2月のインフレ率4.7%、26カ月ぶりの高水準に

原油や肉・魚類値上がり響く、コアインフレ率は3.5%

2021/03/07

  フィリピン統計庁(PSA)発表によると、2021年2月の総合インフレ率(消費者物価指数、2012年=100)は4.7%(速報値)と前月から0.5%ポイント上昇し、2018年12月の5.1%以来26カ月ぶりの高いインフレ率となったが、フィリピン中央銀行(BSP)の2月のインフレ事前予想(4.3%~5.1%)の範囲内であった。一方、2カ月間の平均インフレ率は4.5%で、政府の2021年インフレ目標(2%~4%)の上限を超えた。

 2月のインフレ率が前月より上昇した主な理由は、物価指数構成比の約4割を占める食品・非アルコール飲料の物価上昇率が6.7%と前月(6.1%)から0.6%ポイント上昇したこと。また、酒類・たばこ(12.2%)、住宅・水道・光熱費(0.9%)、健康・医療(2.9%)、交通・輸送(10.4%)、通信(0.3%)、外食・サービス他(3.2%)の上昇も圧力となった。

 特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率については、2月は3.5%で前月から0.1%ポイント上昇にとどまった。2カ月間の平均コアインフレ率は3.5%となっている。

 総合インフレ率を地域別で見ると、首都圏(NCR)は4.1%で前月から0.2%ポイント低下した一方、地方は4.8%と前月から0.6%ポイント上昇した。インフレ率が最も高かった地域は、カガヤン・バレー(7.9%)、ビコール(7.5%)。最もインフレ率が低かった地域は、中央ビサヤ(1.0%)、次いでサンボアンガ半島(2.0%)だった。

 なお、フィリピン中央銀行(BSP)発表によると、2月の総合インフレ率4.7%への寄与度は、食品・非アルコール飲料2.6%(うち食品2.5%)、酒類・煙草0.2%、交通・輸送費0.8%、外食・サービス他0.4%、住宅・水道・光熱費0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.0%、教育0.0%。

 年初2カ月の平均総合インフレ率4.5%への寄与度は、食品・非アルコール飲料2.5%(うち食品2.4%)、酒類・煙草0.2%、交通・輸送費0.8%、外食・サービス他0.4%、住宅・水道・光熱費0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.0%、教育0.0%。


 なお、中央銀行は、2021年2カ月間のインフレ率が4%超で推移していることに関して、アフリカ豚コレラ(ASF)感染に伴う豚肉を中心とする肉類価格の高騰、悪天候に伴う野菜類の値上がり、国際原油市況の上昇に伴う石油製品や交通費の値上がりなど一時的な供給サイドファクターによるものであり、年間インフレ率は、インフレ目標2%~4%に収斂すると見ている。
 
 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2012年基準、前年同月比%)
項目 21年2月 21年1月 20年2月 21年1-2月
全国    総合インフレ率 4.7 4.2 2.6 4.5
       コアインフレ率 3.5 3.4 3.2 3.5
首都圏  総合インフレ率 4.1 4.3 2.0 4.2
地方    総合インフレ率 4.8 4.2 2.8 4.5
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2012年基準、前年同月比%)

項目 2020年 21年
2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
総合 2.6 2.5 2.2 2.1 2.5 2.7 2.4 2.3 2.5 3.3 3.5 4.2 4.7
食品・非酒類 2.1 2.6 3.4 2.9 2.7 2.4 1.8 1.5 2.1 4.3 4.8 6.1 6.7
酒類・煙草 18.2 18.0 17.9 18.0 18.5 19.3 17.7 12.9 11.3 12.3 12.2 11.7 12.2
衣料・履物類 2.7 2.7 2.6 2.4 2.4 2.2 1.9 1.8 1.7 1.6 1.6 1.6 1.6
住宅・水道光熱費 1.8 1.1 0.2 0.2 0.3 0.8 0.9 1.2 0.9 0.8 0.4 0.5 0.9
家具・住宅管理 3.5 4.2 4.2 4.1 4.1 4.0 3.9 3.7 3.7 3.5 3.3 2.9 2.4
健康・医療 2.9 2.9 2.8 2.8 2.8 2.8 2.8 2.8 2.7 2.4 2.6 2.5 2.9
交通・輸送 1.8 -1.8 -6.2 -5.5 2.4 6.3 6.3 8.3 7.9 7.6 8.3 8.7 10.4
通信 0.4 0.5 0.3 0.3 0.4 0.3 0.3 0.4 0.4 0.3 0.2 0.2 0.3
娯楽・文化 1.5 1.6 1.6 1.4 1.2 1.1 -0.1 -0.5 -0.6 -0.6 -0.6 -0.7 -0.7
教育 4.7 4.7 4.7 4.7 1.6 0.5 0.1 1.0 1.2 1.1 1.1 1.1 1.1
外食・サービス他 2.6 2.6 2.4 2.4 2.3 2.5 2.3 2.3 2.4 2.2 2.5 3.0 3.2
首都圏 2.0 1.7 1.2 1.4 2.0 2.2 2.2 2.2 2.5 3.5 3.2 4.3 4.1
地方 2.8 2.7 2.5 2.2 2.7 2.9 2.5 2.4 2.5 3.3 3.7 4.2 4.8
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、改定値あり)

 食料物価上昇率 (2012年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
20/2月 2.1 -6.3 -2.3 8.5 7.8 2.9 8.6 3.4 1.0 -1.7 6.5
3月 2.6 -5.8 -3.0 9.9 8.1 2.6 10.5 3.4 1.3 -1.2 7.1
4月 3.4 -3.8 -0.5 12.1 10.3 2.5 10.0 3.6 1.6 -0.8 8.1
5月 2.9 -2.7 -0.7 11.3 7.3 2.1 8.1 3.5 2.1 -0.8 6.3
6月 2.7 -1.9 0.6 10.0 4.8 3.4 6.1 3.5 2.2 -0.7 5.5
7月 2.5 -1.2 -0.1 8.5 0.9 4.9 3.8 3.5 2.3 -0.1 5.7
8月 1.7 -1.1 -0.6 6.5 -0.9 4.0 2.6 2.9 2.4 0.1 5.2
9月 1.5 -0.6 -0.6 6.6 -2.7 2.9 2.6 2.4 2.4 0.3 5.1
10月 2.1 -0.5 -1.3 4.6 -0.5 4.7 3.7 2.2 2.5 0.2 4.8
11月 4.5 -0.1 -1.3 5.6 14.6 8.2 5.3 1.8 2.5 0.4 4.5
12月 4.9 0.1 0.1 6.3 19.7 10.0 3.1 1.7 2.7 0.4 3.3
21/1月 6.6 0.0 1.6 9.0 21.2 17.1 3.7 1.7 2.9 0.3 3.2
2月 7.0 0.5 1.5 7.4 16.7 20.7 5.1 1.7 3.3 0.2 4.6
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2021年2月のインフレ率(2012年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
2月 1-2月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 4.7 4.7 4.5 4.5
食品・非酒類 38.34 6.7 2.6 6.4 2.5
   うち食品のみ 35.46 7.0 2.5 6.8 2.4
酒類・煙草 1.58 12.2 0.2 11.9 0.2
衣料・履物類 2.93 1.6 0.0 1.6 0.0
住宅・水道光熱費 22.04 0.9 0.2 0.7 0.2
家具・住宅管理 2.95 2.4 0.1 2.7 0.1
健康・医療 3.89 2.9 0.1 2.8 0.1
交通・輸送 8.06 10.4 0.8 9.5 0.8
通信 2.93 0.3 0.0 0.3 0.0
娯楽・文化 1.41 -0.7 0.0 -0.7 0.0
教育 3.28 1.1 0.0 1.1 0.0
外食・サービス他 12.59 3.2 0.4 3.1 0.4
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 インフレ率(2012年基準)とインフレ目標の推移

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021-24年
インフレ率実績 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% -
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%
 (出所:フィリピン国家統計庁と中央銀行資料より作成)