リコー、比で3D小水力発電によるデジタル化支援

3Dプリンター活用発電装置で非電化地域に電力供給

2021/06/10

 リコー(本社:東京都大田区)は、6月8日、新規事業の創出に向けたアクセラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」において、社内チーム「WEeeT-CAM(ウィットカム)」が提案した「フィリピン共和国での3Dピコ水力発電による働く現場のDX支援事業案件化調査」が国際協力機構(JICA)の2020年度第二回「中小企業・SDGsビジネス支援事業」(SDGsビジネス支援型)に採択されたと発表した。

 その発表によると、今回の提案は、フィリピンの非電化・電力不十分地域において、3Dプリンターを使った独自形状の羽を用いた小水力発電(3Dピコ水力発電)システムで電力を供給し、農業・教育に従事する人々に対してデジタルを活用した働き方を推進するパッケージをワンストップで提供するものである。JICAの支援を受けてフィリピンの社会状況やデジタル環境の詳細な調査を行い、パートナー企業やNGOなどとも連携しながら地域に受け入れられるソリューションのビジネスモデル策定を目指す。

 JICAが行っているこの支援事業は、開発途上国の開発ニーズと本邦民間企業の優れた製品・技術とのマッチングを行い、「SDGs達成に貢献するビジネス(SDGsビジネス)」及び開発途上国の抱える課題の解決と、本邦民間企業の海外展開事業展開の両立を図り、ODAを通じた二国間関係の強化や経済関係の一層の推進を目的としている。この案件化調査は、中小企業支援型とSDGsビジネス支援型の2種類あり、リコーの提案はSDGsビジネス支援型として採択された。

 フィリピンの都市郊外や農村部などの一部の地域では十分に電力が供給されておらず、貧困や教育へのアクセスなどが改善すべき課題となっている。特に農家の貧困率は31.6%と高く、生産性の低さによる貧困の連鎖が問題になっていた。

 近年、小規模農家の貧困対策・信用供与のために、政府や企業、NGOなどからの支援を受けた農業に従事する協同組合(農協)の組織化や、会計スキルなどを持った人材の活用など、地域経済の発展や貧困削減につながる事例がでてきている。

 リコーは、3Dピコ水力発電システムを設置することで安定的に電力を供給することに加え、インターネットなどのインフラ機材や業務を効率化するソリューションなどをトータルでパッケージ化して提供・保守することで、現場の働き方をデジタルの力で変革することを目指す。また、教育現場においては、プロジェクターや母語を用いたデジタル教材を提供することで、子どもの学習意欲向上を支援する。

 なお、JICAの「中小企業・SDGsビジネス支援事業(2020年度第二回)」において採択されたフィリピン案件は、上記のリコーの案件のほか、株式会社Aster(東京都)の「日本の耐震塗料による構造物耐震強靭化」、株式会社キングコール(神奈川県)の「木炭微生物資材によるバナナ農園の新パナマ病害抑制」、株式会社大翔(滋賀県)の「森林保護と斜面補強を両立した斜面防災技術導入」という合計4件が採択された。