即席麺大手の業績明暗、日清URCは11%増益

最大手モンデ ニッシン99%減益(実質13%減益)

2021/08/24

 フィリピンにおけるインスタントラーメン(即席麺)大手であるモンデ ニッシン(証券コード:MONDE)とニッシン ユニバーサル ロビーナ(ニッシンURC)の2021年上半期(1月~6月)の業績が明暗を分けた。なお、両社の社名ともにニッシンが入っているが、資本関係は全くない。ニッシンURCは日清食品とゴコンウェイ財閥との合弁企業である。

 <日清食品とURCと合弁>
 日清食品グループ(日清グループ)は、フィリピンにおいて、ゴコンウェイ財閥の有力食品企業ユニバーサル ロビーナ(証券コード:URC)との合弁企業「ニッシン ユニバーサル ロビーナ(ニッシンURC、1996年設立、会計期末12月、本社:マニラ首都圏ケソン市)を通じて即席麺(インスタントラーメン)事業を展開、カップ麺ではトップ企業となっている。現在の日清グループのニッシンURC株式保有比率は49%となっている。

 <ニッシンURC、巣篭り需要で上半期11%増益>
 新型コロナウイルス禍のなかでニッシンURCの業績が好調に推移している。URCの事業報告書によると、表1のように、ニッシンURCの2021年上半期の売上高は前年同期比(以下同様)2%増の38億1,800万ペソ、EBITDA(税前・償却前・利払い前利益)は5%増の8億2,100万ペソ、純利益は11%増の5億3,300万ペソと増収増益決算となった。比較となる前年同期が23%増収35%増益と絶好調であったが、巣篭り需要拡大もあって、今上半期の収益は更に拡大した。

 <カップヌードル好調、増収増益が続く>
 表2のように、ニッシンURCの業績は、年間ベースでも増収増益が続いている。特に、2020年以降は新型コロナウイルス感染対策としての地域隔離措置の下での外出・移動制限措置や外食事業規制のもとでの家庭内食事(内食)需要や保存食需要、すなわち巣籠り需要が加わったことで、業績向上に拍車がかかった。また、付加価値が高く、近年需要が拡大しているカップ麺(カップヌードル)の比率が高いことも、好業績につながっている。

 表1ニッシンURCの上半期業績比較(単位:百万ペソ)
項目 19年上半期 前年同期比 20年上半期 前年同期比 21年上半期  前年同期比
売上高 3,044 +6 3,755 +23 3,818 +2% 
EBITDA 601 +26 781 +30 821 +5% 
純利益 369 +22 479 +30 533 +11% 
総資産 2,954 -2 3,993 +35 3,849 -4% 

(出所:URC第1四半期始業報告書から作成)

 表2ニッシンURCの年間業績推移(単位:百万ペソ)

項目 2016 2017 2018 2019 2020  前年比
売上高 4,361 5,103 5,815 6,345 7,406 +17% 
EBITDA 777 890 975 1,156 1,472 +27% 
純利益 475 559 603 717 893 +25% 
総資産 2,281 2,686 2,583 2,804 3,377 +20% 
(出所:URC年次報告書から作成)

 <モンデ ニッシン、上半期99%減益、実質13%減益>
 フィリピン史上最大のIPOを経て今年6月1日に新規上場した大手食品メーカーであるモンデ ニッシンの2021年上半期の売上高は1.2%減の338億ペソと伸び悩んだ。即席麺は巣篭り需要などで堅調であったが、ビスケット、代替肉部門が伸び悩んだ。売上原価が4.5%増の211億ペソに達したこと、為替益が74.9%減の2億ペソへと急減、デリバティブ損失が22億5,400万ペソ発生したことで、純利益は96.4%減の2億ペソ、帰属純利益は98.5%減の7,829万ペソへと急減した。一時的損失を除外したコア利益は12.9%減の43億ペソと発表されている。

 <モンデ ニッシン、即席麺シェア69.9%に>
 なお、モンデ ニッシンは、インスタントヌードルやビスケットなどを製造販売している。インスタントヌードルでは圧倒的な国内シェアを有し、「Lucky Me(ラッキー ミー)」というブランド名で親しまれている。今上半期のインスタントヌードルの国内シェアは69.9%へ上昇した。また、製品の一部はインドネシアやタイなど周辺諸国にも輸出されている。英国の代替肉(植物性たんぱく)メーカー「クオーン」を買収、傘下に収めている。上記のように、社名に「ニッシン」が入っているが、日清食品など日本企業との資本関係は全くない。

 <比の即席麺市場は世界第7位>
 東南アジア地域は、麺食文化がもともと存在することに加え、近年の継続的な経済成長による即席麺の消費量・販売額が堅調に推移している。世界ラーメン協会(本部:大阪府池田市、事務局:東京都新宿区新宿)発表によると、表3の様に、フィリピンの2020年の即席麺の総需要は前年比16.1%増の44億7,000万食で世界第7位、ASEANではインドネシアとベトナムに続く第3位の市場となっている。世界総需要約1,166億食のうちの3.8%を占め、一人当たりの年間消費量は40食を突破した。また、16.1%増という伸び率は、主要市場ではベトナムの29.5%増に次ぐ第2位の伸び率であった。

 表3インスタントラーメンの世界総需要と上位10市場(単位:億食)
順位 国/地域 2015 2016 2017 2018 2019 2020
1 中国/香港 404.3 385.2 389.6 402.5 414.5 463.5
2 インドネシア 132.0 130.1 126.2 125.4 125.2 126.4
3 ベトナム 48.0 49.2 50.6 52.0 54.3 70.3
4 インド 32.6 42.7 54.2 60.6 67.3 67.3
5 日本 55.4 56.6 56.6 57.8 56.3 59.7
6 米国 40.8 41.2 41.3 45.2 46.3 50.5
7 フィリピン 34.8 34.0 37.5 39.8 38.5 44.7
8 韓国 36.5 38.3 37.4 38.2 39.0 41.3
9 タイ 30.7 33.6 33.9 34.6 35.7 37.1
10 ブラジル 23.7 23.7 22.5 23.9 24.5 27.2
世界合計 974.9 975.2 1,001.1 1,036.2 1,064.2 1,165.6
(出所:世界ラーメン協会資料より作成)