フィリピンで急拡大するEコマース市場

日商サイトに小関JCCIP事務局長が執筆

2022/03/17

 日本商工会議所ウエブサイトの2022年3月10日付けニュースライン海外最新事情レポートに、「フィリピンで急拡大するEC市場」という記事が掲載されている。執筆者はフィリピン日本人商工会議所(JCCIPI)の小関 友寛事務局長である(以下ほぼ原文のまま、表やグラフは省略)。

『新型コロナウイルスの感染拡大を受け、フィリピンでは、他の東南アジアの国と同様に電子商取引(Eコマース)が急速に成長している。そこでフィリピンにおけるデジタル化の現状とECの可能性について考えたい。

1.フィリピンのデジタル化の現状
 フィリピンの総人口は約1.11億人で世界13位、平均年齢は23歳と働き盛りの若年層が多い(日本は1.26億人で11位、平均年齢は45歳)。インターネット普及率も2010年は約25%であったものが2020年には67%と急速に伸びている。インターネットユーザーのほぼ全員がスマートフォンを保有しており、一日あたりのインターネット利用時間は10時間56分と世界最長となっている。政府の重要なお知らせがFacebookのみで公開されることもあるなど、フィリピンにおいてソーシャルメディアはもはや必須のコミュニケーションツールとなっている。

2.フィリピン小売市場におけるEコマースの台頭
 フィリピンは2020年3月以降長期間にわたり、外出規制や必需品以外の営業一時停止措置、営業時間の短縮などの措置を導入したことにより、2020年の小売市場売上額は前年比10.2%減となった。特に店舗型小売りにおいては、前年の市場規模約2兆9,000億ペソ(1ペソ=約2.3円)から、2020年は約2兆5,370億ペソへと13.8%も減少した。

 一方で、2020年のEコマースによる売上額は約1,060億ペソから1,630億ペソと前年比で50%増加し、今後も成長が見込まれている。

3.Eコマース市場の現状
 フィリピンで人気のECプラットフォーマーとしてLazada(アリババグループ)とShopee(シンガポールSeaグループ傘下)がある。フィリピンは実店舗の品ぞろえがあまり豊富でなく、目的のものを購入するために何件もの店を回らなければならなかったが、日本のECサイトと同様にPCやスマホで簡単に探せて購入でき、配送までしてくれる。

 商品カテゴリー別の販売動向としては「ファッション」が全体の3分の1を占めているが、2020年は「食品・飲料」の売上が前年比3倍と大幅に増加している。筆者もフィリピンに着任後すぐにアカウントを作成し、PCモニターやオンライン会議用スピーカーを購入した。

 また、オミクロン株が流行した昨年12月から1月にかけて、自宅隔離をしている人たちは薬局に薬を買いに行くことができないため、ECサイトで解熱鎮痛剤を購入したという話も多く聞いた(購入者が殺到したため、商品到着時にはすでに症状が治まり、隔離期間も終わっていたようであるが)。

 なお、Lazada、Shopee両社とも、日本からの越境ECの受け入れを開始しており、日本のセラーはフィリピン市場も選択することが可能となっている。Eコマース市場における消費財の購入額は、大幅に増加しているが、一人当たりの年間消費額は91ドルと他国と比べて低水準であり、成長の余地を大きく残している。

 フィリピンは2022年1月21日に小売業に対する外資規制の改正法が施行された。これによって中小規模の日系企業にとっても小売業参入のチャンスが広がっている。ECサイトでフィリピンでの小売業展開に向けた市場調査をすることも可能なため、新たなビジネスチャンスとなる可能性を感じている。』