10月のインフレ率4.6%、首都圏は3.2%

10カ月平均4.5%、食品5.9%、コア3.3%

2021/11/07

フィリピン統計庁(PSA)によると、2021年10月の総合インフレ率(消費者物価指数、2012年=100)は4.6%と前月から0.2%ポイント鈍化、3カ月ぶりの低水準となったものの、2021年年初から10カ月連続の4%台であった。

 10月のインフレ率は、フィリピン中央銀行(BSP)のインフレ事前予想範囲(4.5%~5.3%)に収まったが、2021年年初10カ月の平均インフレ率は4.5%と、政府の2021年インフレ目標(2.0%~4.0%)の上限を超えている。特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いた10月のコアインフレ率は3.4%で前月から0.1%ポイント上昇した。

 10月のインフレ率減速の主な要因は、肉・魚・野菜など主要食品の価格上昇ピッチが鈍くなり、物価指数構成比の最も大きな部分を占める食品・非アルコール飲料の価格上昇率が5.3%と前月の6.2%から減速したことである。鈍化傾向は、酒類・たばこ、教育、外食・サービス他にも見られた。一方、上昇率が加速したのは、住宅・水道・光熱費、家具・住宅設備管理、交通・輸送、健康・医療、娯楽・文化だった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、首都圏(NCR)は3.2%で前月から0.3%ポイント鈍化、地方は5.0%で前月から0.2%ポイント鈍化した。インフレ率が最も高かった地域は、ビコール(6.6%)、次いでカガヤン・バレー(6.5%)。最もインフレ率が低かった地域は、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM、2.4%)、カラガ(3.5%)だった。

 なお、フィリピン中央銀行(BSP)発表によると、10月の総合インフレ率4.6%への寄与度は、食品・非アルコール飲料2.0%(うち食品2.0%)、交通・輸送費0.6%、住宅・水道・光熱費1.0%、外食・サービス他0.5%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、通信0.0%、娯楽・文化0.0%、教育0.0%。

 2021年年初10カ月の平均総合インフレ率4.5%への寄与度は、食品・非アルコール飲料2.1%(うち食品2.1%)、交通・輸送費0.8%、外食・サービス他0.4%、住宅・水道・光熱費0.5%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、通信0.0%、娯楽・文化0.0%、教育0.0%だった。


 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2012年基準、前年同月比%)

項目 2020年10月 2021年9月 2021年10月 2021年1-10月
全国   総合インフレ率 2.5 4.8 4.6 4.5
       コアインフレ率 3.0 3.3 3.4 3.3
首都圏 総合インフレ率 2.5 3.5 3.2 3.6
地方   総合インフレ率 2.5 5.2 5.0 4.7
(出所:フィリピン統計庁資料より作成2

 総合CPI上昇率  (2012年基準、前年同月比%)

項目 2020年 2021年  
10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
総合 2.5 3.3 3.5 4.2 4.7 4.5 4.5 4.5 4.1 4.0 4.9 4.8 4.6
食品・非酒類 2.1 4.3 4.8 6.1 6.7 5.8 4.8 4.6 4.7 4.9 6.5 6.2 5.3
酒類・煙草 11.3 12.3 12.2 11.7 12.2 12.1 12.0 11.8 11.2 10.2 10.3 10.5 9.8
衣料・履物類 1.7 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.6 1.7 1.6 1.7 1.8 1.9 1.9
住宅・水道光熱費 0.9 0.8 0.4 0.5 0.9 0.9 1.5 2.0 2.4 2.6 3.1 3.8 4.4
家具類・住宅管理 3.7 3.5 3.3 2.9 2.4 1.9 2.1 2.5 2.5 2.3 2.5 2.4 2.5
健康・医療 2.7 2.4 2.6 2.5 2.9 2.9 3.1 3.2 2.9 3.1 3.1 3.1 3.2
交通・輸送 7.9 7.6 8.3 8.7 10.4 13.8 17.9 16.5 9.6 7.0 7.2 5.2 7.1
通信 0.4 0.3 0.2 0.2 0.3 0.2 0.3 0.3 0.2 0.3 0.3 0.2 0.2
娯楽・文化 -0.6 -0.6 -0.6 -0.7 -0.7 -0.6 -0.6 -0.6 -0.6 -0.7 0.5 0.9 1.0
教育 1.2 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 0.9 0.7
外食・サービス他 2.4 2.2 2.5 3.0 3.2 3.1 3.4 3.8 3.9 3.6 3.8 3.9 3.7
首都圏 2.5 3.5 3.2 4.3 4.1 3.7 3.7 3.6 3.2 3.2 3.7 3.5 3.2
地方 2.5 3.3 3.7 4.2 4.8 4.7 4.7 3.7 4.4 4.3 5.2 5.2 5.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2012年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
21/1月 6.6 0.0 1.6 9.0 21.2 17.1 3.7 1.7 2.9 0.3 3.2
2月 7.0 0.5 1.5 7.4 16.7 20.7 5.1 1.7 3.3 0.2 4.6
3月 6.2 0.9 2.5 3.9 8.3 20.9 4.9 1.7 3.9 0.3 3.8
4月 5.0 -0.3 3.1 0.3 -2.6 22.1 6.0 1.4 3.9 0.3 0.5
5月 4.9 -0.8 5.1 -1.1 -6.6 22.1 7.8 1.4 4.0 0.9 1.2
6月 4.9 -1.1 5.3 -0.6 -2.7 19.2 8.7 1.0 4.2 1.0 1.4
7月 5.1 -1.0 6.4 -0.6 5.0 16.0 9.3 0.6 4.4 1.0 0.9
8月 6.9 -0.4 8.7 0.1 15.7 16.4 12.4 0.6 4.8 1.2 1.6
9月 6.5 0.0 10.0 -0.4 16.2 15.6 10.2 0.7 5.2 1.4 1.9
10月 5.6 0.5 13.5 0.2 11.4 11.9 9.5 0.7 5.4 1.7 1.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2021年10月のインフレ率(2012年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
10月 1月-10月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 4.6 4.6 4.5 4.5
食品・非酒類 38.34 5.3 2.0 5.5 2.1
   うち食品のみ 35.46 5.6 2.0 5.9 2.1
酒類・煙草 1.58 9.8 0.2 11.2 0.2
衣料・履物類 2.93 1.9 0.1 1.7 0.1
住宅・水道光熱費 22.04 4.4 1.0 2.2 0.5
家具類・住宅管理 2.95 2.5 0.1 2.4 0.1
健康・医療 3.89 3.2 0.1 3.1 0.1
交通・輸送 8.06 7.1 0.6 10.1 0.8
通信 2.93 0.2 0.0 0.2 0.0
娯楽・文化 1.41 1.0 0.0 -0.2 0.0
教育 3.28 0.7 0.0 1.1 0.0
外食・サービス他 12.59 3.7 0.5 3.5 0.4
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 インフレ率(2012年基準)とインフレ目標の推移
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年予  2022年予 2023年予 
インフレ率実績 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.4% 3.3%   3.2% 
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%   2~4%
 (出所:中央銀行資料より作成、2021年~2023年予想は中央銀行の9月23日時点の予想)