三大銀行、21年第1四半期は回復傾向

純金利収入は減少、非金利収入が大幅増加

2021/05/06

 フィリピンの民間大手銀行3行の2021年第1四半期の決算発表が出揃った。各行とも新型コロナウイルスの影響を依然受けているが、表1のように、非金利収入の拡大、貸倒引当の減少などにより回復傾向となっている。

 フィリピンの最大銀行(総資産ベース、以下同様)であるBDOユニバンク(証券コード:BDO)の2021第1四半期は、新型コロナウイルス感染再増加に伴う経済活動停滞を背景に、主力の融資事業などによる純金利収入は前年同期比(以下同様)2.9%減の320億ペソと伸び悩んだ。しかし、各種手数料、保険料収入、証券売買益、外為益などの非金利収入が20.8%増の154億ペソと好調であったことから、18.5%増の104億ペソへと二桁増加した。第1四半期の貸倒引当の積み増しは29億ペソであった。今第1四半期末の不良債権(NPL)比率は2.81%へと上昇した。
 
 第2位のメトロポリタンバンク&トラスト(メトロバンク、証券コード:MBT)の純利益は27.1%増の78億ペソに達した。純金利収入は11.1%減の190億ペソにとどまったが、売買・為替益が倍増の29億ペソへ急増するなど非金利収入が27.8%増の79億ペソに達したこと、営業費用が1.4%増の147億ペソに抑制されたことにより二桁増益決算となった。今第1四半期末の不良債権(NPL)比率は2.4%と業界平均を大幅に下回っている。NPL貸倒引当率は166%で、2020年末の163%から一段と上昇している。今第1四半期の貸倒引当は50%減の25億ペソにとどまった。

 第3位のアヤラ財閥傘下のバンク オブ ザ フィリピン アイランズ(証券コード:BPI)の純金利収入は6.5%減の169億ペソにとどまった。純金利率が3.31%で前年同期の3.62%から31ベイシスポイント低下したことなどによる。一方、非金利収入は手数料収入拡大などで12.1%増の74億ペソへと二桁増加した。営業費用が2.3%減の118億ペソへと節減されたこと、貸し倒れ引当が12.7%減の36億ペソに収まったことなどで税引き前利益は5.1%増加した。しかし、CREATE法発効にともなう税金調整により、純利益は21.7%減の50億ペソにとどまった。

 表1.大手3行の2021年の第1四半期収益動向(単位:億ペソ、BPIは速報値)
銀行名 純金利収入 伸び率 非金利収入  伸び率  帰属純利益 伸び率 純金利率  NPL比率
BDOユニバンク 320.2 -2.9% 153.7  20.8%  103.9 18.5% 4.07% 2.81%
メトロバンク 190.4 -11.1% 79.4  27.8%  78.3 24.1% 3.52%  2.40%
BPI 169.0 -6.5% 74.0  12.1%  50.0 -21.7% 3.31% 2.76%

 なお、これら3行の2020年の資産状況や収益状況は表2と表3のとおりである。各行とも、新型コロナウイルス感染拡大やその対策としての景気悪化、貸倒引当大幅積み増しなどにより二桁減益を異議なくされた。そのなかで、BDOユニバンクが、総資産、純資産、受け入れ預金残高、融資残高、帰属純利益いずれもトップであったことが注目される。ちなみに、総資産は3兆3,749億ペソで、唯一の3兆ペソ台超となっている。

 表2.大手3行の2020年末の資産等の状況(単位:億ペソ、自己資本比率は対リスク資産比率{CARS})
行名 総資産 純資産 自己資本比率 預金残高 融資残高 NPL比率
BDOユニバンク 33,749 3,930 14.40% 26,102 23,020 2.65%
メトロバンク 24,552 3,332 20.15% 17,972 12,529 2.41%
BPI 22,334 2,820 17.10% 17,162 14,074 2.68%
(出所:各銀行の事業報告書などより作成)

 表3.大手3行の2020年収益動向(単位:億ペソ)
銀行名 純金利収入 伸び率 帰属純利益 伸び率 純金利率 ROE ROA
BDOユニバンク 1,337.0 12.0% 282.0 -36.2% 4.40% 7.50% 0.90%
メトロバンク 861.8 11.8% 138.3 -50.7% 3.96% 4.36% 0.56%
BPI 722.6 10.2% 214.1 -25.7% 3.49% 7.70% 0.98%
(出所:各銀行の事業報告書などより作成)