三菱UFJマニラ支店、来年1ドル=54.50~61.50ペソと予想

経常収支赤字や市場介入を想定、ドル安への転換は年後半

2022/11/28

 三菱UFJ銀行(MUFG)マニラ支店は、11月26日、3年ぶりに対面方式でのMUFGセミナー(経済・為替関連講演会)を開催した。2020年と2021年は、新型コロナ禍で対面方式での開催は中止せざるを得なくなり、セミナーの代わりに、「フィリピン経済概況 ペソ為替・金利見通し」という資料を作成、顧客などに案内したという経緯がある。

 今回のMUFGセミナーは2部構成で、第一部がMU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd. のManaging Directorの池上一希氏による『グローバル経済展望及びASEAN地域のサプライチェーン動向』、第二部がMUFGマニラ支店 資金為替課 Directorの東郷欣彦氏による『フィリピン経済概況とペソ金利・為替見通し』であった。このあと、三菱UFJ銀行が20%出資するフィリピン証券取引所(PSE)上場の有力拡大商業銀行であるセキュリティバンク(証券コード:SECB)の概況・サービス内容に関する説明が行われ、盛況なセミナーとなった。特に関心の高いフィリピンペソ相場の見通しなどについては以下のように説明された。

 【ペソ相場の見通し~予想レンジとメインシナリオ】

 MUFGマニラ支店によるフィリピンペソ相場の見通し
時期 22年11月~12月 23年1月~3月 23年4月~6月 23年後半
米ドル/ペソ 56.00~60.00 57.50~61.50 56.00~61.00 54.50~60.00
ペソ/円 2.360~2.560 2.225~2.450 2.210~2.440 2.200~2.430

 【材料・注目点】
・フィリピン経常収支の赤字基調の維持・拡大
・フィリピン中央銀行(BSP)の金融政策の方向性
・為替介入姿勢の趨勢と変化
  
 【メインシナリオ】
・当面は堅調な内需を背景に高水準での輸入が続き、貿易収支赤字は維持、乃至は拡大するとみられる。消費者物価指数(CPI)は、BSP目標上限の4%から大きく乖離しており、国内要因だけではない中で物価抑制の難易度は引き続き高い。BSPはインフレ抑制とペソ安防衛を明確に優先課題と位置付けており、通貨防衛を踏まえて米国の利上げには追従する姿勢を示している。
・米CPI軟化の兆しから米利上げ停止≒米ドル高の終焉の可能性も見え始めているが、色濃くなる世界的な景気後退が金融政策の差異以外の米ドル需要をもたらそう。一方で、急速な米ドルの上昇には引き続き断続的な為替介入が重石となるだろう。
・当面は構造的なペソ安要因、相対的な米ドル高要因による米ドル/ペソの堅調地合いは続くと予想。米ドル安への本格的な転換は米利上げのピークアウトが見込まれる2023年後半以降になりそう。

 【不透明・不確定材料】
・地政学リスクの上昇・拡大(ウクライナ戦争の長期化・悪化、東アジアの緊張激化)
・新興国・グローバル企業の信用不安の顕在化
・景気後退の「速度」と「度合い」