2020年のGDP統計、1月28日発表予定

政府は-8.5%から-9.5%と推定、ASEAN最悪懸念

2021/01/20

 フィリピン統計庁(PSA)によると、1月28日(木)午前10時より、Zoomビデオ会議を通じて、2020年第4四半期(10月~12月)の国内総生産(GDP)など国民勘定統計が発表される予定である。カール・ケンドリック・チュア国家経済開発庁(NEDA)長官代行とクレア・デニス・マパ国家統計官・市民登録局長が発表、解説すると思われる。
 
 PSAは2020年4月20日、国内総生産(GDP)など国民勘定統計の基準年度を現行の2000年から2018年へと変更すると発表した。フィリピンの2000年基準(旧基準)は長らく変更されておらず、インドネシア、ベトナム、マレーシアの2010年基準、ラオスの2012年基準などと比べ古さが目立つことから、変更されることになった。2020年以降のGDP統計などは、2018年基準(新基準)によるものが発表される。

 これに伴い、2000年から2019年までの年間及び四半期毎の産業別、支出別GDP成長率などが、新基準ベースで見直され、改訂が行われた。まず。直近の2019年のGDP実質(以下同様)成長率は、旧基準では5.9%であったが、新基準では6.0%へと上方改訂された。

 2001年から2019年までの19年間のGDP平均年間成長率は、旧基準の5.4%に対し新基準では5.5%となる。19年間で最高となった2010年の成長率は、旧基準では7.6%であったが、新基準では7.3%へと下方改訂された。一方、最低成長率はリーマン・ショック直後の2009年に記録されたが、旧基準での1.1%が新基準では1.4%へと上方改訂された。

 2020年尾のGDP成長率見込みに関しては、フィリピン政府は、12月3日、これまでのマイナス4.5%~5.6%(マイナス5.5%)からマイナス8.5%~9.5%へと再々下方修正した。アジア開発銀行(ADB)は、12月10日、「アジア経済見通し2020年版改訂版補足版」(ADOU2020補足版)において、フィリピン成長率予想を9月時点のマイナス7.3%からマイナス8.5%へと更に下方修正、東南アジア主要国で最悪の落ち込み予想となっている。世界銀行は今年1月5日、「世界経済見通し(GEP)」2021年1月版を発行、フィリピン成長率はマイナス8.1%と、東南アジア主要国で最悪の落ち込みになったと推定している。

 フィリピンのGDP実質成長率の推移(単位:%)
07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
2018年基準 6.5 4.3 1.4 7.3 3.9 6.9 6.8 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.0
2000年基準 6.6 4.2 1.1 7.6 3.7 6.7 7.1 6.1 6.1 6.9 6.7 6.2 5.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 ADBによる東南アジア等の実質GDP成長率推移と予想(単位:%)
国名など 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年予 2021年予
アジア開発途上国 6.1 6.1 6.2 5.9 5.1 -0.4 6.8
 東南アジア 4.7 4.9 5.3 5.1 4.4 -4.4 5.2
   フィリピン 6.3 7.1 6.9 6.3 6.0 -8.5 6.5
   インドネシア 4.9 5.0 5.1 5.2 5.0 -2.2 4.5
   マレーシア 5.1 4.4 5.7 4.8 4.3 -6.0 7.0
   シンガポール 2.9 3.2 4.3 3.4 0.7 -6.2 5.1
   タイ 3.1 3.4 4.1 4.2 2.4 -7.8 4.0
   ベトナム 6.7 6.2 6.8 7.1 7.0 2.3 6.1
(出所:アジア開発銀行資料より作成)