サンミゲル、上半期296億ペソの大幅黒字に転換

収入16%増の4,101億ペソ、営業利益4倍の610億ペソ

2021/08/08

 フィリピンを代表するコングロマリットとなったサンミゲル(証券コード:SMC)が、8月6日、2021年上半期(1月~6月)の決算速報を発表した。
 
 2021年上半期の純収入は前年同期比(以下同様)16%増の4,101億ペソ、営業利益は309%増の610億ペソ、純損益(帰属ベースではない総純損益、以下同様)は296億ペソの黒字で、前年同期の40億ペソの赤字から急改善した。EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は91%増の807億ペソ。

 前年は3月に入ってからの新型コロナ感染拡大加速やその対策としての厳格な地域隔離措置により非常に不振であった。地域隔離措置が徐々に緩和された第3四半期以降は回復に転じ、今上半期は回復ピッチが強まったといえる。新型コロナ感染再増加など依然厳しい環境が続いているなかでの回復ぶりが注目される。

 
 SMCグループの食品と飲料事業が大統合して発足した「サンミゲルフーズ&ビバレッジ(証券コード:FB)」の純売上高は 20%増の1,468億ペソ、営業利益は103%増の230億ペソ、純利益は137%増の174億に達した。
 
 FBのビール製造子会社のサンミゲル ブリュワリー(SMB、サンミゲルビール)の販売数量は15%増、売上高は27%増の543億ペソ、営業利益は64%増の121億ペソ、純利益は89%増の95億ペソ。新型コロナウイルス感染再拡大、飲食店での定員規制、一時的な店内飲食禁止など依然抑制要因も多いが、低調であった前年同期からは急回復している。サンミゲルビールには、キリン ホールディングス(キリン)が約48%出資している。
 
 洋酒事業を展開するヒネブラ サンミゲル(証券コード:GSMI)の販売数量は21%増、売上高は36%増の202億ペソ、営業利益は45%増の26億ペソ、純利益は66%増の21億ペソと大幅増収増益決算となった。巣篭り需要で2020年も大幅増益であったが、更なる大幅続伸基調となっている。
 
 食品部門のサンミゲル フーズ(SMF)の売上高は11%増の722億ペソ、営業利益は272%増の84億ペソ、純利益は362%増の62億ペソへと急回復した。家庭での調理に使われる製品群の売上増加、鶏肉事業の回復などが寄与した。
パッケージ部門(サンミゲル山村パッケージング)の売上高は1%増の146億ペソ、営業利益は93%増の6億ペソであった。
 
 多角化事業の一つである電力事業の販売電力量は1万3,552Gwh、純収入は5%増の603億ペソ、営業利益は5%減の172億ペソ、純利益は35%増の122億ペソであった。サンミゲルの電力事業は、2010年第3四半期から持株会社SMCグローバル・パワー・ホールディングスのもとに集約されている。

 
 石油元売り最大手ペトロン(証券コード:PCOR)の純売上高は14%増の1,741億ペソに達した。総販売量は7%減少したが、販売価格持ち直しで二桁増収となった。純損益は39億ペソの黒字で、新型コロナ(COVID-19)パンデミックの影響を直接に受けた前年同期の142億ペソの赤字から急改善した。
 
 インフラ事業担当のSMCインフラストラクチャーの純収入は27%増の85億ペソ、営業利益は144%増の23億ペソ。外出・移動制限緩和により、運営している有料道路の交通量回復、休止されていたインフラ工事再開などが寄与した。なお、「スカイウェイ・ステージ3(スカイウェイ3、南北高速道路連結道路)は1月15日に開通したが、その後通行料金無料状態が続き、7月12日にようやく料金徴収が開始された。すなわち、スカイウェイ3の収益寄与は2021年下半期からとなる。
 
 更なる多角化や事業基盤拡大の過程で有利子負債が膨張し、2021年6月末時点で9,120億ペソに達し、2020年末の9,080億ペソから0.4%増加している。一方、現金残高も3,470億ペソと高水準。総資産は1兆9,530億ペソで、2020年末の1兆9,120億ペソから2.1%増加している。総負債対自己資本比率は1.78倍(2020年末1.92倍)、有利子負債対自己資本比率は1.30倍(同1.39倍)、純負債対自己資本比率は0.69倍(同0.71倍)となっている。