21年上半期の経常収支、12.5億ドルの赤字転落
年間黒字予想、100億ドルから35億ドルへ下方修正
2021/09/20
フィリピン中央銀行(BSP)は9月17日、国際通貨基金(IMF)の国際収支マニュアル第6版(BPM6)に準拠した、2021年第2四半期(4月~6月)の国際総合収支(BOP)統計の詳細速報を発表した。
<第2四半期の経常収支、12億ドルの赤字転落>
2021年第2四半期の経常収支は12億2,300万米ドルの赤字に転じた(前年同期は51億0,100万米ドルの黒字)。国内の経済活動の段階的な再開にともない輸入が持続的に成長したことで、物品貿易赤字が拡大しOFW送金など第二次所得収支の黒字でカバーできなかったことによる。
経常収支の赤字転落に加え金融収支が大幅に悪化したことで、第2四半期の国際総合収支の黒字は9億米ドルにとどまり、前年同期の42億米ドルの黒字から78.3%縮小した。
<上半期も12.5億ドルの赤字、貿易赤字急増響く>
2021年上半期の経常収支は、物品貿易の赤字拡大と第1次所得収支の二桁減が響き、12億4,800万米ドルの赤字に転落した。その結果、国際総合収支は19億4,000万米ドルの赤字に転落した。
このような展開のなかで、2021年6月末現在の外貨準備高(GIR)は1,058億米ドルと前年同月末の935億米ドルを大きく上回った。輸入・第一次所得の10.6カ月分、元本ベース短期対外負債の7.5倍、残存ベース短期対外負債の5.1倍に相当する水準である。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
(出所:BSP資料より作成、注:全て速報値、伸び率表示はBSP方式による)
注:金融収支のプラス(マイナス)残高は純流出(純流入)を意味している。
<21年経常収支黒字予想、大幅下方修正>
フィリピン中央銀行金融委員会は、9月16日、2021年及び2022年国際収支(BOP)予想修整を承認した。このBOP予想最新版は、2021年6月18日に発表した予想の改訂である。
現在の2021年BOP評価は、2021年残りの数カ月に向けた世界及び国内経済の展開についてより慎重な見方を呈している。世界の成長予想は先の予想から比較的変わっていないが、国内の成長見通しは縮小されている。例えば、2021年のフィリピンのGDP成長目標は6~7%から4~5%に下方修正された。感染症例を急増させている強い感染力を持つCOVID-19デルタ変異株とコロナワクチン接種における供給・ロジスティクスの問題が、最新の外部セクターの評価に影響を与えた。
2022年に関しては、コロナワクチン接種者の人口に占める割合が拡大し新規感染件数が抑制されるとの読みから、世界及び国内経済活動は改善されると予想されている。2022年に予想される先進国の持続的強化は、フィリピン海外就労者(OFW)の送金やフィリピンの貿易・投資にとって幸先の良いものである。同様に、来年までにコロナワクチンの世界的な配布と接種が拡大することで、海外旅行が後押される見通し。しかしながら、外需と内需の回復は依然として脆弱であり、集団免疫や政策支援の効果に大きく依存しているため、楽観視はできない。
<22年の経常収支は赤字転落地予想>
この様な前提や想定の下で、2021年の経常収支予想は、6月時点の100億米ドルの黒字から35億米ドルの黒字へと下方修正されている。2022年予想に関しては、6月時点の67億米ドルの黒字予想から14億米ドルの赤字へ転落すると予想された。
2021年の国際総合収支予想については、6月時点の71億米ドルの黒字から41億米ドルの黒字へと下方修正されている。2022年については、6月時点の27億米ドルの黒字から17億米ドルの黒字へと下方修正されている。経常収支と同様、2020年の実績である160億米ドルという高水準の黒字からは大幅減少と予想されているが、経済活動の活発化とともに輸入が増加するという想定によるもの。
対外収支改善やパンデミック対策として政府の継続的な外貨調達などにより、総外貨準備高(GIR)は、年末ベースで過去最高となった2020年末の1,101億米ドルから更に拡大、2021年末は1,140億米ドル、2022年末には1,150億米ドルに達すると予想されている。
2021年第3四半期時点でのフィリピン国際収支予想(単位:億米ドル、%)
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成、実績の1Hは速報値、FDI:外資直接投資、FPI:外資証券投資)
<第2四半期の経常収支、12億ドルの赤字転落>
2021年第2四半期の経常収支は12億2,300万米ドルの赤字に転じた(前年同期は51億0,100万米ドルの黒字)。国内の経済活動の段階的な再開にともない輸入が持続的に成長したことで、物品貿易赤字が拡大しOFW送金など第二次所得収支の黒字でカバーできなかったことによる。
経常収支の赤字転落に加え金融収支が大幅に悪化したことで、第2四半期の国際総合収支の黒字は9億米ドルにとどまり、前年同期の42億米ドルの黒字から78.3%縮小した。
<上半期も12.5億ドルの赤字、貿易赤字急増響く>
2021年上半期の経常収支は、物品貿易の赤字拡大と第1次所得収支の二桁減が響き、12億4,800万米ドルの赤字に転落した。その結果、国際総合収支は19億4,000万米ドルの赤字に転落した。
このような展開のなかで、2021年6月末現在の外貨準備高(GIR)は1,058億米ドルと前年同月末の935億米ドルを大きく上回った。輸入・第一次所得の10.6カ月分、元本ベース短期対外負債の7.5倍、残存ベース短期対外負債の5.1倍に相当する水準である。
国際総合収支の詳細内訳(単位:百万米ドル、伸び率%)
項目 | 第2四半期 | 上半期 | ||||
年 | 20年 | 21年 | 伸び率 | 20年 | 21年 | 伸び率 |
経常収支 | 5,101 | -1,223 | -124.0 | 4,798 | -1,248 | -126.0 |
対GNI比(%) | 5.7 | -1.2 | - | 2.6 | -0.6 | - |
対GDP比(%) | 6.2 | -1.2 | - | 2.8 | -0.7 | - |
物&サービス貿易・第一次所得収支 | -1,015 | -8,096 | -697.7 | -7,927 | -15,128 | -90.8 |
物&サービス貿易収支 | -1,949 | -9,222 | -373.2 | -9,922 | -16,876 | -70.1 |
対GNI比(%) | -2.2 | -9.0 | - | -5.3 | -8.7 | - |
対GDP比(%) | -2.4 | -9.4 | - | -5.9 | -8.9 | - |
物品貿易収支 | -4,674 | -11,864 | -153.8 | -15,344 | -22,476 | -46.5 |
対GNI比(%) | -5.2 | -11.6 | - | -8.3 | -11.5 | - |
対GDP比(%) | -5.7 | -12.0 | - | -9.1 | -11.9 | - |
輸出 | 9,903 | 13,599 | 37.3 | 22,087 | 26,796 | 21.3 |
輸入 | 14,577 | 25,463 | 74.7 | 37,431 | 49,272 | 31.6 |
サービス貿易収支 | 2,725 | 2,641 | -3.1 | 5,422 | 5,600 | 3.3 |
第一次所得収支 | 934 | 1,127 | 20.6 | 1,995 | 1,748 | -12.4 |
第二次所得収支 | 6,116 | 6,872 | 12.4 | 12,725 | 13,881 | 9.1 |
資本移転等収支 | 13 | 20 | 49.8 | 26 | 37 | 41.1 |
金融収支(マイナス勘定) | -442 | -2,940 | -565.9 | 1,716 | 1,223 | -28.7 |
直接投資 | -917 | -1,400 | -52.7 | -1,805 | -3,417 | -89.3 |
証券投資 | 234 | -807 | -445.5 | 343 | 7,020 | 1,943.8 |
金融派生商品 | -10 | -144 | -1,403.6 | -84 | -243 | -190.4 |
その他投資 | 251 | -589 | -334.3 | 3,262 | -2,137 | -165.5 |
誤差脱漏 | -1,379 | -831 | 39.7 | 1,002 | 495 | -50.5 |
国際総合収支 | 4,177 | 905 | -78.3 | 4,109 | -1,939 | -147.2 |
対GNI比(%) | 4.7 | 0.9 | - | 2.2 | -1.0 | - |
対GDP比(%) | 5.1 | 0.9 | - | 2.4 | -1.0 | - |
参考:OFW等の個人送金額合計 | 7,354 | 8,162 | 11.0 | 15,573 | 16,616 | 6.7 |
うち銀行経由分 | 6,617 | 7,325 | 10.7 | 14,019 | 14,918 | 6.4 |
注:金融収支のプラス(マイナス)残高は純流出(純流入)を意味している。
<21年経常収支黒字予想、大幅下方修正>
フィリピン中央銀行金融委員会は、9月16日、2021年及び2022年国際収支(BOP)予想修整を承認した。このBOP予想最新版は、2021年6月18日に発表した予想の改訂である。
現在の2021年BOP評価は、2021年残りの数カ月に向けた世界及び国内経済の展開についてより慎重な見方を呈している。世界の成長予想は先の予想から比較的変わっていないが、国内の成長見通しは縮小されている。例えば、2021年のフィリピンのGDP成長目標は6~7%から4~5%に下方修正された。感染症例を急増させている強い感染力を持つCOVID-19デルタ変異株とコロナワクチン接種における供給・ロジスティクスの問題が、最新の外部セクターの評価に影響を与えた。
2022年に関しては、コロナワクチン接種者の人口に占める割合が拡大し新規感染件数が抑制されるとの読みから、世界及び国内経済活動は改善されると予想されている。2022年に予想される先進国の持続的強化は、フィリピン海外就労者(OFW)の送金やフィリピンの貿易・投資にとって幸先の良いものである。同様に、来年までにコロナワクチンの世界的な配布と接種が拡大することで、海外旅行が後押される見通し。しかしながら、外需と内需の回復は依然として脆弱であり、集団免疫や政策支援の効果に大きく依存しているため、楽観視はできない。
<22年の経常収支は赤字転落地予想>
この様な前提や想定の下で、2021年の経常収支予想は、6月時点の100億米ドルの黒字から35億米ドルの黒字へと下方修正されている。2022年予想に関しては、6月時点の67億米ドルの黒字予想から14億米ドルの赤字へ転落すると予想された。
2021年の国際総合収支予想については、6月時点の71億米ドルの黒字から41億米ドルの黒字へと下方修正されている。2022年については、6月時点の27億米ドルの黒字から17億米ドルの黒字へと下方修正されている。経常収支と同様、2020年の実績である160億米ドルという高水準の黒字からは大幅減少と予想されているが、経済活動の活発化とともに輸入が増加するという想定によるもの。
対外収支改善やパンデミック対策として政府の継続的な外貨調達などにより、総外貨準備高(GIR)は、年末ベースで過去最高となった2020年末の1,101億米ドルから更に拡大、2021年末は1,140億米ドル、2022年末には1,150億米ドルに達すると予想されている。
2021年第3四半期時点でのフィリピン国際収支予想(単位:億米ドル、%)
年 | 実績 | 2021年予想 | 2022年予想 | |||
20年 | 21年1H | 21年2Q時点 | 21年3Q時点 | 21年2Q時点 | 21年3Q時点 | |
国際総合収支(億米ドル) | 160 | -19 | 71 | 41 | 27 | 17 |
対GDP比 | 4.4% | -1.0% | 1.8% | 1.1% | 0.6% | 0.4% |
経常収支(億米ドル) | 111 | -12 | 100 | 35 | 67 | -14 |
対GDP比 | 3.1% | -0.7% | 2.5% | 0.9% | 1.5% | -0.3% |
物品輸出増減率 | -9.8% | 21.3% | 10.0% | 14.0% | 6.0% | 6.0% |
物品輸入増減率 | -20.2% | 31.6% | 12.0% | 20.0% | 10.0% | 10.0% |
サービス輸出増減率 | -23.6% | -1.3% | 6.0% | -2.0% | 7.0% | 5.0% |
サービス輸入増減率 | -34.6% | -3.9% | 7.0% | -4.0% | 8.0% | 8.0% |
BPO収入増減率 | -1.3% | 7.1% | 5.0% | 5.0% | 5.0% | 5.0% |
観光収入増減率 | -79.5% | -82.1% | 15.0% | -80.0% | 25.0% | 25.0% |
OFW現金送金増減率 | -0.8% | 6.4% | 4.0% | 6.0% | 4.0% | 4.0% |
金融収支(億米ドル) | -70 | 12 | 39 | 5 | 51 | -20 |
純FDI、負債(億米ドル) | 66 | 43 | 75 | 70 | 85 | 75 |
純FPI、負債(億米ドル) | 82 | -18 | 55 | 43 | 74 | 57 |
総外貨準備高(億米ドル) | 1,101 | 1,058 | 1,150 | 1,140 | 1,170 | 1,150 |