1月末の不良債権比率、3.70%(前年同月末2.16%)
12月末から再上昇、格付機関5%前後への悪化を予想
2021/03/08
<現行基準でのほぼ最悪水準>
フィリピン中央銀行(BSP)の速報データによると、2021年1月のフィリピン銀行業界の総融資残高(10兆6,087億ペソ)に占める総不良債権(元利回収遅延債権)比率(NPL比率)は、3.70%と前年同月(2.16%)から大幅悪化、新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映する結果となっている。NPL貸倒引当率は94.61%で、前月の93.73%から上昇したが、5カ月連続の100%割れとなった。
NPL比率は、2020年末に3.61%と前年同月末の2.04%から急悪化、年末ベースで現行基準を導入した2013年以降の最悪比率へと上昇した。ただ前月末(2020年11月末)の3.76%からは低下した。久々の前月末比低下となったことで、フィリピンのNPL比率悪化に歯止めがかかると予想する向きもあったが、2021年1月末は再上昇という結果となった。
<フィッチ、5%程度への悪化予想>
このような状況に関して、欧州系の国際的格付機関フィッチ レーティングス(フィッチ)は、フィリピンで銀行の不良債権処理を支援するための「金融機関の戦略的移転(FIST)法」が2021年2月に成立したにもかかわらず、不良債権(NPL)比率は、2020年末の3.61%から一段と悪化、2021年末までに4.5%~5.0%に上昇する可能性が高いと予想している。
フィッチは、フィリピン経済はマクロ的には最悪期(2020年第2四半期のGDP16.9%減少)から回復しつつあるが、個人の返済能力回復は遅れていること、住宅価格が下落していることなどにより、2021年は個人向け融資のNPL比率が悪化、全体のNPL比率を引き上げると見ている。なお、2020年9月末の個人向け融資のNPL比率は8.51%で前年同月末の4.17%から倍以上となっている。そのうち、自動車ローンNPL比率は9.73%、住宅ローンが8.37%、クレジットカード債権が7.49%である。
フィッチは、「金融機関の戦略的移転(FIST)法は、銀行が不良債権を移転するのに役立つ可能性があるが、処分・移転のペースは景気回復次第となる可能性が高い」とコメントしている。
<S&P、6%への上昇を懸念>
フィッチなどとともに世界三大格付機関の一つとなっているスタンダード&プアーズ(S&P)グローバルレーティングも、今年2月、「2020年の新型コロナウイルス拡大防止支出法案であるバヤニハン・トゥ・ヒール・アズ・ワン法における債務返済60日間の猶予の反動で、銀行業界のNPL比率は2021年第1四半期に急上昇、2021年末までに6%程度まで上昇する可能性がある」との予想を発表している。フィリピンの銀行業界のNPL比率の推移は下表のとおりである。
フィリピン銀行業界の不良債権(元利回収遅延債権=NPL)比率などの推移(単位:億ペソ、比率%)
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、注:20年1月は速報値)
フィリピン中央銀行(BSP)の速報データによると、2021年1月のフィリピン銀行業界の総融資残高(10兆6,087億ペソ)に占める総不良債権(元利回収遅延債権)比率(NPL比率)は、3.70%と前年同月(2.16%)から大幅悪化、新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映する結果となっている。NPL貸倒引当率は94.61%で、前月の93.73%から上昇したが、5カ月連続の100%割れとなった。
NPL比率は、2020年末に3.61%と前年同月末の2.04%から急悪化、年末ベースで現行基準を導入した2013年以降の最悪比率へと上昇した。ただ前月末(2020年11月末)の3.76%からは低下した。久々の前月末比低下となったことで、フィリピンのNPL比率悪化に歯止めがかかると予想する向きもあったが、2021年1月末は再上昇という結果となった。
<フィッチ、5%程度への悪化予想>
このような状況に関して、欧州系の国際的格付機関フィッチ レーティングス(フィッチ)は、フィリピンで銀行の不良債権処理を支援するための「金融機関の戦略的移転(FIST)法」が2021年2月に成立したにもかかわらず、不良債権(NPL)比率は、2020年末の3.61%から一段と悪化、2021年末までに4.5%~5.0%に上昇する可能性が高いと予想している。
フィッチは、フィリピン経済はマクロ的には最悪期(2020年第2四半期のGDP16.9%減少)から回復しつつあるが、個人の返済能力回復は遅れていること、住宅価格が下落していることなどにより、2021年は個人向け融資のNPL比率が悪化、全体のNPL比率を引き上げると見ている。なお、2020年9月末の個人向け融資のNPL比率は8.51%で前年同月末の4.17%から倍以上となっている。そのうち、自動車ローンNPL比率は9.73%、住宅ローンが8.37%、クレジットカード債権が7.49%である。
フィッチは、「金融機関の戦略的移転(FIST)法は、銀行が不良債権を移転するのに役立つ可能性があるが、処分・移転のペースは景気回復次第となる可能性が高い」とコメントしている。
<S&P、6%への上昇を懸念>
フィッチなどとともに世界三大格付機関の一つとなっているスタンダード&プアーズ(S&P)グローバルレーティングも、今年2月、「2020年の新型コロナウイルス拡大防止支出法案であるバヤニハン・トゥ・ヒール・アズ・ワン法における債務返済60日間の猶予の反動で、銀行業界のNPL比率は2021年第1四半期に急上昇、2021年末までに6%程度まで上昇する可能性がある」との予想を発表している。フィリピンの銀行業界のNPL比率の推移は下表のとおりである。
フィリピン銀行業界の不良債権(元利回収遅延債権=NPL)比率などの推移(単位:億ペソ、比率%)
年月 | 総融資残高 | NPL残高 | 貸倒引当残高 | 対総融資NPL比率 | NPL貸倒引当比率 | 総融資貸倒引当比率 |
13年末 | 48,970 | 1,355 | 1,609 | 2.77 | 118.69 | 3.29 |
14年末 | 58,324 | 1,348 | 1,616 | 2.31 | 119.83 | 2.77 |
15年末 | 65,273 | 1,365 | 1,616 | 2.09 | 118.42 | 2.48 |
16年末 | 76,121 | 1,442 | 1,728 | 1.89 | 119.89 | 2.27 |
17年末 | 88,656 | 1,530 | 1,843 | 1.73 | 120.44 | 2.08 |
18年末 | 100,779 | 1,778 | 1,871 | 1.76 | 105.22 | 1.86 |
19年末 | 109,661 | 2,241 | 2,075 | 2.04 | 92.59 | 1.89 |
20年末 | 108,628 | 3,917 | 3,671 | 3.61 | 93.73 | 3.38 |
20年1月 | 108,889 | 2,350 | 2,152 | 2.16 | 91.58 | 1.98 |
2月 | 109,109 | 2,399 | 2,188 | 2.20 | 91.20 | 2.01 |
3月 | 110,927 | 2,492 | 2,276 | 2.25 | 91.35 | 2.05 |
4月 | 109,193 | 2,520 | 2,387 | 2.31 | 94.72 | 2.19 |
5月 | 107,994 | 2,620 | 2,549 | 2.43 | 97.31 | 2.36 |
6月 | 108,188 | 2,778 | 3,029 | 2.57 | 109.04 | 2.80 |
7月 | 108,504 | 2,928 | 3,221 | 2.70 | 110.01 | 2.97 |
8月 | 107,476 | 3,050 | 3,274 | 2.84 | 107.35 | 3.05 |
9月 | 106,752 | 3,707 | 3,390 | 3.47 | 91.45 | 3.18 |
10月 | 106,067 | 3,914 | 3,477 | 3.69 | 88.83 | 3.28 |
11月 | 106,215 | 4,011 | 3,527 | 3.78 | 87.94 | 3.32 |
12月 | 108,628 | 3,917 | 3,671 | 3.61 | 93.73 | 3.38 |
21年1月 | 106,087 | 3,923 | 3,711 | 3.70 | 94.61 | 3.50 |