20年12月のインフレ率3.5%、21カ月ぶりの高水準

年間平均2.6%(前年2.5%)、コアインフレ率は3.2%

2021/01/06

 フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2020年12月の総合インフレ率(消費者物価指数、2012年=100)は3.5%(速報値)と前月から0.2%ポイント上昇し、2019年3月以降で最も高いインフレ率となったが、フィリピン中央銀行(BSP)の12月のインフレ事前予想(2.9%~3.7%)の範囲内に収まった。また、年間の平均インフレ率は2.6%で、政府の2020年インフレ目標圏内(2%~4%)で推移している。

 12月のインフレ率が前月より上昇した主な理由は、物価指数構成比の約4割を占める食品・非アルコール飲料の物価上昇率が4.8%へと前月から0.5%ポイント上昇したこと。

 さらに、交通・輸送(8.3%)、健康・医療(2.6%)、外食・サービス(2.5%)が前月から上昇した。悪天候により供給が制限され、野菜や果実など特定農産物の価格が急騰。また、肉類の価格も上昇した。

 特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率については、12月は3.3%で前月から0.1%ポイント上昇。年間平均では3.2%となった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、首都圏(NCR)は3.2%で前月から0.3%ポイント低下、一方地方は3.7%と前月から0.4%ポイント上昇した。インフレ率が最も高かった地域は、ビコール(6.6%)、カガヤン・バレー(6.6%)。最もインフレ率が低かった地域は、中央ビサヤ(0.9%)、次いでサンボアンガ半島(1.0%)だった。

 なお、フィリピン中央銀行(BSP)発表によると、12月の総合インフレ率3.5%への寄与度は、食品・非アルコール飲料1.8%(うち食品1.7%)、酒類・煙草0.2%、交通・輸送費0.7%、外食・サービス他0.3%、住宅・水道光熱費0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・靴類0.0%、教育0.0%。

 年間の総合インフレ率2.6%への寄与度は、食品・非アルコール飲料1.0%(うち食品1.0%)、酒類・煙草0.3%、外食・サービス他0.3%、住宅・水道光熱費0.2%、交通・輸送費0.3%、家具・住宅設備管理0.1%、衣料・靴類0.1%、教育0.1%、健康・医療0.1%。中央銀行(BSP)は、インフレ圧力が依然として限定されているとの見方を示している。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2012年基準、前年同月比%)
項目 20年12月 20年11月 19年12月 20年1-12月
全国    総合インフレ率 3.5 3.3 2.5 2.6
       コアインフレ率 3.3 3.2 3.1 3.2
首都圏  総合インフレ率 3.2 3.5 2.8 2.2
地方    総合インフレ率 3.7 3.3 2.4 2.7
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2012年基準、前年同月比%)

項目 19年 2020年
12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
総合 2.5 2.9 2.6 2.5 2.2 2.1 2.5 2.7 2.4 2.3 2.5 3.3 3.5
食品・非酒類 1.7 2.2 2.1 2.6 3.4 2.9 2.7 2.4 1.8 1.5 2.1 4.3 4.8
酒類・煙草 18.4 19.2 18.2 18.0 17.9 18.0 18.5 19.3 17.7 12.9 11.3 12.3 12.2
衣料・履物類 2.6 2.7 2.7 2.7 2.6 2.4 2.4 2.2 1.9 1.8 1.7 1.6 1.6
住宅・水道光熱費 1.9 2.5 1.8 1.1 0.2 0.2 0.3 0.8 0.9 1.2 0.9 0.8 0.5
家具・住宅管理 3.1 3.1 3.5 4.2 4.2 4.1 4.1 4.0 3.9 3.7 3.7 3.5 3.3
健康・医療 2.9 2.9 2.9 2.9 2.8 2.8 2.8 2.8 2.8 2.8 2.7 2.4 2.6
交通・輸送 2.2 3.0 1.8 -1.8 -6.2 -5.5 2.4 6.3 6.3 8.3 7.9 7.6 8.3
通信 0.4 0.4 0.4 0.5 0.3 0.3 0.4 0.3 0.3 0.4 0.4 0.3 0.2
娯楽・文化 1.4 1.5 1.5 1.6 1.6 1.4 1.2 1.1 -0.1 -0.5 -0.6 -0.6 -0.6
教育 4.6 4.7 4.7 4.7 4.7 4.7 1.6 0.5 0.1 1.0 1.2 1.1 1.1
外食・サービス他 2.7 2.6 2.6 2.6 2.4 2.4 2.3 2.5 2.3 2.3 2.4 2.2 2.5
首都圏 2.8 2.7 2.0 1.7 1.2 1.4 2.0 2.2 2.2 2.2 2.5 3.5 3.2
地方 2.4 3.0 2.8 2.7 2.5 2.2 2.7 2.9 2.5 2.4 2.5 3.3 3.7
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、改定値あり)

 食料物価上昇率 (2012年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
12月 1.7 -6.8 -1.5 7.5 8.2 3.2 7.4 3.3 0.5 -3.1 6.3
20/1月 2.1 -6.5 -1.5 7.7 8.3 3.4 8.8 3.3 0.7 -2.2 6.8
2月 2.1 -6.3 -2.3 8.5 7.8 2.9 8.6 3.4 1.0 -1.7 6.5
3月 2.6 -5.8 -3.0 9.9 8.1 2.6 10.5 3.4 1.3 -1.2 7.1
4月 3.4 -3.8 -0.5 12.1 10.3 2.5 10.0 3.6 1.6 -0.8 8.1
5月 2.9 -2.7 -0.7 11.3 7.3 2.1 8.1 3.5 2.1 -0.8 6.3
6月 2.7 -1.9 0.6 10.0 4.8 3.4 6.1 3.5 2.2 -0.7 5.5
7月 2.5 -1.2 -0.1 8.5 0.9 4.9 3.8 3.5 2.3 -0.1 5.7
8月 1.7 -1.1 -0.6 6.5 -0.9 4.0 2.6 2.9 2.4 0.1 5.2
9月 1.5 -0.6 -0.6 6.6 -2.7 2.9 2.6 2.4 2.4 0.3 5.1
10月 2.1 -0.5 -1.3 4.6 -0.5 4.7 3.7 2.2 2.5 0.2 4.8
11月 4.5 -0.1 -1.3 5.6 14.6 8.2 5.3 1.8 2.5 0.4 4.5
12月 4.9 0.1 0.1 6.3 19.7 10.0 3.1 1.7 2.7 0.4 3.3
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2020年12月及び年間のインフレ率(2012年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
12月 1月-12月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 3.5 3.5 2.6 2.6
食品・非酒類 38.34 4.8 1.8 2.7 1.0
   うち食品のみ 35.46 4.9 1.7 2.8 1.0
酒類・煙草 1.58 12.2 0.2 16.1 0.3
衣料・履物類 2.93 1.6 0.0 2.2 0.1
住宅・水道光熱費 22.04 0.5 0.1 0.9 0.2
家具・住宅管理 2.95 3.3 0.1 3.8 0.1
健康・医療 3.89 2.6 0.1 2.7 0.1
交通・輸送 8.06 8.3 0.7 3.2 0.3
通信 2.93 0.2 0.0 0.3 0.0
娯楽・文化 1.41 -0.6 0.0 0.6 0.0
教育 3.28 1.1 0.0 2.5 0.1
外食・サービス他 12.59 2.5 0.3 2.4 0.3
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 インフレ率(2012年基準)とインフレ目標の推移

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021-24年
インフレ率実績 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% -
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%
 (出所:フィリピン国家統計庁と中央銀行資料より作成)