中央銀行、22年インフレ予想を4.3%へ上方修正

インフレ目標(2~4%)2年連続で未達成懸念

2022/03/25

 フィリピン中央銀行は(BSP)は、長引く豚肉と魚の供給不足や原油価格や石油製品価格の高騰を受けて、3月24日、インフレ率(消費者物価指数の前年同月比)予想を上方修正した。

 具体的には、2022年予想がこれまでの3.7%から4.3%へ、2023年予想がこれまでの3.3%から3.6%へと変更された。中央銀行は、2021年からのインフレ率上昇は供給サイドファクターによるものであり、2022年はインフレ目標(2.0~4.0%)の上限を大幅に突破するが、2023年はインフレ目標圏内に収まると見ている。

 なお、フィリピン統計庁(PSA)は、2022年1月のインフレ率発表(2月4日発表)分から、インフレ統計の基準年(指数を100とする年)をそれまでの2012年(旧基準)から2018年(新基準)に変更した。2021年のインフレ率は、2018年基準では3.9%でインフレ目標に収まったように見えるが、目標設定時の2012年基準では4.5%であり、2018年の5.2%以来の高水準に達し、インフレ目標は達成できなかった。

 フィリピンのインフレ目標は、2015年以降、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)が継続されてきている。下表のとおり、2015年は0.7%、2016年は1.3%とインフレ目標の下限以下にとどまり、目標未達成となった。2017年は2.9%で目標を達成したが、2018年は5.2%と急上昇、インフレ目標の上限を大きく上回ってしまった。2019年と2020年は2年連続で目標達成となったが、2021年は3年ぶりに未達成で、この7年間の目標達成率は43%にとどまっている。そして、2022年も未達成となる可能性が大きくなった。

 フィリピンでは、金融政策を導く基本的枠組みとして、インフレ目標が2002年から正式に導入された。インフレ目標が比較的シンプルな枠組みであり国民にも分かりやすい、中央銀行の重要使命である物価安定に集中しやすい、インフレ目標を発表しそれを基準とした金融政策を履行することは金融政策に関する透明性や国民からの信頼性を高めるなどから、フィリピン政府はインフレ目標導入に踏み切ったのである。

 なお、インフレ率予想(Forecast)とインフレ目標(Target)が混同されることが多いが、両者は異なるものである。予想は単純な見通しであり環境が変化すればその都度変更されるものである。インフレ目標(Target)は金融政策の基本的枠組みであり、それを基準として各種政策が決定されるものであり、頻繁に変更されるものではない。


フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  4.3%  3.6% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%
 (出所:PSA資料などより作成、2022年と2023年予想はBSPの3月24日時点の予想)