IPS、比海底ケーブル網構築(1億ドル超規模)へ

地場2社と協働、敷設はKDDI傘下の国際ケーブル・シップ

2021/02/22

 情報通信事業などを展開する株式会社アイ・ピー・エス(IPS、本社:東京都中央区、2020年12月25日に東証マザーズから東証一部へ昇格)のフィリピン国内外通信事業が好調に推移している。

 1991年10月設立のIPSは、フィリピンでCATV事業者等への国際通信回線提供や法人向けインターネット接続サービス(ISP)提供など積極的に通信事業を展開しており、フィリピンに通信子会社インフィニVAN社やBPO企業KEYSQUARE(キースクエア)を有している。インフィニVAN社は2015年に設立され、2016年に制定されたフィリピン共和国法第10898号によりフィリピン国内で通信事業を営むことができる権利(フランチャイズ)を持つ通信事業者である。固定通信のほか、無線通信サービスも提供することができる。また、フィリピン国家通信委員会より5G周波数割り当ても受けている。

 このIPSが、「2月19日の取締役会において、連結子会社のインフィニVAN社を通じて、フィリピンの通信事業者2社と共同にてルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶフィリピン国内海底ケーブルシステムの建設に必要な海洋調査を本格的に実施することを決定した」と発表した。

 その発表によると、IPSは、フィリピンと香港・シンガポールを結ぶ国際海底ケーブル(C2C回線)の商用提供を2020年10月に開始し、主要販売先との契約を完了した。フィリピンの通信環境を改善するためには、次のステップとしてルソン島、ビサヤ諸島、ミンダナオ島を結ぶ海底ケーブルを建設し、国内の各地域を結ぶ安定したネットワークを構築することが求められる。

 IPSグループでは、当該海底ケーブルをフィリピンの通信事業者に提供するとともに、現在敷設しているミンダナオ島の光ファイバー回線との連携によりミンダナオ島の通信トラフィックをC2C回線経由で海外に運ぶことなどフィリピンの通信環境の改善を図ることで、グループの通信事業の拡大を計画している。完成した際には、IPSグループが提供するブロードバンドサービスのフィリピン国内での人口カバー率は96%に達する見込みである。フィリピンの経済成長および社会安定の実現においてブロードバンドサービスの重要性は高まっており、IPSは積極的な貢献を果たす方針である。

 (1) 建設の形態
 インフィニVAN社は、フィリピン国内の通信事業者2社と共同でフィリピン海底ケーブルシステムの建設を計画している。共同で建設する通信事業者2社の企業名については、相手先からの強い要請により公表を差し控えるとのことであるが、競合関係にある企業との共同事業によりフィリピン国内通信網を構築する初の大型案件となる。当該プロジェクトは、インフィニVAN社からの呼びかけによって実現した。日本の技術を採用した高品質の回線を敷設するため、KDDI子会社の国際ケーブル・シップが敷設を行う。

 (2) 投資規模
 工事区間は24区間を予定し、総投資額は約1億2,000万米ドル(約125億円)を見込んでいる。負担割合は三社均等とし、IPSグループは、その3分の1を負担する予定であり、自己資金及び金融機関からの借入により充当する予定である。

 フィリピン国内海底ケーブルシステムの完成は2022年8月を予定しており、サービス提供に必要な陸上部分の回線や伝送装置などへの投資も予定している。海底ケーブルの敷設は日本の業者により実施し、高品質の海底通信網を構築する。今後、共同建設に向けた合意を3社間で行う予定になっている。

<IPS、特に海外通信事業が大幅増収増益>
 なお、IPSの足許の業績も好調である。このほど発表された2021年3月期9カ月間(2020年4月~12月)の売上高は前年同期比(以下同様)53.6%増の73億0,800万円、営業利益は107.3%増の17億2,500万円、経常利益は88.4%増の15億7,100万円、帰属純利益は109.7%増の11億0,500万円と大幅増収増益であった。

 大幅増収増益の主要因は、上記の海底ケーブルシステムC2C回線の提供が開始されたことによる。2020年5月、オーストラリア最大の通信事業者テルストラの海外子会社テルストラ・インターナショナルが保有する、海底ケーブルの一部の使用権(香港-フィリピン間・フィリピン‐シンガポール間)を、IPSが取得することで合意、その後取得、フィリピンのCATV事業者や通信事業者への提供が開始されたという経緯がある。

 IPSの海外通信事業の9カ月間の売上高は249.4%増(約3.5倍)の33億2,400万円、営業利益は193.7%増(約2.9倍)の10億5,600万円へと各々急増した。