2020年決算発表開始、アヤラ系銀行BPIは26%減益

純金利収入10%増と堅調、貸倒引当5倍への急増響く

2021/01/28

  フィリピン証券取引所(PSE)上場企業の2020年第4四半期(10月~12月)及び年間(1月~12月)の決算発表シーズン入りとなった。まず、アヤラ財閥傘下の有力銀行バンク・オブ・ザ・フィリピン・アイランズ(BPI)が、1月29日、決算速報を発表した。
 
 BPIの2020年の総収入は前年比(以下同様)10.5%増の1,019億ペソ。主力の融資業務等による純金利収入は10.2%増の723億ペソと二桁増加、純金利率は3.49%で前年の3.35%から14ベーシスポイント上昇した。一方、非金利収入は、手数料収入が5%減の195億ペソと低調であったが、証券売買益拡大などで11.1%増の297億ペソへと二桁増加した。

 営業費用はほぼ横ばいの481億ペソにとどまった。費用対収入比率は47.2%で前年の52.4%から改善した。しかし、新型コロナウイルス感染(COVID-19)拡大のなか、貸倒引当金を5倍の280億ペソと大幅増加させたことで、純利益は25.7%減の214億ペソにとどまった。第4四半期の純利益は37.4%減の42億ペソであった。COVID-19禍のなかでは比較的堅調な業績推移であったといえよう。また、2020年末の不良債権(NPL)比率は2.68%で、商業銀行全体のNPL比率(11月末で3.26%)をかなり下回っている。一方、NPL貸倒引当比率は115.2%と良好な水準にある。
 
 2020年末の総融資残高は前年末比4.6%減の1兆4,000億ペソ。住宅ローンは6.6%増加、マイクロファイナンスは5.7%増加したが、法人向け融資減少が響いた。受入れ預金残高は1.2%増の1兆7,000億ペソであった。コストの低い当座預金・貯蓄口座(CASA)預金残高は16.6%増加、定期預金残高は33.2%減少した。この結果、CASA比率は79.6%、預貸率(LDR)は82.0%となっている。

 総資産は1.3%増の2兆2,000億ペソ、株主資本は2,798億ペソ。財務比率は依然良好である。株主資本利益率(ROE)は7.7%、総資産利益率(ROA)は0.98%。バーゼルⅢ基準での自己資本比率(CAR)は17.10%で中央銀行の最低基準10%をかなり上回っている。補完資本(TIER2)を除いた普通株式中核自己資本(CET1)比率も16.20%と良好で中央銀行の最低基準8.5%を大幅に上回っている。

 BPIは、2020年8月に、フィリピン初となる新型コロナウイル(COVID-19)対策債券(新型コロナウイルス債、CARE債)を発行し215億ペソを調達した。投資家の反応が非常に良好で、発行規模は当初予定の30億ペソの7倍となった。CARE債は1.75年物で、年利3.05%。調達資金で新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しむ中小零細企業(MSME)の資金繰り、既存負債のリファイナンス、業績回復を支援する。

 なお、BPIはフィリピン最古の銀行で1851年に創立された。今年、創業170周年を迎える。