ADB、今年の比成長率予想を-8.5%へ下方修正

ASEAN主要国で最悪に、21年は+6.5%予想継続

2020/12/11

 アジア開発銀行(ADB)は、12月10日、「アジア経済見通し2020年版改訂版補足版」(ADOU2020補足版)を発表した。
 
 ADOU2020補足版において、アジア開発途上国の2020年の国内総生産(GDP)の成長率予想に関しては、今年9月時点のマイナス0.7%からマイナス0.4%上方修正され、2021年予想は6.8%が据え置かれた。しかし、地域によって見通しは異なり、東アジアは2020年中に成長へと向かう一方で、その他の地域は2020年はマイナス成長にとどまる。大きな影響を有する中国の成長率は、2020年2.1%、2021年7.7%と予想されている。

 東南アジア地域に関しては、特にインドネシア、マレーシア、フィリピンにおいて新型コロナウイルスの感染とそれに対応するための封じ込め対策が継続しており、依然として切迫した状況下にある。同地域の2020年の成長率予想は、9月時点のマイナス3.8%からマイナス4.4%に下方修正された。2021年の予想も引き下げられ、9月時点の5.5%に対し5.2%へと下方修正された。

 なお、ベトナムの2020年成長率予想は9月時点の1.8%から2.3%へと上方修正された。東南アジア主要国で唯一のプラス成長と予想されている。

 フィリピンの成長率予想に関しては、9月時点のマイナス7.3%からマイナス8.5%へと更に下方修正され、東南アジア主要国で最悪の落ち込み予想となっている。新型コロナウイルス感染の影響、特にGDPの約70%を占めるルソン全域対象の隔離措置の影響が響く。フィリピン経済を下支えしている海外からの送金が減少する懸念もある。経済活動正常化という前提で、2021年は6.5%へ回復すると予想されている。フィリピンのインフレ率は、2019年実績2.5%に対し、2020年2.5%、2021年は2.6%と予想されている。

 東南アジア等の実質GDP成長率推移(単位:%、予想はアジア開発銀行)
国名など 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年予 2021年予
アジア開発途上国 6.1 6.1 6.2 5.9 5.1 -0.4 6.8
 東南アジア 4.7 4.9 5.3 5.1 4.4 -4.4 5.2
   フィリピン 6.1 6.9 6.7 6.3 6.0 -8.5 6.5
   インドネシア 4.9 5.0 5.1 5.2 5.0 -2.2 4.5
   マレーシア 5.1 4.4 5.7 4.8 4.3 -6.0 7.0
   シンガポール 2.9 3.2 4.3 3.4 0.7 -6.2 5.1
   タイ 3.1 3.4 4.1 4.2 2.4 -7.8 4.0
   ベトナム 6.7 6.2 6.8 7.1 7.0 2.3 6.1
(出所:アジア開発銀行資料より作成)

 フィリピンのマクロ指標推移(単位:%、予想はアジア開発銀行)
  項目等 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年予 2021年予
GDP成長率 6.1 6.9 6.7 6.3 6.0 -8.5 6.5
インフレ率  0.7 1.3 2.9 5.2 2.5 2.5 2.6
経常収支対GDP 2.5 -0.4 -0.7 -2.5 -0.1 N.A. N.A.
(出所:アジア開発銀行資料より作成)