政府の2022年成長率予想、7~8%へ下方修正

前提:インフレ3.7~4.7%、ドバイ原油90~110ドル

2022/05/25

 開発予算調整委員会(DBCC)は5月24日、最近の内外の動向に合わせて、2022年~2025年の政府の中期マクロ経済に関する前提や財政計画、成長目標の見直しを行った。この調整は2023年度国家歳出計画(NEP)の準備に沿ったものである。DBCCは政府の経済関係部署の横断機関であり、マクロ経済目標決定などの役割を担っている。

 今回のDBCC会議において、ロシアとウクライナ間の紛争、中国の景気減速、米国の金融正常化など外部リスクの高まりを踏まえて、2022年のGDP実質成長率予想が、これまでの7.0%~9.0%から7.0%~8.0%に下方修正された。2023年から2025年に関しては、これまでの予想6.0%~7.0%が維持された。

 2022年の平均インフレ率の予想は、ロシアとウクライナの紛争とサプライチェーンの混乱による地政学的緊張に伴う食料・エネルギー価格の上昇を受けて、3.7%~4.7%とされたが、2023年~2025年については、2.0%~4.0%に据え置かれた。一方、ドバイ原油価格の前提は、ロシアとウクライナの紛争によって生じる供給の混乱の可能性を考慮し、2022年は1バレル90米ドル~110米ドルに上方修正されたが、2023年には同80米ドル~100米ドル、2024年~2025年には同70米ドル~90米ドルに低下すると予想している。

 中期財政計画に関しては、経済活動が中期的に回復を続けると予想されるため、歳入予想は、2023年は3兆6,330億ペソ(対GDP比15.3%)、2024年は4兆0,630億ペソ(同15.6%)、2025年は4兆5,490億ペソ(同16.1%)と増加が想定されている。歳出も同様に、2023年は5兆0,860億ペソ(対GDP比21.3%)、2024年は5兆3,920億ペソ(同20.8%)、2025年は5兆7,230億ペソ(同20.2%)と想定されている。

 修正された歳入・歳出計画を考慮し、財政赤字の対GDP比予想は、2023年6.1%、2024年5.1%と想定されている。その後も、政府の財政統合戦略の推進などにより、2025年は4.1%へと低下すると想定されている。歳入の増加予想を背景に、2023年度の国家予算提案額は5兆2,680億ペソ(対GDP比22.1%)が継続されている。

 第181回DBCC会合で承認されたマクロ経済前提
マクロ経済指標 2022年 2023年 2024年 2025年
インフレ率 3.7-4.7% 2.0-4.0% 2.0-4.0% 2.0-4.0%
ドバイ原油価格(米ドル/バレル) 90-110 80-100 70-90 70-90
物品輸出成長率 7.0% 6.0% 6.0% 6.0%
物品輸入成長率 15.0% 6.0% 8.0% 8.0%
(出所:NEDA資料より作成)

 フィリピンのGDP実質成長率の推移(2018年基準、単位:%)
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22予 23-25予
伸び率 7.3 3.9 6.9 6.8 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 7-8 6-7
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)