コロナ禍2020年の失業率、10.3%で最悪に
最良の前年5.1%から激変、不完全就業率16.2%
2021/03/09
<2020年は現行基準での最悪記録に>
フィリピン統計庁(PSA)が発表した2020年の雇用統計(LFS)速報値によると、平均失業率は10.3%となり前年から5.2%ポイント悪化した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより2020年3月央から厳格な地域封鎖措置が実施され、商業施設の封鎖、移動制限等で経済が低迷したのが影響した。1月は5.3%と低水準であったが、4月は17.7%へ急上昇、7月10.0%、10月8.7%と推移した。
算出基準が変更されており単純な比較はできないが、2020年は、現行算出方式での継続的な記録の残る1993年以降の年間ベースで最悪となった。そして、最良であった2019年の5.1%から一転、最悪となってしまった。国家経済開発庁は(NEDA)は、2020年末時点で、失業率は2021年と2022年は7%~9%で高止まりするであろうと予想している。2016年に採択されたフィリピン開発計画(PDP)に盛り込まれた2022年の失業率3%~5%という目標は、新型コロナウイルスにより、達成不可能となってしまった。
フィリピンの就業率・失業率推移(年間平均ベース、2020年は速報値値)
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)
2020/2019年の地域別就業率・失業率の比較(単位:千人、%)
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、2020年は速報値)
<2020年の詳細>
2020年の15歳以上の人口は前年比2.2%増の7,373万3千人で、労働力人口は4,390万人。労働力参加率は59.5%と失業者の新たな定義を採用した2005年4月以降で最低となった。2020年の就業者数は6.1%減の3,937万9千人、就業率(雇用率)は89.7%、失業者数は99.2%増の450万1千人であった。
就業者3,937万9千人のうち、農業部門が24.8%、鉱工業部門が18.3%、サービス部門が56.9%を占める。就業形態は、賃金労働者が全体の62.9%を占め、その48.9%が民間企業労働者、9.5%が政府系企業社員・公務員だった。自営・事業主は全体の30.8%、無給家内労働者は6.3%。フルタイム就業者(週40時間以上勤務)は就業者全体の55.9%を占めた。
不完全就業者(就業者であっても十分な労働時間に満たず追加の仕事を求めているパートタイム労働者)数は10.7%増の639万5千人(不完全就業率は16,2%)。
失業者(450万1千人)を年齢層でみると、15歳-24歳:34.0%、25歳-34歳:31.7%、35歳-44歳:15.8%、45歳-54歳:11.1%。学歴別では、中学校進学・卒業者の割合は40.0%(卒業者は28.6%)、大学進学・卒業者では34.4%(卒業者は22.4%)。性別では、男性63.8%、女性36.2%。
地域別では、首都圏の失業率は11.7%で前年より5.7%ポイント悪化した。失業率の最も高い地域はイロコス地域(13.4%)、最も低かったのは、北ミンダナオ地域(6.4%)と唯一の6%台。その他、セブを含む中央ビサヤ地域は10.3%、ダバオ地域は9.2%だった。
<フィリピンでの雇用統計発表について>
フィリピンでは、毎年1月、4月、7月、10月に失業率などの労働・雇用動向統計が発表される。この4回の平均値が年間平均失業率として発表される。年4回の雇用統計発表は、季節的要因によって失業率等が変動することに留意する必要がある。4月、7月は新卒者の労働市場参入により労働力人口が増加することで失業率が上昇しがちである。逆に、10月はクリスマス商戦に向けての雇用拡大で失業率が他の月よりも低下する。
フィリピン統計庁(PSA)が発表した2020年の雇用統計(LFS)速報値によると、平均失業率は10.3%となり前年から5.2%ポイント悪化した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより2020年3月央から厳格な地域封鎖措置が実施され、商業施設の封鎖、移動制限等で経済が低迷したのが影響した。1月は5.3%と低水準であったが、4月は17.7%へ急上昇、7月10.0%、10月8.7%と推移した。
算出基準が変更されており単純な比較はできないが、2020年は、現行算出方式での継続的な記録の残る1993年以降の年間ベースで最悪となった。そして、最良であった2019年の5.1%から一転、最悪となってしまった。国家経済開発庁は(NEDA)は、2020年末時点で、失業率は2021年と2022年は7%~9%で高止まりするであろうと予想している。2016年に採択されたフィリピン開発計画(PDP)に盛り込まれた2022年の失業率3%~5%という目標は、新型コロナウイルスにより、達成不可能となってしまった。
フィリピンの就業率・失業率推移(年間平均ベース、2020年は速報値値)
年月 | 2020年(推定) | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 | 2015年 |
15歳以上人口(千人) | 73,733 | 72,143 | 71,339 | 69,891 | 68,311 | 64,936 |
労働力参加率 | 59.5% | 61.3% | 60.9% | 61.2% | 63.5% | 63.7% |
就業率 | 89.7% | 94.9% | 94.7% | 94.3% | 94.6% | 93.7% |
失業率 | 10.3% | 5.1% | 5.3% | 5.7% | 5.4% | 6.3% |
不完全就業率 | 16.2% | 13.8% | 16.4% | 16.1% | 18.3% | 18.5% |
2020/2019年の地域別就業率・失業率の比較(単位:千人、%)
地域 | 15歳以上人口 | 労働参加率 | 失業率 | 不完全就業率 | ||||
2020年 | 2019年 | 2020年 | 2019年 | 2020年 | 2019年 | 2020年 | 2019年 | |
フィリピン全体 | 73,733 | 72,143 | 59.5 | 61.3 | 10.3 | 5.1 | 16.2 | 13.8 |
首都圏 | 9,938 | 9,758 | 57.5 | 60.5 | 11.7 | 6.0 | 9.2 | 5.3 |
コルディリェラ行政地域 | 1,226 | 1,210 | 61.4 | 61.4 | 10.4 | 3.5 | 14.5 | 12.2 |
1-イロコス | 3,545 | 3,493 | 62.6 | 61.6 | 13.4 | 5.3 | 17.2 | 16.8 |
2-カガヤンバレー | 2,442 | 2,393 | 61.3 | 62.9 | 8.7 | 3.6 | 16.8 | 16.1 |
3-中央ルソン | 8,576 | 8,333 | 56.9 | 59.8 | 13.1 | 5.1 | 12.1 | 10.1 |
4A-カラバルソン | 11,097 | 10,737 | 61.7 | 64.0 | 11.6 | 6.2 | 17.2 | 11.7 |
4B-ミマロパ | 2,049 | 2,016 | 59.6 | 60.7 | 7.3 | 4.3 | 23.9 | 19.5 |
5-ビコール | 3,950 | 3,886 | 59.5 | 60.7 | 9.5 | 5.1 | 27.5 | 27.4 |
6-西ビサヤ | 5,424 | 5,351 | 58.7 | 59.1 | 7.8 | 4.7 | 11.7 | 11.2 |
7-中央ビサヤ | 5,433 | 5,322 | 58.7 | 62.1 | 10.3 | 5.2 | 15.8 | 14.7 |
8-東ビサヤ | 3,131 | 3,084 | 58.2 | 60.4 | 8.0 | 4.4 | 20.1 | 20.3 |
9-サンボアンガ半島 | 2,511 | 2,474 | 57.0 | 56.3 | 9.9 | 3.7 | 17.0 | 16.4 |
10-北ミンダナオ | 3,372 | 3,300 | 66.3 | 68.7 | 6.4 | 4.4 | 23.6 | 21.8 |
11-ダバオ地域 | 3,558 | 3,493 | 57.5 | 59.8 | 9.2 | 3.8 | 13.0 | 11.1 |
12-ソックサージェン | 3,212 | 3,135 | 62.9 | 63.9 | 9.1 | 4.4 | 22.2 | 19.7 |
カラガ | 1,804 | 1,777 | 63.5 | 62.4 | 7.6 | 4.8 | 23.0 | 18.2 |
BARMM | 2,465 | 2,380 | 53.5 | 53..5 | 9.0 | 6.3 | 10.1 | 8.3 |
<2020年の詳細>
2020年の15歳以上の人口は前年比2.2%増の7,373万3千人で、労働力人口は4,390万人。労働力参加率は59.5%と失業者の新たな定義を採用した2005年4月以降で最低となった。2020年の就業者数は6.1%減の3,937万9千人、就業率(雇用率)は89.7%、失業者数は99.2%増の450万1千人であった。
就業者3,937万9千人のうち、農業部門が24.8%、鉱工業部門が18.3%、サービス部門が56.9%を占める。就業形態は、賃金労働者が全体の62.9%を占め、その48.9%が民間企業労働者、9.5%が政府系企業社員・公務員だった。自営・事業主は全体の30.8%、無給家内労働者は6.3%。フルタイム就業者(週40時間以上勤務)は就業者全体の55.9%を占めた。
不完全就業者(就業者であっても十分な労働時間に満たず追加の仕事を求めているパートタイム労働者)数は10.7%増の639万5千人(不完全就業率は16,2%)。
失業者(450万1千人)を年齢層でみると、15歳-24歳:34.0%、25歳-34歳:31.7%、35歳-44歳:15.8%、45歳-54歳:11.1%。学歴別では、中学校進学・卒業者の割合は40.0%(卒業者は28.6%)、大学進学・卒業者では34.4%(卒業者は22.4%)。性別では、男性63.8%、女性36.2%。
地域別では、首都圏の失業率は11.7%で前年より5.7%ポイント悪化した。失業率の最も高い地域はイロコス地域(13.4%)、最も低かったのは、北ミンダナオ地域(6.4%)と唯一の6%台。その他、セブを含む中央ビサヤ地域は10.3%、ダバオ地域は9.2%だった。
<フィリピンでの雇用統計発表について>
フィリピンでは、毎年1月、4月、7月、10月に失業率などの労働・雇用動向統計が発表される。この4回の平均値が年間平均失業率として発表される。年4回の雇用統計発表は、季節的要因によって失業率等が変動することに留意する必要がある。4月、7月は新卒者の労働市場参入により労働力人口が増加することで失業率が上昇しがちである。逆に、10月はクリスマス商戦に向けての雇用拡大で失業率が他の月よりも低下する。