インフレ加速化、4月の卸売物価8.3%上昇

10年半ぶりの高い伸び率、現行基準で最高に

2022/06/02

 フィリピンでもインフレ圧力が高まってきている。消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)、卸売物価指数(GWPI)ともに現行基準での最大の上昇率を記録するに至っている。

 フィリピン統計庁(PSA)によると、2022年4月の全国総合卸売物価指数(GWPI、2012年=100)は前年同月比(以下、同様)8.3%上昇で、前月(+7.6%)から更に加速し、基準年が1998年から2012年に変更された2019年7月以降で最高の上昇率となった。基準年は異なるが、2011年9月の9.1%以来、約10年半ぶりの高い伸び率でもある。2022年年初4カ月平均では6.6%上昇となる。

 主要8品目中、食品(+9.0%)、飲料・タバコ(+6.5%)、鉱物燃料・潤滑油類(+53.3%)、原料別製品(+7.8%)、雑工業製品(+1.7%)の5品目が前月から加速し、燃料を除く非食用原料(+29.1%)、動植物油脂を含む化学品(+8.4%)、機械・輸送機器(+1.7%)の3品目は鈍化した。

 地域別上昇率については、ルソンが+8.8%で前月から0.6%ポイント、ビサヤ地方は+4.3%で前月から0.2%ポイント、ミンダナオ地方は+3.3%で前月から0.3%ポイントそれぞれ加速した。ミンダナオ地方のみ2022年に入ってから減速傾向にあったが4月は加速に転じた。
 
 4月の全国GWPI上昇率8.3%は、CPI(消費者物価指数)上昇率4.9%(2018年=100)を大幅に上回ったが、基準年が異なることに留意する必要がある。なお、GWPI発表は、CPI発表(翌月の5日前後)に比べて遅い。

 なお、フィリピン統計庁(PSA)は、6月7日、2022年5月の消費者物価(インフレ)統計を発表する予定である。5月31日、フィリピン中央銀行(BSP)は、PSA発表に先立ち、「2022年5月の消費者物価上昇率(インフレ率、前年同月比、2018年基準)は5.0%~5.8%の範囲内であったと推定している」と発表した。4月は現行基準(2018年基準)で最高の上昇率、そして、2018年12月の5.1%(2012年基準)以来、40カ月ぶりの高水準となった。5月は、更に急加速したようである。

 フィリピンGWPI前年同月比上昇率の推移(2012年基準、単位%)
時期 全国 ルソン ビサヤ ミンダナオ
2019年平均 1.6 1.6 2.2 1.9
2020年平均 2.5 2.5 0.9 1.6
2021年平均 3.1 3.2 0.4 4.6
2021年 4月 2.7 2.8 0.7 4.6
5月 2.9 3 0.8 4.2
6月 2.2 2.1 0.4 4.8
7月 2.9 3 0.6 4.4
8月 3.2 3.2 1.1 5.2
9月 3.3 3.4 0.4 4.9
10月 3.9 4.1 0.8 4.8
11月 4.2 4.3 1.4 5
12月 4.1 4.1 2.2 5
2022年 1月 4.6 4.7 3.2 4.2
2月 5.6 5.9 3.5 3.2
3月 7.6 8.2 4.1 3
4月 8.3 8.8 4.3 3.3
4カ月間 6.6 6.9 3.8 3.5
(出所:PSA資料より作成)