5月のインフレ率5.4%、3年半ぶりの高水準

5カ月間平均4.1%、インフレ目標上限突破

2022/06/08

フィリピン統計庁(PSA)の発表によると、2022年5月の総合インフレ率(消費者物価指数、2018年=100)は5.4%となり、現行基準(2018年基準)導入後の最高を記録するとともに、2018年11月の6.1%以来、3年半ぶりの高水準となったが、中央銀行の直前予想(5.0~5.8%)の範囲内に収まった。なお、PSAは2022年1月から消費者物価指数の基準年をそれまでの2012年から2018年へと変更した。

 5月の総合インフレ率の上昇は、物価指数構成比の最も大きなシェアを占める食品価格及び交通・輸送費の上昇が加速したことによる。ほとんどの食品が前月の上昇率を上回ったが、特に肉・魚、野菜の価格上昇が目立った。食品以外のインフレも、主にガソリン、ディーゼル油の値上がりにより上昇した。

 インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(NCR)は4.7%で前月から0.3%ポイント上昇。地方は5.5%で前月から0.4%ポイント上昇した。最も高かった地域はコルディリェラ行政地域(CAR)の6.9%、次いで中央ルソンの6.7%、ダバオの6.4%。一方、最も低かったのは、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治区(BARMM)の2.4%だった。

 なお、5月の総合インフレ率5.4%への寄与度は、食品・非アルコール飲料1.9%(うち食品1.8%)、住宅・水道光熱費1.4%、交通・輸送1.3%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 <2022年年初5カ月>
 5カ月間の平均総合インフレ率は4.1%、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)を僅かに超えた。マニラ首都圏は3.1%、地方は4.3%だった。4カ月間の平均総合インフレ率4.1%への寄与度は、食品・非アルコール飲料1.1%(うち食品1.0%)、住宅・水道光熱費1.2%、交通・輸送1.0%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年5月 2022年4月 2022年5月 2022年1-5月
全国   総合インフレ率 4.1 4.9 5.4 4.1
首都圏 総合インフレ率 2.6 4.4 4.7 3.1
地方   総合インフレ率 4.5 5.1 5.5 4.3
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)

項目 2021年   22年 
5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月
総合 4.1 3.7 3.7 4.4 4.2 4.0 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4
食品・非酒類 3.5 3.6 3.9 5.5 5.0 3.7 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9
酒類・タバコ 11.1 10.4 9.3 9.4 9.5 8.7 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8
衣料・履物類 1.9 1.8 1.9 1.8 1.9 1.9 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1
住宅・水道光熱費 1.7 2.0 2.7 3.4 3.8 4.3 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5
家具・住宅管理 2.2 2.2 2.1 2.0 2.2 2.1 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5
健康・医療 4.1 3.9 3.9 3.8 3.8 3.7 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4
交通・輸送 16.2 10.3 7.1 7.0 5.6 7.6 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6
情報・通信 0.6 0.8 0.5 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7
娯楽・文化 -0.5 -0.5 -0.6 1.1 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7
教育 1.0 1.0 1.0 0.9 0.7 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
外食・宿泊サービス 3.9 4.2 3.8 4.0 4.0 3.8 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.4 2.4 2.3 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5
首都圏 2.6 2.6 2.9 3.3 3.0 2.5 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7
地方 4.5 4.0 3.9 4.8 4.5 4.4 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年5月のインフレ率(2018年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
5月 1-5月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 5.4 5.4 4.1 4.1
食品・非酒類 37.75 4.9 1.9 2.8 1.1
   うち食品のみ 34.78 5.2 1.8 2.9 1.0
酒類・煙草 2.16 6.8 0.1 5.6 0.1
衣料・履物類 3.14 2.1 0.1 2.0 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 6.5 1.4 5.8 1.2
家具類・住宅管理 3.22 2.5 0.1 2.5 0.1
健康・医療 2.89 2.4 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 14.6 1.3 10.8 1.0
情報・通信 3.41 0.7 0.0 0.7 0.0
娯楽・文化 0.96 1.7 0.0 1.6 0.0
教育 1.96 0.6 0.0 0.6 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 2.8 0.3 2.9 0.3
金融サービス 0.03 0.0 0.0 22.1 0.0
パーソナルケア類 4.46 2.5 0.1 2.3 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  4.6%  3.9% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%
 (出所:PSA資料などより作成、2022年と2023年予想はBSPの5月19日時点の予想)