供を通じて価値創出を目指す「マングローブ価値共創100年宣言」を公表した。また、省エネルギー対策を採用し、エネルギー消費量の削減や、エコ安全ドライブやリサイクル部品の活用にも取り組んでいく方針である。