不動産業界、21年上半期の回復ピッチ緩慢
住宅不良債権比率最悪に、株価は大幅下落続く
2021/09/06
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2021年上半期(1月~6月)の事業報告書が出揃った。主要不動産企業13社の収益・資産動向は下表のとおりである。
<2年前比では大幅減収減益>
2021年上半期の不動産業界は、非常に不振であった前年上半期との比較では回復傾向を見せ、13社中9社が増益となった。しかし、新型コロナウイルス感染再拡大やデルタ変異株の出現、その対策としての地域隔離措置再強化など収益抑制要因も依然多く、回復ピッチは総じて緩慢なものであった。ショッピングモールの業務制限、ソーシャルディスタンス措置による営業活動の妨げ、外国人投資家のフィリピン入国制限などが響き、利益額は、新型コロナウイルスパニック前の2019年上半期と比較すると低水準である。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
フィリピン最大級の不動産企業であるアヤラランド(証券コード:ALI)の2021年上半期の収入は前年同期比18.8%増の490億ペソ、帰属純利益は33.7%増の60億ペソであったが、2年前の2019年上半期の収入832億ペソ、帰属純利益152億ペソには遠く及ばない。
アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の今上半期の収入415億ペソ、帰属純利益116億ペソも、2年前の収入580億ペソ、帰属純利益192億ペソを大きく下回っている。
<モール事業不振、低価格住宅堅調>
ショッピングモールの営業制限やオンライン取引志向の高まりで、SMプライムの国内モール事業収入は26%減の107億ペソ、アヤラランドのモール賃貸収入は34%減の34億ペソと不振であった。一方、手頃な価格の住宅需要は堅調であり、低価格の住宅分譲企業8990ホールディングス(証券コード:8980)の収入は倍増、帰属純利益は2.3倍の35億ペソと好調であった。センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入は89%増の17億5,000万ペソに達し、CPG収入の39%を占めるに至った。
表1.主要不動産企業の2021年上半期(1H)決算動向(単位:百万ペソ)
(出所:各社の事業報告書などより作成)
<住宅融資の不良債権比率急上昇>
フィリピン中央銀行(BSP)によると、2021年第1四半期末(3月末)のフィリピン銀行業界の住宅不動産融資残高(RREL)は前年同期末比7.9%増の8,330億2,000万ペソだった(速報値、以下同様)。総融資残高(TLP)に対する住宅不動産融資残高(RREL)比率は8.17%へと上昇した。一方、住宅不動産融資不良債権(NPL)比率は9.44%で、前年同期末の3.47%から大幅に悪化。記録の残る2009年第1四半期末(7.51%)以降で最悪となった。
表2.フィリピン銀行業界の住宅融資動向 (単位:億ペソ)
(出所:中央銀行資料より作成、注:銀行間融資除く)
<不動産各社の株価も下落続く>
業績不振を背景に不動産各社の株価も軟調に推移している。表3のように、PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年8カ月間では15.54%下落(PSE指数は3.98%下落)。すなわち、2020年以降の不動産セクター指数の下落率は、相場全体の下落率を大幅に上回っている。ただし、2019年まで、不動産セクターは相場上昇のけん引役となっており、その反動という要素もある。また、米国利上げ時期前倒し懸念により、金利敏感株の代表である不動産株の下落率が大きくなっている。
表3.フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)
<2年前比では大幅減収減益>
2021年上半期の不動産業界は、非常に不振であった前年上半期との比較では回復傾向を見せ、13社中9社が増益となった。しかし、新型コロナウイルス感染再拡大やデルタ変異株の出現、その対策としての地域隔離措置再強化など収益抑制要因も依然多く、回復ピッチは総じて緩慢なものであった。ショッピングモールの業務制限、ソーシャルディスタンス措置による営業活動の妨げ、外国人投資家のフィリピン入国制限などが響き、利益額は、新型コロナウイルスパニック前の2019年上半期と比較すると低水準である。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
フィリピン最大級の不動産企業であるアヤラランド(証券コード:ALI)の2021年上半期の収入は前年同期比18.8%増の490億ペソ、帰属純利益は33.7%増の60億ペソであったが、2年前の2019年上半期の収入832億ペソ、帰属純利益152億ペソには遠く及ばない。
アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の今上半期の収入415億ペソ、帰属純利益116億ペソも、2年前の収入580億ペソ、帰属純利益192億ペソを大きく下回っている。
<モール事業不振、低価格住宅堅調>
ショッピングモールの営業制限やオンライン取引志向の高まりで、SMプライムの国内モール事業収入は26%減の107億ペソ、アヤラランドのモール賃貸収入は34%減の34億ペソと不振であった。一方、手頃な価格の住宅需要は堅調であり、低価格の住宅分譲企業8990ホールディングス(証券コード:8980)の収入は倍増、帰属純利益は2.3倍の35億ペソと好調であった。センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入は89%増の17億5,000万ペソに達し、CPG収入の39%を占めるに至った。
表1.主要不動産企業の2021年上半期(1H)決算動向(単位:百万ペソ)
企業名 | 収入 | 伸び率 | 帰属純利益 | 伸び率 | 総資産 | 純資産 |
アヤラランド | 48,957 | 18.8% | 6,041 | 33.7% | 729,896 | 266,067 |
SMプライム | 41,527 | -6.5% | 11,645 | 11.6% | 749,414 | 320,943 |
ロビンソンズランド | 25,968 | 55.5% | 5,445 | 47.9% | 214,138 | 106,898 |
メガワールド | 20,559 | -8.4% | 5,008 | -7.4% | 369,017 | 208,238 |
ビスタランド | 16,875 | -7.9% | 3,651 | 7.5% | 301,086 | 109,529 |
8990ホールディングス | 10,012 | 103.9% | 3,458 | 133.1% | 83,804 | 43,998 |
フィルインベストランド | 7,901 | -6.8% | 1,824 | -20.7% | 181,981 | 75,511 |
ロックウェルランド | 6,590 | 59.1% | 1,246 | 105.3% | 63,812 | 26,114 |
センチュリープロパティーズ | 4,430 | -2.0% | 281 | -38.7% | 55,283 | 21,788 |
ダブルドラゴン | 2,690 | -66.8% | 2,408 | -27.1% | 131,467 | 61,033 |
ベルコープ | 2,537 | 26.7% | 952 | 161.1% | 49,221 | 31,115 |
シャンプロパティーズ | 2,200 | -25.3% | 1,495 | 113.5% | 62,370 | 42,619 |
セブホールディングス | 864 | -48.4% | 401 | 11.2% | 28,734 | 10,146 |
<住宅融資の不良債権比率急上昇>
フィリピン中央銀行(BSP)によると、2021年第1四半期末(3月末)のフィリピン銀行業界の住宅不動産融資残高(RREL)は前年同期末比7.9%増の8,330億2,000万ペソだった(速報値、以下同様)。総融資残高(TLP)に対する住宅不動産融資残高(RREL)比率は8.17%へと上昇した。一方、住宅不動産融資不良債権(NPL)比率は9.44%で、前年同期末の3.47%から大幅に悪化。記録の残る2009年第1四半期末(7.51%)以降で最悪となった。
表2.フィリピン銀行業界の住宅融資動向 (単位:億ペソ)
項目 | 20年3月末 | 20年12月末 | 21年3月末 |
住宅不動産融資残高(RREL) | 7,722.51 | 8,255.06 | 8,330.20 |
RREL不良債権残高 | 267.73 | 761.80 | 786.04 |
貸倒引当金 | 103.15 | 141.38 | 186.18 |
総融資残高(TLP) | 106,338.46 | 104,186.43 | 101,946.89 |
総不良債権残高(TNPL) | 2,321.78 | 3,717.27 | 4,254.53 |
RRELの対TLP比率 | 7.26% | 7.92% | 8.17% |
RREL不良債権の対TNPL比率 | 11.53% | 20.49% | 18.48% |
RREL不良債権比率 | 3.47% | 9.23% | 9.44% |
<不動産各社の株価も下落続く>
業績不振を背景に不動産各社の株価も軟調に推移している。表3のように、PSEにおける不動産株指数は2020年に11.80%下落(PSE指数は8.64%下落)、2021年8カ月間では15.54%下落(PSE指数は3.98%下落)。すなわち、2020年以降の不動産セクター指数の下落率は、相場全体の下落率を大幅に上回っている。ただし、2019年まで、不動産セクターは相場上昇のけん引役となっており、その反動という要素もある。また、米国利上げ時期前倒し懸念により、金利敏感株の代表である不動産株の下落率が大きくなっている。
表3.フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率
項目 | 18年 | 19年 | 20年 | 21年8カ月間 |
フィリピン証券取引所指数 | -12.76% | 4.68% | -8.64% | -3.98% |
全株指数 | -9.46% | 2.92% | -8.11% | -1.10% |
金融株指数 | -20.19% | 4.71% | -22.32% | -1.38% |
工業株指数 | -2.49% | -12.02% | -2.51% | 6.99% |
持株会社株指数 | -14.79% | 3.41% | -3.13% | -6.51% |
不動産株指数 | -8.80% | 14.51% | -11.80% | -15.54% |
サービス業株指数 | -10.94% | 6.13% | -1.11% | 17.14% |
鉱業・石油株指数 | -28.71% | -1.32% | 17.75% | -3.18% |