第2四半期GDP成長率、7.4%(前期8.2%)

サービス業9.1%、鉱工業6.3%、家計消費8.6%

2022/08/09

 フィリピン統計庁(PSA)は8月9日(火)午前10時より、2022年第2四半期(4月~6月)及び上半期(1月~6月)の国内総生産(GDP)などの国民勘定統計を発表した。

 その発表によると、2022年第2四半期(4-6月)のフィリピンの国内総生産(GDP)実質成長率は7.4%で、前期(2022年第1四半期)の8.2%(改定値)から減速、前年同期の12.1%からも減速した。新型コロナ感染減少やそれに伴う外出・移動制限緩和がプラス要因となったが、インフレ率急上昇や貿易赤字急拡大(輸入急増)が減速要因となった。そして、直前予想コンセンサス7.5%を僅かに下回ったが、アジア地域の第2四半期GDP統計を発表した主要国の中では、ベトナムの7.7%に次ぐ高成長率であり、インドネシアの5.4%や中国の0.4%を上回った。

 第2四半期のセクター別成長率はサービス産業が9.1%、鉱工業が6.3%、農林水産業業が0.2%といずれもプラス成長であった。個別では、運輸・倉庫業の27.1%、建設業の19.0%、卸小売/自動車バイク修理業の9.7%などが目立った。

 支出面で見ると、家計最終消費支出(HFCE、個人消費)が8.6%増加、政府最終消費支出(GFCE)が11.1%増加、総資本形成(GCF)は20.5%増加した。輸出は4.3%増加、GDPのマイナス勘定となる輸入は13.6%増加した。また、海外からの純所得(NPI)が64.8%増と急増したことで国民総所得(GNI)成長率は9.3%に達し、GDP成長率を上回った。

 2022年上半期のGDP成長率は7.8%で、前年同期の3.9%を上回るとともに、政府の年間成長率目標である6.5~7.5%を上回るペースとなっている。ただし、下半期はインフレ率加速や中央銀行(BSP)の追加利上げ等で減速する可能性が大きい。上半期のGNI成長率は+9.9%で前年同期のマイナス2.2%から急改善した。NPIが81.6%増加、前年同期の67.2%減少から様変わりとなったことなどが寄与した。

 なお、PSAは2020年、国内総生産(GDP)など国民勘定統計の基準年度をそれまでの2000年から2018年へと変更した。2018年基準による近年のGDP成長率推移は表2のとおりである。


 表1.産業・支出別実質GDP成長率(年率)の推移(2018年基準:単位:%)

項目 構成比 四半期成長率 上半期成長率 
22年 2021年 22年 21年  22年
期間 2Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 1H 1H
GNI(国民総所得) 100.0 -10.5 6.8 2.8 8.1 10.6 9.3 -2.2 9.9
GDP(国内総生産) 95.1 -3.8 12.1 7.0 7.8 8.2 7.4 3.9 7.8
NPI(海外からの純所得) 4.9 -75.9 -55.7 -52.4 16.0 105.4 64.8 -67.2 81.6
産業別
農林水産業 8.4 -1.3 0.0 -1.7 1.4 0.2 0.2 -0.7 0.2
鉱工業 30.5 -4.2 21.3 8.7 9.6 10.5 6.3 7.8 8.3
 鉱業 0.9 2.0 4.2 4.0 10.7 20.3 -7.3 3.2 4.9
 製造業 18.1 0.8 22.4 7.0 7.3 9.8 2.1 10.5 5.9
 電気/水道/廃棄物処理業 3.3 1.1 9.5 3.0 4.3 5.6 5.4 5.4 5.5
 建設業 8.3 -22.6 27.4 18.0 18.6 14.7 19.0 1.7 17.3
サービス産業 61.1 -4.0 9.9 7.7 8.0 8.3 9.1 2.8 8.7
 卸小売業/自動車バイク修理業 17.2 -3.4 5.4 6.5 7.1 7.0 9.7 1.0 8.4
 運輸保管業 2.8 -19.9 24.3 15.5 18.7 26.3 27.1 -4.6 26.6
 宿泊飲食サービス業 1.3 -22.5 56.7 12.4 20.2 20.3 29.9 -1.4 24.4
 情報通信業 3.9 6.6 12.6 8.6 8.7 7.4 10.7 9.8 9.2
 金融/保険業 10.2 4.3 5.2 3.9 5.4 7.7 4.2 4.8 5.9
 不動産/賃貸業 5.4 -11.7 16.8 3.9 3.4 5.9 3.9 0.7 4.9
 専門/業務サービス業 6.5 -3.6 9.7 10.6 7.2 8.3 7.7 3.4 8.0
 公務/国防/義務的社会事業 5.9 7.5 5.1 5.4 5.0 0.8 9.1 6.1 5.5
 教育 4.6 0.3 12.5 13.6 7.3 8.5 5.3 6.5 6.7
 保健衛生/社会事業 1.7 13.0 14.0 16.1 13.6 1.4 1.8 13.5 1.6
 その他のサービス業 1.6 -38.7 37.6 19.6 29.6 22.7 39.5 -16.6 30.7
支出側
家計最終消費支出 68.2 -4.8 7.3 7.1 7.5 10.0 8.6 0.9 9.3
政府最終消費支出 18.1 16.1 -4.2 13.8 7.8 3.6 11.1 3.9 7.8
総資本形成 27.7 -13.9 83.7 20.8 14.2 20.4 20.5 23.8 20.5
 総固定資本形成 26.7 -18.2 39.7 16.0 10.8 11.8 13.2 6.9 12.6
輸出 27.2 -8.4 28.6 9.1 7.7 10.4 4.3 7.5 7.3
輸入(控除) 40.2 -7.5 40.3 12.7 14.3 15.4 13.6 12.4 14.5
(出所:PSA資料より作成)

 表2.フィリピンのGDP実質成長率の推移と予想(2018年基準、単位:%)
14 15 16 17 18 19 20 21 22予  23-25予 26-28予
伸び率 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.5 5.7 6.5-7.5 6.5-8.0  6.5-8.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成、予想は2022年7月8日のDBCC設定目標)