セメント大手3社、21年第1四半期大幅増益に

依然新型コロナ禍の影響被るもコスト節減効果顕在化

2021/05/31

 フィリピン証券取引所(PSE)上場のセメント3社の2021年第1四半期(1月~3月)の事業報告書提出が出揃った。新型コロナウイルス感染再拡大やマニラ首都圏や近隣州の地域隔離措置再厳格化に伴う需要伸び悩みや製品市況軟調などのマイナス要因をコスト節減でカバー、前年同期が非常に不振であったことの反動などで、表1のとおり、3社ともに大幅増益となった。

 世界最大のセメント企業であるラファージュホルシムのフィリピン拠点であるホルシム フィリピン(比ホルシム、証券コード:HLCM)の売上高は前年同期比(以下、同様)6%減の68億ペソにとどまった。新型コロナウイルス感染拡大に伴う景気回復の遅れや各種工事の先送りなどによるセメント需要伸び悩みが響いた。しかし、徹底したコスト管理、デジタル化などによる効率化等で、粗利益は29%増の20億ペソ、営業利益は69%増の13億ペソ、純利益は81%増の9億ペソと大幅増益決算となった。

 メキシコの世界的セメント企業セメックスのフィリピン拠点であるセメックス ホールディングス フィリピン(比セメックス、証券コード:CHP)のセメント販売数量は4%減少した。国内平均販売価格が1%低下したこともあって、売上高は8%減の52億ペソにとどまった。しかし、負債削減や金利低下により金融費用が78%低減したことなどにより、純利益は131%増(約2.3倍)の2億0,500万ペソへと大幅増加した。今第1四半期に子会社のAPOセメントが創業100周年を迎えた。

 サンミゲルのラモン・アン社長が会長を務めるイーグルセメント(証券コード:EAGLE)の売上高は16.4%増の53億ペソに達した。出荷価格は小幅低下したが、大型インフラ工事からの受注が好調で二桁増収となった。二桁増収効果で粗利益が18%増の23億ペソに達する一方、営業費用が3%増にとどまり、金融費用が16%節減されたことで、純利益は44.4%増の17億ペソと大幅増益決算となった。

 2020年年間では、表2のとおり、新型コロナウイルス感染拡大やその対策としての地域隔離措置の影響で3社ともに二桁減収減益となった。ただし、下半期は回復に向かい始め、2021年第1四半期の大幅増益へと至った。

表1.上場セメント企業の2021第1四半期決算動向(単位:百万ペソ)
企業名 収入 伸び率 純利益 伸び率  純利益率
ホルシム フィリピン 6,806 -6.4% 909 81.3% 13.4%
セメックス フィリピン 5,207 -7.6% 205 130.6% 3.9%
イーグルセメント 5,267 16.4% 1,717 44.4%  32.6%
(出所:各社の年次報告書や決算速報などより作成)  

表2.上場セメント企業の2020年決算動向(単位:百万ペソ)

企業名 収入 伸び率 純利益 伸び率  純利益率
ホルシム フィリピン 26,015 -22.3% 2,064 -42.5% 7.9%
セメックス フィリピン 19,707 -16.5% 985 -23.0% 5.0%
イーグルセメント 13,906  -29.9% 3,391 -43.6%  24.4%
(出所:各社の年次報告書や決算速報などより作成)