不良債権比率、来年8.2%へ悪化懸念(現在4.5%)

中央銀行、現在の約2倍に上昇も二桁台回避と予想

2021/09/23

 フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・ディオクノ総裁は、新型コロナウイルスパンデミックを背景に、フィリピン銀行業界の不良債権(NPL)比率は悪化を続けており、2022年には8.2%程度に上昇すると見ている。

 8.2%という水準は現在(7月末4.5%)の2倍近い水準ではあるが、アジア通貨危機の最悪時(約18%)をはるかに下回る水準であり、一桁台にとどまると見ている。一桁台にとどまると見る理由は、各銀行が慎重な与信リスク管理基準を継続することや、今年2月に成立した「金融機関の戦略的移転(FIST)法」のもとで不良債権処理が進みそうなことなどである。ディオクノ総裁は、不良債権比率は2023年から数年かけて徐々に正常化するとも予想している。

 なお、BSPの速報データによると、2021年7月末のフィリピン銀行業界の総融資残高(10兆8,046億ペソ)に占める総不良債権(元利回収遅延債権)比率(NPL比率)は4.51%と前月末の4.48%から悪化した。2008年9月末の4.52%以来、約13年ぶりの高水準となった。6カ月連続での4%台であり、前年同月末の2.70%から1.81%ポイント悪化した。不良債権(NPL)貸倒引当率は82.44%で、前月末から上昇したが前年同月末の110.01%から大幅に低下した。



 フィリピン銀行業界の不良債権(元利回収遅延債権=NPL)比率などの推移(単位:億ペソ、比率%)
年月 総融資残高 NPL残高 貸倒引当残高 対総融資NPL比率 NPL貸倒引当比率 総融資残高貸倒引当比率
13年末 48,970 1,355 1,609 2.77 118.69 3.29
14年末 58,324 1,348 1,616 2.31 119.83 2.77
15年末 65,273 1,365 1,616 2.09 118.42 2.48
16年末 76,121 1,442 1,728 1.89 119.89 2.27
17年末 88,656 1,530 1,843 1.73 120.44 2.08
18年末 100,779 1,778 1,871 1.76 105.22 1.86
19年末 109,661 2,241 2,075 2.04 92.59 1.89
20年末 108,628 3,917 3,671 3.61 93.73 3.38
21/1月 106,185 3,955 3,712 3.72 93.86 3.50
2月 105,793 4,313 3,736 4.08 86.64 3.53
3月 106,608 4,484 3,733 4.21 83.24 3.50
4月 106,493 4,637 3,778 4.35 81.48 3.55
5月 106,697 4,795 3,834 4.49 79.96 3.59
6月 107,757 4,830 3,978 4.48 82.36 3.69
7月 108,046 4,870 4,015 4.51 82.44 3.72
(出所:BSP資料より作成、2021年9月9日更新版)