太平洋セメント、台風被害でセブの工場操業停止

停電続く、関係会社と協力会社で2名死亡、2名不明

2021/12/24

 太平洋セメント(本社:東京都文京区)は12月23日、12月16日から17日早朝にかけてフィリピン中南部を襲った台風22号(国際名:ライ、フィリピン名:オデット)の被害状況を発表した。

 同社は、フィリピンでは連結子会社であるタイヘイヨウ セメントフィリピン(TCPI社、本社:セブ州サンフェルナンド町)を通じて、甚大な被害が出たセブ島を中心にセメントの製造・販売事業を行っている。現時点(12月23日)で確認できているTCPI社の被害状況は以下のとおり。

1.人的被害
 これまでに現地の関係会社および協力会社において従業員2名が死亡、2名が行方不明。

2.設備被害状況
 操業に直結する被害は確認されていないが、停電により工場の操業を停止している。また、原料受入および製品出荷用の桟橋については一部使用できない状態である。 操業再開時期は、状況を確認・把握の上、検討していく。

 3.業績への影響
現時点において、今回の台風被害による太平洋セメントグループの業績への影響については確認中
であり、今後情報開示すべき事象が確認された場合には速やかに開示する。 太平洋セメントは引き続き現地と協力して安否確認を進めるとともに、早期の事業再開、さらには復興に向けた支援にも取り組んで行く方針である。

 なお、TCPI社は、最新鋭の生産ラインへの更新により生産能力を大幅増強しつつある。フィリピンでは、基調としては好調な経済成長に伴う建設投資の増加等により、セメント需要は堅調に推移してきている。2015年から2019年までの5年間で年間セメント需要は約30%増加し、3,200万トンに達したと推定される。2020年の需要は、新型コロナウイルス感染拡大等の影響により一時的に縮小したが、2021年は、政府の大規模インフラ投資計画「ビルド・ビルド・ビルド」等により、セメント需要は再び上昇に転じ、それ以降も拡大基調を辿ると見込まれる。TCPI社の業績は短期的には台風22号の影響を受けるにしても、長期的には再拡大基調となることが期待される。

 TCPI社では今後も旺盛なセメント需要に応えるため、太平洋セメントグループがこれまで培ってきた技術や経験を最大限に活かし、世界的にも最先端の技術を採用した最新鋭の生産ラインを導入する。新ライン導入の総投資額とし300億円程度を見込んでおり、セメント生産能力を現行比40%増の年間約300万トンに増強する方針が打ち出されている。また、将来、年間販売量500万トン、販売シェア10%以上を目指していくとのことでもある。先頃国際協力銀行(JBIC)等との間で、設備増強のため、275億円の協調融資契約を締結した。

 なお、比太平洋セメントの2020年の業績は、上記のように新型コロナ禍でのセメント需要の一時的減少の影響を大きく受けた。売上高は17.8%減の66億2,700万ペソ、純利益は35.7%減の2億7,000万ペソにとどまった。しかし、中期的にはセメント需要の回復、効率化効果などにより上昇基調に転ずると期待される。

 タイヘイヨウ セメントフィリピンの業績推移(単位:百万ペソ)
2018年 2019年 2020年
売上高 8,090 8,063 6,627
純利益 256 420 270
総資産 5,650 7,630 8,108
(出所:太平洋セメントプレスリリースなどより)