比クボタ、AI活用の農機具購入ファイナンス事業に参画

アジアDX促進事業で新興フィンテック企業LTIDに強力

2022/08/28

  日本貿易振興機構(ジェトロ)は、8月26日、 「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に関し 第3回公募における採択事業者について審査を行った結果、採択事業28件(申請件数57件)を決定したと発表した。

 28件のうち、フィリピン案件は、株式会社ロングターム・インダストリアル・デベロップメント(LTID、本社:東京都三鷹市)による「新種AI農機具ファイナンス」の1件であった。LTIDは、AIを用いて「農家への与信管理」や「作物の流通価格予測」を行い、それらのデータを用いることで「ファイナンス(金融)」や「フードバリューチェーン」等をデジタル上で提供。これにより、コストを抑えながら、途上国においても適正かつ持続的な農業が成り立つ仕組みを実現することを目指している。既にJICA(国際協力機構)における共同事業化が採択済みで、農業に強いフィリピンのベンゲット大学と協力して2021年8月より実証実験開始、2021年9月よりサービスをスタートしている。

 フィリピンでは人件費の上昇や農業人口減少等を受け農機具導入とそのファイナンスのニーズが高まっている。然し乍ら銀行は担保貸付のノウハウしかなく、担保を持たない一般農家にはファイナンスの機会がない、このような状況に対応するために、今回の「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」で採択された「新種AI農機具ファイナンス」では、以下の様な実証を行う。
 ・現地パートナーと連携しながら、耕作面積3~5ヘクタール程度の中規模米農家から100名程度の参加者を選定、作物に担保設定し農機具購入ファイナンスを提供。農場の写真からLTIDのAIにより信用リスク値を算出、これにより与信管理を行う。
 ・フィリピンの米は3~4カ月で収穫できるため、上記を1~2回繰り返しデータを蓄積しAIの精度を高めながら1年後の3回目の収穫期の前後から徐々に現場に導入する。

 既に、農機具導入で生産性が向上し農業所得が2~3倍になることが実証されている。今回の事業において、農家の40%程度を占める耕作面積の3~5ヘクタールの中規模米農家に対して農機具を浸透させる。国全体で60%程
度に普及すれば収穫量が2~3%増加し自給率の改善が期待される。

 今回の「新種AI農機具ファイナンス」事業の現地パートナーはクボタ フィリピン(比クボタ)とクロピタル(CROPITAL)の2社である。この2社は、 米農家紹介、農機具の提供、現地企業や政府との協力・連携等に関して支援する。