不動産業界、上半期回復も高金利などが重荷に
収入首位アヤラランド、利益SMプライム断トツ
2022/08/25
<総じて回復もコロナ前には及ばず>
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2022年上半期(1月~6月)事業報告書発表が出揃った。下表1のとおり、新型コロナウイルス対策としての外出・移動制限の段階的な緩和などにより、2021年年間、2022年上半期ともに回復傾向となっている。ただし、主力事業、プロジェクトの立地、保有物件などによって回復ピッチに差がある。また、COVID-19パンデミック直前の2019年との比較では減益という企業が多く本格回復には至っていない。特に、最大手(収入規模)のアヤラランド(証券コード:ALI)の2021年の帰属純利益は123億ペソで、2019年の332億ペソの40%以下にとどまった。また、今上半期の純利益81億ペソは、2019年上半期の152億ペソの約半分にすぎない。更に、当面は金利急上昇が不動産業界の回復を遅らせる懸念もある。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
アヤラランドの2022年上半期の収入は前年同期比(以下同様)8.9%増の533億ペソ、帰属純利益は34%増の81億ペソであった。一方、アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の収入は13%増の471億ペソ、帰属純利益は21.2%増の141億ペソであった。すなわち、アヤラランドは収入では首位を維持したが、帰属純利益ではSMPHの57%の水準にとどまっている。アヤラランドの2021年帰属純利益もSMPHの56%に過ぎなかった。アヤラランドは不動産投資信託(REIT)創設、SMPHは未創設ということを考慮する必要もあろうが、帰属純利益ではアヤラランドが大きく下回っている。
<ショッピングモール賃貸事業、大幅増収>
外出・移動制限やショッピングモールの営業制限緩和を背景に、2022年上半期のSMPHの国内ショッピングモール賃貸収入は92%増の106億ペソ、アヤランドは倍増の69億ペソと大幅増加した。しかし、前年同期が非常に不振であったことの反動でもあり、本格回復には至っていない。オンライン取引志向の高まりもあって、新型コロナ前の2019年第1四半期比ではSMPHが21%減、アヤラランドが33%減という水準である。
<低価格住宅堅調、三菱商事合弁事業など>
一方、手頃な価格の住宅需要は堅調である。センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入や予約販売額も大幅増加、CPG収入の48%を占めるに至った。なお、表2のように、中央銀行(BSP)住宅不動産価格指数は、2021年下半期以降は前年同期比プラスで推移している。
表1.上場不動産企業の2022年上半期決算動向(単位:百万ペソ、純損益は帰属ベース)
(出所:各社の年次報告書などより作成)
表2.BSP住宅不動産価格指数上昇率(前年同期比、単位:%、フィリピン中央銀行調査)
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)
フィリピン証券取引所(PSE)上場の不動産企業の2022年上半期(1月~6月)事業報告書発表が出揃った。下表1のとおり、新型コロナウイルス対策としての外出・移動制限の段階的な緩和などにより、2021年年間、2022年上半期ともに回復傾向となっている。ただし、主力事業、プロジェクトの立地、保有物件などによって回復ピッチに差がある。また、COVID-19パンデミック直前の2019年との比較では減益という企業が多く本格回復には至っていない。特に、最大手(収入規模)のアヤラランド(証券コード:ALI)の2021年の帰属純利益は123億ペソで、2019年の332億ペソの40%以下にとどまった。また、今上半期の純利益81億ペソは、2019年上半期の152億ペソの約半分にすぎない。更に、当面は金利急上昇が不動産業界の回復を遅らせる懸念もある。
<収入首位アヤラランド、利益首位はSMプライム>
アヤラランドの2022年上半期の収入は前年同期比(以下同様)8.9%増の533億ペソ、帰属純利益は34%増の81億ペソであった。一方、アヤラランドと首位を争う総合不動産企業であり最大のショッピングモール開発企業であるSMプライム ホールディングス(証券コード:SMPH)の収入は13%増の471億ペソ、帰属純利益は21.2%増の141億ペソであった。すなわち、アヤラランドは収入では首位を維持したが、帰属純利益ではSMPHの57%の水準にとどまっている。アヤラランドの2021年帰属純利益もSMPHの56%に過ぎなかった。アヤラランドは不動産投資信託(REIT)創設、SMPHは未創設ということを考慮する必要もあろうが、帰属純利益ではアヤラランドが大きく下回っている。
<ショッピングモール賃貸事業、大幅増収>
外出・移動制限やショッピングモールの営業制限緩和を背景に、2022年上半期のSMPHの国内ショッピングモール賃貸収入は92%増の106億ペソ、アヤランドは倍増の69億ペソと大幅増加した。しかし、前年同期が非常に不振であったことの反動でもあり、本格回復には至っていない。オンライン取引志向の高まりもあって、新型コロナ前の2019年第1四半期比ではSMPHが21%減、アヤラランドが33%減という水準である。
<低価格住宅堅調、三菱商事合弁事業など>
一方、手頃な価格の住宅需要は堅調である。センチュリー プロパティーズ グループ(証券コード:CPG)が三菱商事と展開する低価格住宅分譲事業の収入や予約販売額も大幅増加、CPG収入の48%を占めるに至った。なお、表2のように、中央銀行(BSP)住宅不動産価格指数は、2021年下半期以降は前年同期比プラスで推移している。
表1.上場不動産企業の2022年上半期決算動向(単位:百万ペソ、純損益は帰属ベース)
企業名 | 収入 | 増減率 | 純利益 | 増減率 | 純資産 |
アヤラランド | 53,338 | 8.9% | 8,080 | 33.7% | 281,475 |
SMプライム | 47,052 | 13.3% | 14,108 | 21.2% | 344,479 |
ロビンソンズランド | 27,495 | 5.6% | 4,693 | -14.6% | 131,178 |
メガワールド | 25,585 | 24.4% | 5,884 | 17.5% | 234,648 |
ビスタランド | 15,428 | -4.3% | 3,826 | 4.8% | 117,568 |
8990ホールディングス | 10,051 | 0.4% | 3,649 | 5.5% | 49,859 |
フィルインベストランド | 8,814 | 7.8% | 1,205 | -54.0% | 90,158 |
ロックウェルランド | 7,732 | 13.8% | 1,307 | 4.8% | 27,017 |
セブランドマスターズ | 7,556 | 45.5% | 1,550 | 17.6% | 19,002 |
センチュリープロパティーズ | 5,312 | 19.9% | 324 | 15.5% | 22,913 |
ダブルドラゴン | 3,411 | 26.8% | 753 | -68.7% | 71,444 |
シャンプロパティーズ | 3,265 | 48.4% | 1,508 | 0.8% | 44,147 |
ベルコープ | 2,818 | 60.7% | 960 | 456.9% | 34,053 |
表2.BSP住宅不動産価格指数上昇率(前年同期比、単位:%、フィリピン中央銀行調査)
年・時期 | 2020年 | 21年 | 22年 | ||||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 1Q | |
全住宅 | 12.6 | 26.6 | -0.4 | 0.8 | -4.2 | -9.4 | 6.3 | 4.9 | 5.6 |
一戸建住宅 | 7.3 | 23.4 | 7.4 | 4.7 | 0.2 | -7.4 | -4.2 | -1.1 | -2.5 |
二世帯住宅 | 38.3 | 0.8 | -8.8 | 20.0 | -20.7 | 28.9 | -0.2 | -10.2 | 20.9 |
タウンハウス | 5.6 | 10.8 | 12.0 | 16.1 | 8.3 | 15.1 | 37.1 | 22.6 | 25.6 |
コンドミニアム | 23.6 | 30.1 | -15.0 | -8.4 | -10.7 | -14.3 | 13.6 | 10.4 | 14.7 |