インフレ加速、3月の卸売物価上昇率7.6%に

消費者物価や生産者物価と共に現行基準で最大に

2022/05/11

 フィリピンでもインフレ圧力が高まってきている。消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、卸売物価指数(GWPI)ともに現行基準(2018年基準)での最大の上昇率を記録するに至っている。

 フィリピン統計庁(PSA)の速報データによると、2022年3月の全国総合卸売物価指数(GWPI、2012年=100)は前年同月比(以下、同様)7.6%上昇で、前月(+5.6%)から更に加速し、基準年が1998年から2012年に変更された2019年7月以降で最大の上昇率となった。年初3カ月の平均では6.0%上昇。
 
 主要8品目中、食品(+8.2%)、燃料を除く非食用原料(+29.2%)、鉱物燃料・潤滑油類(+45.3%)、動植物油脂を含む化学品(+8.5%)、原料別製品(+7.3%)、機械・輸送機器(+2.4%)、雑工業製品(+1.5%)の7品目が前月から加速した。一方、飲料・タバコ(+4.0%)は鈍化した。
 
 地域別上昇率については、ルソンが+8.2%で前月から2.3%ポイント上昇。ビサヤ地方は+4.1%で、前月から0.6%ポイント上昇。一方、ミンダナオ地方は+3.0%で、前月から0.2%ポイント低下した。
 
 3月の全国CPI(消費者物価指数)上昇率は4.0%(2018年=100)で、GWPI上昇率を下回ったが、基準年が異なる。なお、GWPI発表は、CPI発表(翌月の5日前後)に比べて遅い。

 フィリピンGWPI前年同月比上昇率の推移(2012年基準、単位%)

時期 全国 ルソン ビサヤ ミンダナオ
2019年平均 1.6 1.6 2.2 1.9
2020年平均 2.5 2.5 0.9 1.6
2021年平均 3.0 3.2 0.4 4.6
2021年 3月 2.8 2.9 -0.6 4.5
2022年 1月 4.6 4.7 3.2 4.2
2月 5.6 5.9 3.5 3.2
3月 7.6 8.2 4.1 3.0
3カ月間 6.0 6.3 3.6 3.5
(出所:PSA資料より作成、22年3月は速報値)

 4月29日に発表された2022年3月の生産者物価指数(PPI、2018年=100)は、前年同月に比べ5.0%上昇、7カ月連続で前年同月を上回った。そして、現行基準(2018年基準)での最大上昇率となった。
 
 また、5月5日に発表された2022年4月の消費者物価指数(CPI、2018年=100)は4.9%となり、現行基準(2018年基準)で最高となり、2018年12月の5.1%(2012年基準)以来、40カ月ぶりの高水準となった。そして、2022年のインフレ目標(消費者物価上昇率2~4%)達成が困難になりつつある。

 フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  4.3%  3.6% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年と2023年予想はBSPの3月24日時点の予想)