3月のインフレ率4.0%、5カ月ぶりの高水準

第1四半期3.4%、交通費や光熱費急上昇響く

2022/04/06

 フィリピン統計庁(PSA)の発表によると、2022年3月の総合インフレ率(消費者物価指数、2018年=100)は4.0%となり、2021年10月以来、5カ月ぶりの高水準となった。ロシアによるウクライナ侵攻などに伴う原油や商品価格高騰が響いている。前月から1.0%ポイントと大幅上昇し、中央銀行の直前予想(3.3-4.1%)のほぼ上限となった。前年同月からは0.1%ポイント鈍化した。

 3月の総合インフレ率が前月から上昇した主な要因は、物価指数構成比の最も大きなシェアを占める食品・非アルコール飲料の価格上昇率が2.6%と前月から1.4%ポイント上昇したことによる。そのほか、上昇率が加速したのは、住宅・水道・光熱費(6.2%)、交通・輸送費(10.3%)、酒類・タバコ(4.8%)、外食・宿泊サービス(3.0%)、家具・住宅設備管理(2.6%)、情報通信(0.7%)など。一方、減速したのは、健康・医療(2.5%)、娯楽・スポーツ・文化(1.5%)。

 インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(NCR)は3.4%で前月から1.5%ポイント上昇。地方は4.1%で前月から0.7%ポイント上昇した。最も高かった地域は東ビサヤ(5.3%)。一方、最も低かったのは、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治区(BARMM、1.5%)だった。

 なお、3月の総合インフレ率4.0%への寄与度は、食品・非アルコール飲料1.0%(うち食品1.0%)、住宅・水道光熱費1.3%、交通・輸送0.9%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 <2022年第1四半期(1-3月)>
 第1四半期の平均総合インフレ率は3.4%、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)内での推移となっている。マニラ首都圏は2.2%、地方は3.7%だった。第1四半期の平均総合インフレ率3.4%への寄与度は、食品・非アルコール飲料0.7%(うち食品0.6%)、住宅・水道光熱費1.1%、交通・輸送0.8%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。


 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年3月 2022年2月 2022年3月 2022年1-3月
全国   総合インフレ率 4.1 3.0 4.0 3.4
首都圏 総合インフレ率 2.5 1.9 3.4 2.2
地方   総合インフレ率 4.6 3.4 4.1 3.7
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)

項目 2021年   22年 
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
総合 4.1 4.1 4.1 3.7 3.7 4.4 4.2 4.0 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0
食品・非酒類 5.3 3.8 3.5 3.6 3.9 5.5 5.0 3.7 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6
酒類・タバコ 11.3 11.2 11.1 10.4 9.3 9.4 9.5 8.7 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8
衣料・履物類 1.7 1.7 1.9 1.8 1.9 1.8 1.9 1.9 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9
住宅・水道光熱費 0.7 1.3 1.7 2.0 2.7 3.4 3.8 4.3 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2
家具・住宅管理 1.8 1.9 2.2 2.2 2.1 2.0 2.2 2.1 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6
健康・医療 4.0 4.0 4.1 3.9 3.9 3.8 3.8 3.7 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5
交通・輸送 11.9 16.6 16.2 10.3 7.1 7.0 5.6 7.6 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3
情報・通信 0.6 0.6 0.6 0.8 0.5 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7
娯楽・文化 -0.7 -0.6 -0.5 -0.5 -0.6 1.1 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5
教育 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 0.9 0.7 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6
外食・宿泊サービス 2.9 3.3 3.9 4.2 3.8 4.0 4.0 3.8 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0
金融サービス 0.0 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3
パーソナルケア類 2.4 2.4 2.4 2.4 2.3 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2
首都圏 2.5 2.4 2.6 2.6 2.9 3.3 3.0 2.5 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4
地方 4.6 4.5 4.5 4.0 3.9 4.8 4.5 4.4 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
21/12月 1.6 -0.1 16.5 -3.7 -15.1 8.7 6.2 0.7 8.0 2.1 1.3
22/ 1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年3月のインフレ率(2018年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
3月 1-3月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 4.0 4.0 3.4 3.4
食品・非酒類 37.75 2.6 1.0 1.8 0.7
   うち食品のみ 34.78 2.8 1.0 1.8 0.6
酒類・煙草 2.16 4.8 0.1 5.0 0.1
衣料・履物類 3.14 1.9 0.1 1.9 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 6.2 1.3 5.2 1.1
家具類・住宅管理 3.22 2.6 0.1 2.4 0.1
健康・医療 2.89 2.5 0.2 2.8 0.1
交通・輸送 9.03 10.3 0.9 8.7 0.8
情報・通信 3.41 0.7 0.0 0.7 0.0
娯楽・文化 0.96 1.5 0.0 1.6 0.0
教育 1.96 0.6 0.0 0.6 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 3.0 0.3 2.9 0.3
金融サービス 0.03 43.3 0.0 43.3 0.0
パーソナルケア類 4.46 2.2 0.1 2.2 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

フィリピンのインフレ率(2012年基準と2018年基準との比較)とインフレ目標の推移
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  4.3%  3.6% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年と2023年予想はBSPの3月24日時点の予想)