7月のインフレ率6.4%、3年9カ月ぶりの高水準に

7カ月間4.7%への寄与度:食品1.4%、光熱費等1.3%

2022/08/06

  フィリピン統計庁(PSA)が、8月5日、2022年7月の消費者物価(インフレ)統計(2018年基準)を発表した。

 それによると、2022年7月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は6.4%となり、前月の6.1%から一段と加速、2カ月連続の6%突破、現行基準(2018年基準)導入後の最高を記録するとともに、2018年10月の6.9%以来、3年9カ月ぶりの高水準に達した。中央銀行の直前予想(5.7%~6.5%)の範囲内に辛うじて収まった。マニラ首都圏は5.1%上昇、地方が6.8%の上昇となった。なお、季節調整済み前月比上昇率は0.6%で、6月の1.0%からは減速した。

 原油価格上昇に伴う石油製品や交通費の値上がり、構成比最大項目の食品の値上がり、ペソ安などがインフレ率上昇圧力となった。ほとんどの食品が前月の上昇率を上回ったが、特に肉・魚、果実、乳製品、油、小麦粉、砂糖等の価格上昇が目立った。7月の総合インフレ率6.4%への項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料2.6%(うち食品2.5%)、交通・輸送1.6%、住宅・水道光熱費1.2%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(NCR)は5.1%で前月から0.5%ポイント低下。一方、地方は6.8%で前月から0.5%ポイント上昇した。最も高かった地域はダバオ地域の8.6%、次いでサンボアンガ半島の8.3%。一方、最も低かったのは、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の3.6%だった。

 <2022年年初7カ月>
 7カ月間(1月~7月)の平均総合インフレ率は4.7%で、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限をかなり上回っている。マニラ首都圏は3.7%、地方は4.9%だった。項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料1.5%(うち食品1.4%)、住宅・水道光熱費1.3%、交通・輸送1.2%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)

項目 2021年7月 2022年6月 2022年7月 2022年1-7月
全国   総合インフレ率 3.7 6.1 6.4 4.7
首都圏 総合インフレ率 2.9 5.6 5.1 3.7
地方   総合インフレ率 3.9 6.3 6.8 4.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)

項目 2021年   2022年 
7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
総合 3.7 4.4 4.2 4.0 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1 6.4
食品・非酒類 3.9 5.5 5.0 3.7 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0 6.9
酒類・タバコ 9.3 9.4 9.5 8.7 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8 8.5
衣料・履物類 1.9 1.8 1.9 1.9 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2 2.5
住宅・水道光熱費 2.7 3.4 3.8 4.3 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6 5.7
家具・住宅管理 2.1 2.0 2.2 2.1 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9 3.1
健康・医療 3.9 3.8 3.8 3.7 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6 2.4
交通・輸送 7.1 7.0 5.6 7.6 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1 18.1
情報・通信 0.5 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5 0.5
娯楽・文化 -0.6 1.1 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.2
教育 1.0 0.9 0.7 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
外食・宿泊サービス 3.8 4.0 4.0 3.8 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8 3.4
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.3 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6 2.8
首都圏 2.9 3.3 3.0 2.5 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6 5.1
地方 3.9 4.8 4.5 4.4 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3 6.8
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)

項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
7月 7.1 2.1 27.6 3.6 5.6 9.9 9.2 4.5 18.4 17.6 5.2
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年7月のインフレ率(2018年=100)と寄与度 (単位:%)

項目 物価指数
構成比
7月 1-7月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 6.4 6.4 4.7 4.7
食品・非酒類 37.75 6.9 2.6 3.8 1.5
   うち食品のみ 34.78 7.1 2.5 4.0 1.4
酒類・煙草 2.16 8.5 0.2 6.3 0.1
衣料・履物類 3.14 2.5 0.1 2.1 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 5.7 1.2 5.9 1.3
家具類・住宅管理 3.22 3.1 0.1 2.6 0.1
健康・医療 2.89 2.4 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 18.1 1.6 12.7 1.2
情報・通信 3.41 0.5 0.0 0.6 0.0
娯楽・文化 0.96 2.2 0.0 1.7 0.0
教育 1.96 0.6 0.0 0.6 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 3.4 0.3 2.9 0.3
金融サービス 0.03 0.0 0.0 14.9 0.0
パーソナルケア類 4.46 2.8 0.1 2.4 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)