サンミゲル、9カ月間の純利益73%減の107億ペソ

サンミゲルビールの純利益は111億ペソ、逆風下で健闘

2020/11/06

 フィリピンを代表するコングロマリットとなったサンミゲル(SMC)が、11月5日、2020年第3四半期(7月~9月)と9カ月間(1月~9月)の決算速報を発表した。
 
 2020年9カ月間の純収入は前年同期比(以下同様)30%減の5,311億ペソ、営業利益は53%減の415億ペソ、純利益は73%減の107億ペソと大幅減収減益決算となった。EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は32%減の838億ペソであった。2月までは堅調に推移していたが、3月に入ってからの新型コロナ感染拡大加速やその対策としての地域隔離措置が大きく影響した。ただし、地域隔離措置が緩和されつつある第3四半期は9%増益と回復に転じている。
 
 SMCグループの食品と飲料事業が大統合して発足した「サンミゲルフーズ&ビバレッジ(SMFB)」の売上高は14%減の1,946億ペソ、営業利益は39%減の205億ペソ、純利益は37%減の144億ペソであった。SMFBの食品部門(サンミゲルフーズ)の純売上高は4%減の967億ペソ、営業利益は17%減の27億ペソ、純利益は13%減の15億ペソであった。
 
 ビール製造子会社サンミゲル ブリュワリー(SMB、サンミゲルビール)の純売上高は30%減の725億ペソ、営業利益は47%減の148億ペソ、純利益は44%減の111億ペソにとどまった。サンミゲルビールの業績は近年好調に推移してきたが、今9カ月間については、マニラ首都圏やその他の地域の主要都市での酒類販売禁止や外食事業制限措置、酒税増税などが響き、減収減益を余儀なくされた。ただし、非常に強い逆風の中では底堅い推移であったといえよう。また、上半期は39%減収62%減益であったが、第3四半期は12%減収8%減益と底打ちしつつある。サンミゲルビールには、キリン・ホールディングス(キリン)が約48%出資している。

 一方、洋酒のヒネブラサンミゲルの純売上高は18%増の253億ペソ、営業利益は41%増の31億ペソ、純利益は67%増の22億ペソと好調であった。特に、第3四半期は56%増収、177%増益と絶好調であった。巣籠り需要の寄与という要素もある。
 
 パッケージ部門(サンミゲル山村パッケージング)の売上高は16%減の222億ペソ、営業利益は74%減の6億5千万ペソと減収減益であった。医薬品業界向けは好調であったが、酒類・飲料業界向けが低調であった。ただし、年初2カ月間では7%増収というペースであった。
 
 多角化事業の一つである電力事業の収入は16%減の879億ペソ、営業利益は3%減の290億ペソ、純利益は27%増の145億ペソであった。サンミゲルの電力事業は、2010年第3四半期から持株会社SMCグローバル・パワー・ホールディングスのもとに集約されている。
 
 石油製品部門(元売り最大手のペトロン)の売上高は43%減の2,164億ペソ、最終損益は126億ペソの赤字で、前年同期の36億ペソの黒字から急悪化した。原油価格急落やそれに伴う在庫評価損、外出・移動制限にともなう需要減などが響いた。ただし、第3四半期(7月~9月)の総販売数量は第2四半期比48.6%増加、最終損益が16億3,000万ペソの黒字に転換するなど、回復の兆しを見せている。
 
 インフラ事業担当のSMCインフラストラクチャーの純収入は42%減の103億ペソ、営業利益は76%減の21億4千万ペソと不振であった。外出・移動制限により、運営している有料道路の交通量が減少したこと、インフラ工事中断などが響いた。
 
 更なる多角化や事業基盤拡大の過程で有利子負債が膨張し、2020年9月末時点で9,380億ペソに達し、2019年末の8,520億ペソから10%増加している。一方、現金残高も3,260億ペソと高水準。総資産は1兆8,730億ペソで、2019年末の1兆8,180億ペソから3%増加している。総負債対自己資本比率は2.17倍(2019年末2.16倍)、有利子負債対自己資本比率は1.58倍(同1.48倍)、純負債対自己資本比率は0.87倍(同0.84倍)となっている。