第1四半期の経常収支、6.1億ドルの赤字に転落
貿易赤字拡大等で前年の2.3億ドルの黒字から悪化
2021/06/21
フィリピン中央銀行(BSP)は6月18日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2021年第1四半期(1月~3月)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報を発表した。
それによると、第1四半期の経常収支は6億1,400万米ドルの赤字に転じた(前年同期は2億2,500万米ドルの黒字)。主に、物品貿易赤字の拡大をOFW送金など第二次所得収支の黒字でカバーできなかったこと、さらに、第一次所得収支の黒字が前年同期に比べて大幅に縮小したことによる。
経常収支の赤字転落に加え金融収支の純流出が拡大し、第1四半期の国際総合収支は28億4,400万米ドルの赤字となり、前年同期の6,800万米ドルの赤字の約42倍と膨らんだ。
このような展開のなかで、2021年3末現在の外貨準備高(GIR)は1,045億米ドルに達し、前年同月末の889億米ドルを大きく上回った。輸入・第一次所得の11.9カ月分、元本ベース短期対外負債の7.7倍、残存ベース短期対外負債の5.3倍に相当する水準である。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
(出所:BSP資料より作成、注:全て速報値、伸び率表示はBSP方式による)
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2%)という当時の過去最高黒字を計上、2015年まで13年連続で黒字を継続した。しかし、2016年に赤字に転落し、2019年まで4年連続の赤字となった。2020年は新型コロナ禍で輸入が急減、結果として、貿易赤字が48%縮小、OFW送金がその赤字額を上回ったことなどで、経常収支が5年ぶりに黒字転換するとともに、その黒字額は2013年に記録した過去最高額を一気に上回った。
一方、国際総合収支も2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年から2018年まで3年連続の赤字となってしまった。2019年と2020年は、輸入減少による経常収支改善で大幅黒字となった。
フィリピン中央銀行の最新予想では、経常収支は、2021年100億米ドルの黒字、2022年67億米ドルの黒字と見込まれている。国際総合収支については、2021年71億米ドルの黒字、2022年27億米ドルの黒字と見込まれている(詳細は別掲)。黒字が続きそうだが、COVID-19ワクチン接種進展が前提である。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、2019年数値は改訂、2020年は速報値)
それによると、第1四半期の経常収支は6億1,400万米ドルの赤字に転じた(前年同期は2億2,500万米ドルの黒字)。主に、物品貿易赤字の拡大をOFW送金など第二次所得収支の黒字でカバーできなかったこと、さらに、第一次所得収支の黒字が前年同期に比べて大幅に縮小したことによる。
経常収支の赤字転落に加え金融収支の純流出が拡大し、第1四半期の国際総合収支は28億4,400万米ドルの赤字となり、前年同期の6,800万米ドルの赤字の約42倍と膨らんだ。
このような展開のなかで、2021年3末現在の外貨準備高(GIR)は1,045億米ドルに達し、前年同月末の889億米ドルを大きく上回った。輸入・第一次所得の11.9カ月分、元本ベース短期対外負債の7.7倍、残存ベース短期対外負債の5.3倍に相当する水準である。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
項目 | 第1四半期 | ||
年 | 2020年 | 2021年 | 伸び率 |
経常収支 | 225 | -614 | -373.2 |
対GNI比(%) | 0.2 | -0.7 | - |
対GDP比(%) | 0.3 | -0.7 | - |
物品&サービス貿易・第一次所得収支 | -6,388 | -7,632 | -19.5 |
物品&サービス貿易収支 | -7,463 | -8,199 | -9.9 |
対GNI比(%) | -7.7 | -8.9 | - |
対GDP比(%) | -8.5 | -9.1 | - |
物品貿易収支 | -10,214 | -11,119 | -8.9 |
対GNI比(%) | -10.6 | -12.0 | - |
対GDP比(%) | -11.7 | -12.4 | - |
輸出 | 11,602 | 12,885 | 11.1 |
輸入 | 21,816 | 24,005 | 10.0 |
サービス貿易収支 | 2,751 | 2,921 | 6.2 |
第一次所得収支 | 1,074 | 567 | -47.2 |
第二次所得収支 | 6,613 | 7,018 | 6.1 |
資本移転等収支 | 12 | 17 | 39.3 |
金融収支(マイナス勘定) | 2,973 | 4,089 | 37.5 |
直接投資 | -883 | -1691 | -91.4 |
証券投資 | 793 | 7,884 | 894.4 |
金融派生商品 | -74 | -111 | -49.5 |
その他投資 | 3,137 | -1,994 | -163.6 |
誤差脱漏 | 2,668 | 1,841 | -31.0 |
国際総合収支 | -68 | -2,844 | -4,094.8 |
対GNI比(%) | -0.1 | -3.1 | - |
対GDP比(%) | -0.1 | -3.2 | - |
参考:OFW等の個人送金額合計 | 8,218 | 8,454 | 2.9 |
うち銀行経由分 | 7,403 | 7,593 | 2.6 |
[対外収支の長期的な動き]
フィリピンの貿易収支は慢性的大幅赤字であるものの、経常収支はOFW送金効果などで2003年に黒字転換した後、黒字拡大基調が続き、2013年には113億8,400万米ドル(対GDP比4.2%)という当時の過去最高黒字を計上、2015年まで13年連続で黒字を継続した。しかし、2016年に赤字に転落し、2019年まで4年連続の赤字となった。2020年は新型コロナ禍で輸入が急減、結果として、貿易赤字が48%縮小、OFW送金がその赤字額を上回ったことなどで、経常収支が5年ぶりに黒字転換するとともに、その黒字額は2013年に記録した過去最高額を一気に上回った。
一方、国際総合収支も2005年から2013年まで9年連続で黒字が続いたが、2014年に28億5,800万米ドルの赤字に転落した。2015年には一旦黒字に復帰したが、2016年から2018年まで3年連続の赤字となってしまった。2019年と2020年は、輸入減少による経常収支改善で大幅黒字となった。
フィリピン中央銀行の最新予想では、経常収支は、2021年100億米ドルの黒字、2022年67億米ドルの黒字と見込まれている。国際総合収支については、2021年71億米ドルの黒字、2022年27億米ドルの黒字と見込まれている(詳細は別掲)。黒字が続きそうだが、COVID-19ワクチン接種進展が前提である。
フィリピン対外収支推移(単位:百万米ドル)
年 | 12年 | 13年 | 14年 | 15年 | 16年 | 17年 | 18年 | 19年 | 20年 |
経常収支 | 6,949 | 11,384 | 10,756 | 7,266 | -1,199 | -2,143 | -8,877 | -3,047 | 12,979 |
対GNI比 | 2.4% | 3.6% | 3.2% | 2.1% | -0.3% | -0.6% | -2.3% | -0.7% | 3.3% |
対GDP比 | 2.7% | 4.0% | 3.6% | 2.4% | -0.4% | -0.7% | -2.6% | -0.8% | 3.6% |
物・サービス貿易収支 | -12,747 | -10,647 | -12,754 | -17,854 | -28,506 | -31,522 | -39,364 | -36,272 | -18,759 |
対GNI比 | -4.4% | -3.4% | -3.8% | -5.2% | -8.1% | -8.6% | -10.3% | -8.7% | -4.8% |
対GDP比 | -4.9% | -3.8% | -4.3% | -5.8% | -8.9% | -9.6% | -11.3% | -9.6% | -5.2% |
国際総合収支 | 9,236 | 5,085 | -2,858 | 2,616 | -1,038 | -863 | -2,306 | 7,843 | 16,022 |
対GNI比 | 3.2% | 1.6% | -0.9% | 0.8% | -0.3% | -0.2% | -0.6% | 1.9% | 4.1% |
対GDP比 | 3.5% | 1.8% | -1.0% | 0.9% | -0.3% | -0.3% | -0.7% | 2.1% | 4.4% |