OFW送金3カ月連続で増加、11カ月間で0.9%減に

5月の19%減少から急回復、年間で微減かほぼ横這いに

2021/01/15

 フィリピン中央銀行(BSP)対外収支データによると、2020年11月のフィリピン人海外就労者(OFW)からの銀行経由による本国現金送金額(速報値)は前年同月比0.3%増の23億7,900万米ドルと小幅な増加ながら、3カ月連続プラス成長となった。内訳は、陸上ベースのOFWからの送金額が0.5%増の18億5,200万米ドル、海上ベースのOFWからは0.2%減の5億2,730万米ドル。

 2020年年初11カ月累計では、前年同期比0.8%減の270億1,300万米ドル。そのうち、陸上ベースのOFWからの送金額は0.2%減の212億5,300万米ドル、海上ベースのOFWからは3.2%減の57億6,000万米ドルであった。 なお、この統計におけるOFW送金額は中央銀行が把握している公式銀行ルートによるものである。

 年初11カ月間の送金元の国別動向については、1位が米国で前年同期比5.4%増の108億2,400万米ドル(シェア40.1%)、2位シンガポールの11.6%増の19億2,100万米ドル(7.1%)、3位サウジアラビアの17.0%減の15億8,900万米ドル(5.9%)、4位日本の9.6%減の14億3,200万米ドル(5.3%)、5位英国の10.1%減の12億4,800万米ドル(4.6%)、6位アラブ首長国連邦(UAE)の19.8%減の11億6,900万米ドル(4.3%)、7位カナダの1.3%増の9億2,900万米ドル(3.4%)、8位香港の5.4%増の7億5,400万米ドル(2.8%)、9位カタールの9.3%増の7億4,300万米ドル(2.8%)、10位韓国の9.8%増の6億3,200万米ドル(2.3%)。これら10カ国で送金全体の78.6%を占めた。

 OFWからの銀行経由送金額推移  (単位:百万米ドル、対前年伸び率:%)
項目 年間推移 1-11月
15年 16年 17年 18年 19年 19年 20年
送金額 25,607 26,900 28,060 28,943 30,133 27,231 27,013
伸び率 4.0 5.0 4.3 3.1 4.1 4.4 -0.8
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、2020年は速報値)

 月別OFWからの銀行経由送金額推移   (単位:百万米ドル、対前年同月伸び率:%)

19年 20年
11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
送金額 2,372 2,902 2,648 2,358 2,397 2,046 2,106 2,465 2,783 2,483 2,601 2,747 2,379
伸び率 2.0 1.9 6.6 2.5 -4.7 -16.2 -19.3 7.7 7.8 -4.1 9.3 2.9 0.3
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、2020年は速報値)

 また、国際通貨基金(IMF)の「国際収支国際投資ポジションマニュアル」(BPM第6版)に準拠した包括的OFW送金データ(銀行経由現金送金+帰国時持参分+非現金型資産贈与含む)によると、11月の包括的OFW送金額(速報値)は前年同月比0.1%増の26億4,300万米ドルと、3カ月連続の増加となった。これにより、年初11カ月累計では前年同期比0.9%減の299億8,800万米ドルとなり、中央銀行による6月時点での年間でマイナス5%という予想よりは、減少率が小幅なペースとなっている。

 11月の包括的OFW送金額26億4,300万米ドルのうち、1年以上の労働契約を有した陸上ベースのOFWからの送金額は0.5%増の20億1,000万米ドル、1年未満の労働契約を有した海上・陸上ベースのOFWからは0.3%減の5億7,500万米ドルにとどまった。

 ただし、情報筋による送金データにはある程度の制約がある。海外の様々な都市の送金センターの一般的なやり方として、コルレス銀行を通じて送金を処理するが、コルレス銀行の大部分が米国にある。また、マネークーリエ(現金宅配)サービスを通じて処理された送金は、実際の送金の出所(国)によって分類できない。

 包括的OFW送金額      (単位:百万米ドル、対前年伸び率:%)
項目 年間推移 1-11月
15年 16年 17年 18年 19年 19年 20年
送金額 28,308 29,706 31,288 32,213 33,467 30,252 29,988
伸び率 3.8 4.9 5.3 3.0 3.9 4.1 -0.9
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、2020年は速報値)

 月別包括的OFW送金額推移      (単位:百万米ドル、対前年同月伸び率:%)
19年 20年
11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
送金額 2,639 3,216 2,944 2,623 2,652 2,276 2,341 2,737 3,085 2,756 2,888 3,044 2,643
伸び率 2.0 1.9 7.3 2.6 -5.2 -16.1 -19.2 7.6 7.6 -4.2 9.1 2.5 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、2020年は速報値)

 なお、OFW送金額(長期間の記録の残る銀行経由経由ベース)は2002年から2019年まで18年連続で前年比増加、2003年からは17年連続で過去最高額を更新した。OFW送金額はフィリピンGDPの約1割を占め、フィリピン経済を下支えするとともに、2015年までの13年連続での経常収支黒字の立役者となった。

 順調に拡大してきたOFW送金であるが、2020年に関しては、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、19年ぶりに減少する懸念がある。中央銀行は、2020年の公式金融機関経由のOFW送金額伸び率予想に関して、年初時点で前年比3.0%増と予想していたが、2月に2.2%増へと下方修正、4月にマイナス0.2%~マイナス0.8%へと再下方修正した。そして、6月には、マイナス5%へと再々下方修正した。

 しかし、11カ月間の実績は、中央銀行の6月の再々下方修正予想のマイナス5%よりは軽微な減少にとどまっている。また、最悪であった5月の19%強の減少から急回復している。12月の動向次第で、前年比ほぼ横這いに戻す可能性もある。