21年の株価0.2%下落、コロナ禍で2年連続の弱気相場

不動産株12%下落、通信株大幅上昇、調達額は過去最高

2022/01/03

<大納会に急落、月間、年間ベースともにマイナスに>
 フィリピンの代表的株価指数であるフィリピン証券取引所指数(PSEi)の2021年12月末終値は7,122.63ポイントとなり、前月末と比べて1.09%下落した。12月の終値ベースで最高値は29日の7,334.56ポイント、最安値は1日の6,947.06ポイントだった。12月は、新型コロナウイルス新規感染者数の減少傾向が好感され、29日までは上昇基調、月間ベース、年間ベースともに上昇との期待が高まったが、月末にかけて新規感染者数が再増加、オミクロン変異株の警戒感が高まったことで、大納会(12月31日)に約212ポイント急落、月間、年間ベースともに一気に下落へと転じた。

<小幅ながら2年連続下落、主要国市場と対照的>
 PSEiは、年間では0.24%と小幅ながら2年連続下落、2年間で大幅上昇の先進国市場とは対照的な動きとなった。終値ベースで最高値は11月9日の7,441.67ポイント、最安値は5月24日の6,164.89ポイントだった。新型コロナワクチン接種ピッチが鈍く、第3四半期まで新規感染者数が急増、医療崩壊寸前となったことが響いた。年央までの外国人投資家の大幅売り越し、主要市場で上昇の牽引役となってきた有力IT株やバイオ関連株がPSEには上場していないことなどによる手掛かり難などで、主要国市場に比べ戻りの鈍い展開となっった。
 
 <不動産株2年連続二桁下落、サービス業31%上昇と対照的>
 2021年通年の大分類セクター別の指数で前年末から上昇したのは、サービス業株(+31.19%)、金融株(+10.95%)、工業株(+10.76%)、鉱業・石油株(+0.77%)。一方、低下したのは、不動産株(-12.14%)、持株会社株(-7.44%)だった。米国利上げ時期前倒し懸念等により、金利敏感株の代表である不動産株の下落率が大きく、2年連続で二桁下落となった。一方、デジタル化進展でで通信企業の株式が大幅上昇したことでサービス業株は強い動きとなった。

<外国人売越額98%減の23億ペソ、年後半に買い越し日増加>
 1日当たり平均売買額は前年比23%増の90億ペソであった。外国人投資家の売り越し額は同98%減の23億ペソ。外国人投資家の買い越し日は、第1四半期が9営業日のみ、第2四半期が12営業日(4月は全営業日売り越し)のみであったが、第3四半期は23営業日、第4四半期が29営業日へと増加した。それとともに、外国人売り越し額が年後半に急ピッチで縮小した。外国人の売買額シェアは36%で、前年の45%から低下している。

<PSE時価総額18兆ペソ、国内企業14.6兆ペソ>
 12月末のPSE時価総額は18兆0,811億ペソ、そのうち国内企業時価総額が14兆5,637億ペソであった。なお、PSE算出のPSE取引所指数ベースの株価収益率(PER)は22.84倍で、前年末の24.88倍から低下した。

<PSEでの資金調達額2,340億ペソ、過去最高に>
 2021年のPSEでの資金調達額は2,340億ペソに達し、前年の1,040億ペソから2.3倍へと急増、2012年に記録した過去最高額2,283億3,000万ペソを上回った。資金調達方法内訳は、新規公開(IPO)8件、通常公募増資11件、株主割当増資4件、第3者割当増資8件であった。



 PSE指数(PSEi)の推移(年末値/月末価)

時期 年末・月末値 上昇率
2012年 5,812.73ポイント 32.95%
2013年 5,889.83ポイント 1.33%
2014年 7,230.57ポイント 22.76%
2015年 6,952.08ポイント -3.85%
2016年 6,840.64ポイント -1.60%
2017年 8,558.42ポイント 25.11%
2018年 7,466.02ポイント -12.76%
2019年 7,815.26ポイント 4.68%
2020年 7,139.71ポイント -8.64%
2021年  7,122.63ポイント  -0.24%
2021年 1月末 6,612.62ポイント -7.38%
2月末 6,794.86ポイント 2.76%
3月末 6,443.09ポイント -5.18%
4月末 6,370.87ポイント -1.12%
5月末 6,628.49ポイント 4.04%
6月末 6,901.91ポイント 4.12%
7月末 6,270.23ポイント -9.15%
8月末 6,855.44ポイント 9.33%
9月末 6,952.88ポイント 1.42%
10月末 7,054.70ポイント 1.46%
11月末 7,200.88ポイント 2.07%
12月末 7,122.63ポイント -1.09%
12カ月間  -  -0.24%
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)

 
フィリピン証券取引所のセクター別株価指数上昇率

項目 18年 19年 20年 21年 21年12月末指数
フィリピン証券取引所指数 -12.76% 4.68% -8.64% -0.24% 7,122.63
全株指数 -9.46% 2.92% -8.11% -10.64% 3,818.12
   金融株指数 -20.19% 4.71% -22.32% 10.95% 1,606.17
   工業株指数 -2.49% -12.02% -2.51% 10.76% 10,404.09
   持株会社株指数 -14.79% 3.41% -3.13% -7.44% 6,807.27
   不動産株指数 -8.80% 14.51% -11.80% -12.14% 3,219.68
   サービス業株指数 -10.94% 6.13% -1.11% 31.19% 1,986.37
   鉱業・石油株指数 -28.71% -1.32% 17.75% 0.77% 9,601.70
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成)

 フィリピン証券取引所の推移(年末・年間値)

項目 17年 18年 19年 20年 21年
フィリピン証券取引所指数 8,558.42 7,466.02 7,815.26 7,139.71 7,122.63
年末時価総額(億ペソ) 175,831 161,467 167,053 158,889 180,811
  国内企業時価総額 144,908 135,437 139,468 130,994 145,637
  外国企業時価総額 30,923 26,030 27,585 27,895 35,174
1日平均売買額(億ペソ) 81 71 73 73 90
外国人の売買額シェア 50% 51% 55% 45% 36%
外国人買越額(億ペソ) 562 -609 -145 -1,287 -23
PER(株価収益率) 22.27倍 17.89倍 16.52倍 24.88倍 22.84倍
(出所:フィリピン証券取引所資料より作成、株価収益率はPSE基準算出数値)