三菱UFJマニラ支店、来年48.50~52.75ペソと予想

送金下支え、コロナ感染改善、選挙の影響軽微等と想定

2021/12/16

 三菱UFJ銀行(MUFG)マニラ支店は、毎年後半に、MUFGセミナー(経済・為替関連講演会)を開催している。しかし、2021年は、2020年と同様、新型コロナ禍でMUFGセミナーは中止せざるを得なくなり、セミナーの代わりに、「フィリピン経済概況 ペソ為替・金利見通し」という資料を作成、顧客などに案内している。
 
<為替や金利動向の外観>
 そのなかで「2021年の為替相場(ペソ対米ドルレート)について」は、順を追って以下のように概観している。
・ 年前半は他のASEAN通貨に比べ堅調だったが、6月後半以降の世界的なインフレ懸念と米金融政策正常化の議論の高まりによりペソは対米ドルで売られやすい地合となり、2回目のコロナ対策としての活動制限も嫌気されて、1米ドル=51ペソ近辺まで下落した。
・ 9月、米FRBはテーパリング(債券購入による流動性供給の縮小)の年内開始を表明(その後、11月開始が決定)。
・ イベント通過の安心感やそれまでの反動もありペソやバーツが買い通貨、米ドルと日本円が売り通貨になる展開。

 また、為替相場に大きな影響を与える海外フィリピン人就労者(OFW)の郷里送金額については、「新型コロナの影響は限定的。2020年は前年比微減に留まり、2021年も堅調に推移、年間ベースでは過去最大となる見通しである。当該フローが経常収支の中で安定的なペソ買い需要をけん引、引き続きペソ高圧力として作用。着実な景気回復とインフレ鎮静化が見られれば、これに加えて対内直接投資の回帰がペソ高を支援する可能性もある」と概括している。

 金利に関しては、「フィリピン総合消費者物価上昇率(インフレ率)は、中央銀行(BSP)のインフレ目標レンジ2~4%の上限を超過、実質金利はマイナス圏で推移している。BSPはインフレ率の高止まりは一時的な供給側の要因に基づくものであり、来年以降は目標レンジ内に収束すると予想、当面は景気回復のために可能な限り支援を行うとしている。ただし、米FRBは9月以降インフレへの警戒感を強化。物価動向が落ち着きを見せなければ、米利上げ加速の市場織込みが更に進む可能性もある」と概括している。

 2022年大統領選挙の影響に関しては、「新型コロナ禍からの経済復興がテーマの一つとなるが、主な候補者は現政権の経済政策の方向性を引き継ぐ方針であり、2022年度政府予算案も承認済。相場への影響は限定的となろう」と予想している。

<2022年の為替・金利見通し>
 三菱UFJ銀行マニラ支店は、2022年の為替・金利見通しに関するメインシナリオと注目点を以下のようなものとしている。
・ ワクチン接種の拡大により新型コロナウイルスの感染状況が改善
・ 経済の活性化と資源価格の上昇による輸入量の増加(=貿易赤字の拡大)
・ 物価上昇圧力は供給制約や資源価格の上昇で当面継続
・ フィリピン中銀のハト派姿勢がどこまで続くか(=他の主要中銀との温度差)に注目

 一方、不透明・不確定材料として、新型コロナの感染動向、インフレ動向、中国発の信用不安、地政学リスクの上昇(米中、中台 etc.)を挙げている。そして、以下のような1年間の予想レンジを示している。
 
三菱UFJ銀行マニラ支店によるペソ対米ドル相場予想(21年12月中旬時点)
・2022年第1四半期(1月~3月)   :予想レンジ49.50~52.00ペソ
・2022年第2四半期(4月~6月)   :予想レンジ49.75~52.75ペソ
・2022年  下半期(7月~12月)    :予想レンジ48.50~52.50ペソ

三菱UFJ銀行マニラ支店による比政策金利(ODF)予想(21年12月中旬時点)
・2022年第1四半期(1月~3月)   :予想レンジ2.00~2.25%
・2022年第2四半期(4月~6月)   :予想レンジ2.00~2.50%
・2022年  下半期(7月~12月)    :予想レンジ2.00~3.00%