三菱UFJ出資のセキュリティバンク格付、「A-」継続

日本格付研究所、堅固な財務基盤や提携効果等を評価

2021/04/06

 日本格付研究所(JCR)は、3月29日、セキュリティバンクの外貨建長期発行体格付を、「Aマイナス(A-)」に据え置くと発表した。格付見通し(アウトルック)もこれまでの「安定的」が据え置かれた。格付見通しが安定的というのは、A-という格付が当分維持されるであろうという意味である。

 セキュリティバンクは、総資産規模でフィリピン第8位の民間拡大商業銀行である。国内大手財閥に属さない独立系銀行だが、Frederick Y. Dy氏が率いるDyグループが52.5%を出資する筆頭株主であり、次いで三菱UFJ銀行が2016年の出資・業務提携により20%を出資する第2位の株主となっている。また、三菱UFJ銀行はセキュリティバンクを持分法適用会社としている。

 JCRは、「今回のセキュリティバンクの格付を「A-」据え置きは、国内における比較的堅固な事業基盤、高い収益力、堅固な資本基盤などを反映している。また、三菱UFJ銀行との提携を生かしたリテール融資拡大などの提携シナジー効果も評価している」と説明している。

 そして、「2020年の純利益は、新型コロナウイルス感染拡大の影響による経済の悪化を背景に不良債権が増加し、与信費用の増大により減益となった。2020年末以降の感染再拡大により経済の回復が遅れ、不良債権比率が当面高止まる可能性があるが、高水準の純金利マージンなど高い収益力に加え、貸倒引当率や自己資本比率が高水準に維持されるなど財務上の耐久力は引き続き強固である。以上を踏まえ、格付を据え置くとともに見通しを安定的とした」と結論付けている。

 また、「銀行業を中心とするセキュリティバンクの業務は、国内規制環境や金融経済情勢の影響を受けやすいため、格付はフィリピンのソブリン格付(現在A-)までに制約されている」と補足説明している。

 JCRは、3月30日、フィリピン政府が2021年4月16日に発行する第16回円貨債券(サムライ債の格付をAマイナス(A-)とする」とも発表している。A-という高い格付を付与する理由を以下のように説明している。
 
『東南アジアで第2位の人口(約1.1億人)を有する島嶼国家。格付は、堅調な内需を背景にした高水準かつ持続的な経済成長パフォーマンス、GDP対比で低水準に抑制された対外債務や外貨準備の蓄積等にみられる対外ショックに対する耐性、相応に堅固な財政基盤、健全性の高い金融部門などを評価している。新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う経済の落ち込み、および財政赤字の拡大幅はJCRの事前想定以上のものとなった。
 ただ、財政赤字拡大の要因となった大規模な財政出動は経済の落ち込みを早期に抑制するための適正な財政政策の運用であるとJCRはみており、経済は2020年第3四半期以降回復に向かっている。政府債務は19年末のGDP比39.6%から20年末54.5%へと増大したものの、引き続き管理可能な範囲にとどまっており、財政基盤の健全性は損なわれていないとのJCRの従来の見方に変化はない』。

 なお、JCRは日本を代表する格付会社であり、米国での公式登録とEUでの認証を得ている日本唯一の格付会社である。有力格付機関の中で、フィリピンに最も高い格付を与えているのはJCRといえよう。それに次ぐのは、米系のスタンダード&プアーズ(S&P)であり、格付は「トリプルBプラス(BBB+)」、格付見通しは「安定的」とされている。