中央銀行、0.75%の大幅追加利上げ念頭に

11月17日の定例会合か臨時会合開催の可能性

2022/10/17

  フィリピン中央銀行は(BSP)が、ペソの急すぎる下落防止へ強い決意を表明するとともに、実際にペソ急落防止に向けて、市場介入など活発に動きつつある。11月17日開催予定の今年7回目の金融委員会(MB)政策定例会合において、0.50%~0.75%の追加利上げを検討しているようだ。0.75%の利上げは景気への大きな影響が懸念されるが、インフレ抑制やペソ急落防止のために選択される可能性がある。

 BSPは、9月22日開催の今年6回目のMB政策定例会合において政策金利体系の0.50%追加引き上げを決定した。すなわち、9月23日から主要政策金利である翌日物借入金利(RRP)4.25%を中心とする3.75%~4.75%という金利コリドーに移行されることになった。RRPは2019年9月26日までの4.25%以来、約3年ぶりの高水準となる。また、2022年の累計利上げ幅は2.25%に達し、アセアン諸国で最大級の利上げ幅となっている。

 この中央銀行の利上げにもかかわらず、米国が3回連続の0.75%の利上げを行ったこともあって、ペソ対ドルレート下落に拍車がかからず、10月14日の終値は、1米ドル=58.935ぺソで年初からのペソ下落率は約13.5%に達している。アジア主要通貨の中で最大級の下落率となっている。10月3日、10日、13日には終値ベースでの過去最安値59.000ペソを記録している。

 このような状況下で、フィリピン中央銀行(BSP)のフェリーペ・メダーリャ総裁はインフレ抑制とペソ急落防止のため、更なる追加利上げを行わざるを得ないと判断している。上記のように、次回の中央銀行MB政策定例会合は11月17日に開催される。次回の米国FOMC(連邦公開市場委員会)は11月1日と2日に予定されている。したがって、11月の両国の動きが注目される。

 なお、BSPは現在、年8回の金融委員会(MB)政策定例会合を開催している。2022年のMB定期政策会合は、2月17日、3月24日、5月19日、6月23日、8月18日、9月22日、11月17日、12月15日に開催、もしくは開催予定されている。1月、4月、7月、10月は定例会合は開催されないが、今年7月には臨時会合で0.75%の緊急利上げが実施された。したがって、10月も全く無風とは言い切れないし、次回の米国FOMCの結果やその影響次第では、FOMC直後の臨時緊急利上げの可能性も考えられる。
 
 なお、BSPのドル売り介入もあって、9月末の
総外貨準備高(GIR)は前年同月末比10.9%減の950億1,400万米ドル(速報値)と二桁減少した。前月末の974億4,200万米ドル(改訂値)からは2.5%減少した。そして、7カ月連続減少、2020年6月の934億6,000万米ドル以来、2年3カ月ぶりの低水準となってしまった。このような副作用もあるが、現時点では、ペソ急落に歯止めをかける必要がある。

 フィリピンの総外貨準備高推移(単位:百万米ドル)
項目 年末値  9月末 伸び率
年・月 19年 20年 21年 21年 22年 前月比 前年同月比
総外貨準備高(GIR) 87,840 110,117 108,794 106,596 95,014 -2.5% -10.9%
輸入カバー率(月数) 7.6 12.3 9.6 10.1 7.6 -
(出所:BSP資料より作成、2022年9月末は速報値)

フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)
15年 16年 17年 18年 19年 20年 21年  22年予  23年予  24年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  5.6%  4.1%  3.0% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
 (出所:PSA資料などより作成、2022年以降の予想はBSPの9月22日時点の予想)