三菱造船建造の大型巡視船1番船が到着

ヘリ用設備、遠隔操作型の無人潜水機など装備

2022/03/02

 三菱重工グループの三菱造船(本社:横浜市西区)が、フィリピン運輸省より受注して建造した大型の多目的対応船(大型巡視船)2隻のうち、1番船がフィリピンに到着。2番船については、2022年5月にマニラへ回航、9月に命名・引き渡し予定とされている。
 
 この大型巡視船1番船の受領検査を主導するフィリピン運輸省(DOTr)のアーサー・ツガデ大臣は、「日本支援の大型巡視船受領により、フィリピンの海上安全が強化される。国民の安全と安全を守るという義務と責任を果たすことに寄与するものである」とコメントした。

 この多目的対応船は、フィリピン沿岸警備隊(PCG)に納入され、荒天時の救難活動や沖合・沿岸域での巡回業務において重要な役割を担う。長さ約96.6メートル、最大速力24ノット、4,000海里以上の航続距離能力を有するほか、排他的経済水域(EEZ)を監視する能力を持つ通信設備やヘリコプター用設備、遠隔操作型の無人潜水機、高速作業艇など、海洋状況の把握と海事法執行活動に必要な装置や機器を装備している。フィリピンのEEZや公海における海難事故や海上犯罪への迅速な対応能力の向上に寄与する。

 この多目的対応建造資金は、2016年10月に調印された「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化計画(フェーズ2)」での円借款供与(供与限度額:164億5,500万円、金利:年0.1%、償還{据置}期間:40年{10年の据置期間を含む}、調達条件:日本タイド)のもとで調達。

 なお、日本は、フィリピンの海洋安全対応能力強化を多面的かつ継続的に支援してきている。2013年12月に調印された「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化計画(供与限度額:187億3,200万円)で、PCGに巡視船(全長44メートル)10隻供与を決定、2016年8月に引き渡しが開始され、2018年8月に10隻目の引き渡しが完了した。また、「経済社会開発計画」のもとで、13隻の15メートル級高速ゴムボートもPCGへ無償供与されている。また、2017年から2018年にかけては、海上自衛隊練習機「TC-90」5機のフィリピン海軍への引き渡し(移転)も行われた。さらに、航行安全の向上のため、沿岸無線通信整備、灯台・浮標等の修復・増設、航路標識施設船供与なども行ってきている。

 技術協力プロジェクトでは、「海上保安人材育成プロジェクト」、「海上保安教育・人材育成管理システム開発プロジェクト」、「海上法執行実務能力強化プロジェクト」などを通じ、PCG職員の教育システムの構築や法執行・船舶運航に関する教育訓練プログラムの開発・強化に取り組んできている。また、日本国内においては、JICAと海上保安庁などの協力によるフィリピンを含む各国の海上保安機関向けに、海上犯罪対処能力、海難事故・油流出事故への対応能力向上などのための各種研修が継続的に実施されている。