8月のインフレ率6.3%(前月6.4%)、コアは4.6%

3カ月連続6%台、8カ月間平均4.9%、コア平均2.9%

2022/09/07

 フィリピン統計庁(PSA)が、9月6日、2022年8月の消費者物価(インフレ)統計を発表した。それによると、2022年8月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は6.3%となり、前月の6.4%から僅かに減速したものの、3カ月連続の6%突破となった。中央銀行の直前予想(5.9%~6.7%)の範囲内には収まった。特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は4.6%で前月から0.7%ポイント上昇した。

 総合インフレ率が前月から小幅ながら鈍化したのは、主に、国内石油価格の反落に伴う交通・輸送費上昇率鈍化、野菜値下がり等による食品価格の上昇率鈍化、情報通信費の上昇率鈍化などによる。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏(NCR)は5.7%で前月の5.1%から0.6%ポイント上昇。一方、地方は6.5%で前月の6.8%から0.3%ポイント低下した。最も高かった地域はサンボアンガ半島の9.1%、次いでダバオ地域の8.9%。一方、最も低かったのは、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の4.9%だった。

 8月の総合インフレ率6.3%への項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料2.4%(うち食品2.3%)、住宅・水道光熱費1.4%、交通・輸送1.3%、外食・宿泊サービス0.4%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 <2022年年初8カ月>
 2022年年初8カ月間の平均総合インフレ率は4.9%で、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限をかなり超えている。8カ月間でマニラ首都圏は4.0%上昇、地方は5.1%上昇した。コアインフレ率は8カ月間で2.9%であった。

 項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料1.6%(うち食品1.5%)、住宅・水道光熱費1.3%、交通・輸送1.2%、外食・宿泊サービス0.3%、酒類・たばこ0.1%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年8月 2022年7月 2022年8月 2022年1-8月
全国   総合インフレ率 4.4 6.4 6.3 4.9
     コアインフレ率 2.8 3.9 4.6 2.9
首都圏 総合インフレ率 3.3 5.1 5.7 4.0
地方   総合インフレ率 4.8 6.8 6.5 5.1
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年 2022年
8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
総合 4.4 4.2 4.0 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1 6.4 6.3
食品・非酒類 5.5 5.0 3.7 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0 6.9 6.3
酒類・タバコ 9.4 9.5 8.7 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8 8.5 9.3
衣料・履物類 1.8 1.9 1.9 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2 2.5 2.8
住宅・水道光熱費 3.4 3.8 4.3 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6 5.7 6.8
家具・住宅管理 2.0 2.2 2.1 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9 3.1 3.4
健康・医療 3.8 3.8 3.7 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6 2.4 2.5
交通・輸送 7.0 5.6 7.6 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1 18.1 14.6
情報・通信 0.6 0.7 0.6 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5 0.5 0.4
娯楽・文化 1.1 1.6 1.6 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.2 2.4
教育 0.9 0.7 0.7 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 3.8
外食・宿泊サービス 4.0 4.0 3.8 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8 3.4 4.2
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.2 2.2 2.1 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6 2.8 3.3
首都圏 3.3 3.0 2.5 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6 5.1 5.7
地方 4.8 4.5 4.4 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3 6.8 6.5
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
7月 7.1 2.1 27.6 3.6 5.6 9.9 9.2 4.5 18.4 17.6 5.2
8月 6.5 2.2 26.1 3.9 -2.7 9.6 7.2 6.5 19.6 26.0 5.8
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年8月のインフレ率(2018年=100)と寄与度 (単位:%)
項目 物価指数
構成比
8月 1-8月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 6.3 6.3 4.9 4.9
食品・非酒類 37.75 6.3 2.4 4.2 1.6
   うち食品のみ 34.78 6.5 2.3 4.3 1.5
酒類・煙草 2.16 9.3 0.2 6.7 0.1
衣料・履物類 3.14 2.8 0.1 2.2 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 6.8 1.4 6.0 1.3
家具類・住宅管理 3.22 3.4 0.1 2.7 0.1
健康・医療 2.89 2.5 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 14.6 1.3 13.0 1.2
情報・通信 3.41 0.4 0.0 0.6 0.0
娯楽・文化 0.96 2.4 0.0 1.8 0.0
教育 1.96 3.8 0.1 1.0 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 4.2 0.4 3.1 0.3
金融サービス 0.03 0.0 0.0 12.8 0.0
パーソナルケア類 4.46 3.3 0.1 2.5 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予  2024年予
2018年基準  N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  5.4%  4.0% 3.2%
2012年基準 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年以降の予想はBSPの8月18日時点の予想)