6月のインフレ率6.1%、3年7カ月ぶりの高水準

上半期平均4.4%、交通費等11.8%、光熱費等5.9%

2022/07/06

 フィリピン統計庁(PSA)の発表によると、2022年6月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は6.1%となり、前月の5.4%から一段と加速、現行基準(2018年基準)導入後の最高を記録するとともに、2018年11月の6.1%以来、3年7カ月ぶりの高水準に達した。民間エコノミストらによる直前推定コンセンサス(中間値)の6.0%を上回ったが、中央銀行の直近予想(5.7%~6.5%)の範囲内に収まった。

 原油価格上昇に伴う石油製品や交通費の値上がり、主要食品の値上がり、ペソ安などがインフレ率上昇圧力となった。ほとんどの食品が前月の上昇率を上回ったが、特に肉・魚、果実、乳製品、油等の価格上昇が目立った。

 インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(NCR)は5.6%で前月から0.9%ポイント上昇。地方は6.3%で前月から0.8%ポイント上昇した。最も高かった地域はコルディリェラ行政地域(CAR)の7.5%、中央ルソンの7.5%、次いでダバオの7.2%。一方、最も低かったのは、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の3.1%だった。

 6月の総合インフレ率6.1%への項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料2.3%(うち食品2.2%)、交通・輸送1.5%、住宅・水道光熱費1.4%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 <2022年上半期(1月~6月)>
 上半期の平均総合インフレ率は4.4%で、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限を超えている。マニラ首都圏は3.5%、地方は4.6%だった。平均総合インフレ率4.4%への項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料1.3%(うち食品1.2%)、住宅・水道光熱費1.3%、交通・輸送1.1%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年6月 2022年5月 2022年6月 2022年1-6月
全国   総合インフレ率 3.7 5.4 6.1 4.4
首都圏 総合インフレ率 2.6 4.7 5.6 3.5
地方   総合インフレ率 4.0 5.5 6.3 4.6
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年   2022年 
6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月
総合 3.7 3.7 4.4 4.2 4.0 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1
食品・非酒類 3.6 3.9 5.5 5.0 3.7 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0
酒類・タバコ 10.4 9.3 9.4 9.5 8.7 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8
衣料・履物類 1.8 1.9 1.8 1.9 1.9 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2
住宅・水道光熱費 2.0 2.7 3.4 3.8 4.3 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6
家具・住宅管理 2.2 2.1 2.0 2.2 2.1 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9
健康・医療 3.9 3.9 3.8 3.8 3.7 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6
交通・輸送 10.3 7.1 7.0 5.6 7.6 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1
情報・通信 0.8 0.5 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5
娯楽・文化 -0.5 -0.6 1.1 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9
教育 1.0 1.0 0.9 0.7 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
外食・宿泊サービス 4.2 3.8 4.0 4.0 3.8 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.4 2.3 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6
首都圏 2.6 2.9 3.3 3.0 2.5 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6
地方 4.0 3.9 4.8 4.5 4.4 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年6月のインフレ率(2018年=100)と寄与度 (単位:%)
項目 物価指数
構成比
6月 1-6月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 6.1 6.1 4.4 4.4
食品・非酒類 37.75 6.0 2.3 3.3 1.3
   うち食品のみ 34.78 6.4 2.2 3.5 1.2
酒類・煙草 2.16 7.8 0.2 5.9 0.1
衣料・履物類 3.14 2.2 0.1 2.0 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 6.6 1.4 5.9 1.3
家具類・住宅管理 3.22 2.9 0.1 2.5 0.1
健康・医療 2.89 2.6 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 17.1 1.5 11.8 1.1
情報・通信 3.41 0.5 0.0 0.6 0.0
娯楽・文化 0.96 1.9 0.0 1.7 0.0
教育 1.96 0.6 0.0 0.6 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 2.8 0.3 2.9 0.3
金融サービス 0.03 0.0 0.0 17.8 0.0
パーソナルケア類 4.46 2.6 0.1 2.3 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予  2024年予
2018年基準  N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  5.0%  4.2%  3.3% 
2012年基準 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年と2023年予想はBSPの6月23日時点の予想)