日清食品の比即席麺事業好調、9カ月間で19%増益に

新型コロナ巣籠り需要拡大、外食規制緩和後は増益率縮小

2020/10/25

 日清食品グループ(日清グループ)は、フィリピンにおいて、ゴコンウェイ財閥の有力食品企業ユニバーサル・ロビーナ・コーポレーション(URC)との合弁企業「ニッシン・ユニバーサル・ロビーナ・コーポレーション」(ニッシンURC、1996年設立、会計期末12月、本社:マニラ首都圏ケソン市)を通じて即席麺(インスタントラーメン)事業を展開、カップ麺ではトップ企業となっている。現在の日清グループのニッシンURC株式保有比率は49%となっている。

 このニッシンURCの業績が堅調に推移している。10月23日に発表されたURCの2020年9カ月間(1月~9月)事業報告書によると、表1のように、ニッシンURCの今9カ月間の売上高は前年同期比(以下同様)17%増の55億5,500万ペソ、EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は23%増の11億2,900万ペソ、純利益は19%増の6億9,000万ペソで二桁増収増益決算となった。

 フィリピンにおけるカップ麺需要の拡大を背景に、近年は増収増益が続いてきているが、2020年は新型コロナウイルス感染対策としての地域隔離措置の下での外出・移動制限措置や外食事業規制(店内飲食禁止、持ち帰りと配達のみ)のもとでの家庭内食事(内食)需要や保存食需要、すなわち巣籠り需要が加わったことで、業績が続伸基調となっている。

 ただ、厳しい地域隔離措置が講じられた3月央から5月央までは巣籠り需要が業績に大きく寄与したが、同措置が徐々に緩和され条件付きながら外食企業での店内飲食が可能になった以降は、巣篭り需要効果がやや稀薄化したといえる。表2のように、第2四半期は30%増収29%増益、上半期累計では23%増収30%増益であったが、第3四半期は6%増収、0.5%増益と成長率が鈍化した。

 なお、フィリピンでの袋麺のトップ企業は、「ラッキーミー」ブランドで知られるモンデ・ニッシンである。社名には「ニッシン」が含まれており紛らわしいが、モンデ・ニッシンは現地資本企業であり、日清食品など日本企業との資本関係は全くない。

 表1.ニッシンURCの業績推移(単位:百万ペソ、2019年までは年間実績、2020年は9カ月間実績)

項目 16年 17年 18年 19年 20年9カ月間  前年同期比
売上高 4,361 5,103 5,815 6,345 5.555 +17% 
EBITDA 777 890 975 1,156 1,129 +23% 
純利益 475 559 603 717 690 +19% 
総資産 2,281 2,686 2,583 2,583 3,982 +46% 
(出所:URC年次報告書や事業報告書などから作成)

 表2.ニッシンURCの2020年四半期別業績推移(単位:百万ペソ)
項目 第1四半期 前年同期比 第2四半期 前年同期比 第3四半期  前年同期比
売上高 1,797 +17% 1,956 +30% 1.800 +6% 
EBITDA 389 +31% 392 +29% 348 +10% 
純利益 239 +31% 240 +29% 211 +0.5% 
(出所:URC年次報告書や事業報告書などから作成)

 東南アジア地域は、麺食文化がもともと存在することに加え、近年の継続的な経済成長による即席麺の消費量・販売額が堅調に推移している。世界ラーメン協会(本部:大阪府池田市、事務局:東京都新宿区新宿)発表によると、フィリピンの2019年の即席麺の総需要は前年比2.3%減と成長一服ながら、38億5,000万食で世界第8位、ASEANではインドネシアとベトナムに続く第3位の市場となっている。そして、世界総需要約1,064億食のうちの3.6%を占めている。一人あたりの年間消費量は40食に近づいている。
 
 特に近年は1人当たりのGDPや可処分所得が増加したことにともない、より付加価値の高いカップ麺の需要が高まっており、ニッシンURCの主力製品である「Cup Noodles」の販売は好調に推移している。そして、フィリピン即席麺全体の需要の伸びを上回る成長を続け、上記のようにニッシンURCは増収増益を続けている。