小売業界、新型コロナ禍で21年上半期も苦戦続く

崩壊の危機との声も、オンライン販売比率は8~15%

2021/08/31

 フィリピン証券取引所(PSE)上場の小売企業の2021年上半期(1月~6月)事業報告書提出がほぼ出揃った。

 2021年上半期は、新型コロナウイルス感染再拡大やその対策としての地域隔離措置再強化の影響を大きく受けた。ただ、そのなかでも、食料品や生活必需品中心の業態は比較的堅調、百貨店や高級品中心の業態は来客数が低調、引き続き苦戦という結果となった。

 食料品や必需品の比率が高く営業制限の影響がほとんどなかったピュアゴールド プライスクラブ(ピュアゴールド、証券コード:PGOLD)の帰属純利益は前年同期比(以下同様)17.3%増の40億ペソに達した。PSE中小新興企業(SME)ボードに2020年6月に新規上場したメリーマート コンシューマーコープ(メリーマート、証券コード:MM)も20.1%増益となった。
 
 一方、百貨店や高級品・贅沢品の売上比率の高い企業は苦戦が続いた。ルスタンで知られるSSIグループ(証券コード:SSI)、メトロリテールストアーズグループ(証券コード:MRSGI)は赤字を余儀なくされた。業界最大手の総合小売企業であるSMリテールの純利益は約6.9倍の36億ペソへと急増したが、極度に不振であった前年同期の反動であり、パンデミック発生前の2019年上半期の帰属純利益57億ペソには遠く及ばない。
 
 コンビニエンスストアは、最厳格な地域隔離措置下でも営業継続を要請される業態ではあるが、移動の制限で従業員出勤や配送面での困難さという問題で一時休業を余儀なくされる店舗が出たこと、店内での飲食禁止などが響き厳しい決算となった。業界断トツのセブン-イレブンを展開するフィリピン セブン(証券コード:SEVN)も、収入が4.7%減の213億ペソ、帰属純損失額(赤字)が3.4%増の4億ペソと不振であった。

 8月31日付けビジネスワールド紙によると、フィリピン小売企業協会のロベルト・S・クラウディオ副会長は、8月28日、「小売業界は崩壊の危機に瀕している」とコメントした。加盟企業のオンライン販売比率はわずか8~15%であり、外出・移動制限などに伴う来店者数減少が打撃となっている。ワクチン接種促進で来店者数増加を望んでいるとのことである。


 PSE上場の小売企業とSMリテールの2021年上半期業績比較(単位:百万ペソ)
企業名 収入 増収率 帰属純利益 増益率 純利益率
ピュアゴールド プライスクラブ 77,744 -7.0% 3,986 17.3% 5.1%
ロビンソンズ リテール ホールディングス 71,858 -5.5% 1,669 1.6% 2.3%
フィリピン・セブン(比セブン-イレブン) 21,271 -4.7% -403 赤字3.4%増 -1.9%
メトロ リテールストアーズ グループ 13,884 -9.3% -182 赤字2.1倍 -1.3%
ウイルコン デポ 13,559 47.8% 1,247 254.3% 9.2%
オールホーム 6,724 38.5% 641 132.5% 9.5%
SSIグループ 6,434 27.7% -174 赤字63.5%減 -2.7%
メリーマート・コンシューマー 1,845 12.3% 16 20.1% 0.9%
SMリテール(親会社SMICが上場) 138,200 -0.7% 3,600 589.7% 2.6%
(出所:各社の2021年上半期事業報告書などより作成)