比銀行不良債権比率、約11年ぶりの4%台に

2月末4.08%、コロナ禍で年末に6%との予想も

2021/04/13

 フィリピン中央銀行(BSP)の速報データによると、2021年2月のフィリピン銀行業界の総融資残高(10兆5,793億ペソ)に占める総不良債権(元利回収遅延債権)比率(NPL比率)は4.08%と前年同月(2.01%)、前月(3.72%)から悪化、2010年7月(4.03%)以来約11年ぶりの4%台となった。不良債権(NPL)貸倒引当率は86.64%で、前月(93.86%)、前年同月(91.20%)から低下した。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済悪化の影響で、NPL比率は、2020年末に3.61%と前年同月末の2.04%から急悪化、年末ベースで現行基準導入以降の最悪比率へと上昇した。そして、2021年1月末3.72%、2月末4.08と更に悪化している。

 銀行の不良債権処理を支援するための「金融機関の戦略的移転(FIST)法」が2021年2月に成立したが、その効果はまだ顕在化せず、特に個人の返済能力が疲弊していることから、当面NPL比率上昇が続くと見る向きが多い。欧州系の国際的格付機関フィッチ レーティングス(フィッチ)は、2021年末までに4.5%~5.0%に上昇する可能性が高いと予想している。米国系のスタンダード&プアーズ(S&P)グローバルレーティングも、2021年末までに6%程度まで上昇する可能性があると見ている。

 なお、総資産に占める不良資産(NPA=元利回収遅延融資+担保権行使による取得不動産等)比率は2.77%で、前月(2.61%)、前年同月(1.93%)から悪化した。一方、不良資産(NPA)貸倒引当率は74.47%で前月(79.15%)から低下したが、前年同月(70.55%)からは上昇した。

 フィリピン銀行業界の不良債権・不良資産比率など(月末値、単位:%)
項目 2020年2月 2021年1月 2021年2月
総融資に占める総不良債権(NPL)比率 2.20 3.72 4.08
不良債権(NPL)貸倒引当比率 91.20 93.86 86.64
総融資残高貸倒引当比率 2.01 3.50 3.53
総資産に占める不良資産(NPA)比率 1.93 2.61 2.77
不良資産(NPA)貸倒引当比率 70.55 79.15 74.47
(出所:BSP資料より作成)

 フィリピン銀行業界の不良債権(元利回収遅延債権=NPL)比率などの推移(単位:億ペソ、比率%)

年月 総融資残高 NPL残高 貸倒引当残高 対総融資NPL比率 NPL貸倒引当比率 総融資残高貸倒引当比率
13年末 48,970 1,355 1,609 2.77 118.69 3.29
14年末 58,324 1,348 1,616 2.31 119.83 2.77
15年末 65,273 1,365 1,616 2.09 118.42 2.48
16年末 76,121 1,442 1,728 1.89 119.89 2.27
17年末 88,656 1,530 1,843 1.73 120.44 2.08
18年末 100,779 1,778 1,871 1.76 105.22 1.86
19年末 109,661 2,241 2,075 2.04 92.59 1.89
20年末 108,628 3,917 3,671 3.61 93.73 3.38
21/1月 106,185 3,955 3,712 3.72 93.86 3.50
2月 105,793 4,313 3,736 4.08 86.64 3.53
(出所:BSP資料より作成)