11月のインフレ率8.0%、14年ぶりの8%台へ加速

食品高など響く、11カ月平均5.6%、コア平均3.7%

2022/12/07

  フィリピン統計庁(PSA)は12月6日、2022年11月の消費者物価(インフレ)統計を発表した。それによると、2022年11月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は8.0%となり、前月の7.7%から一段と加速、現行基準(2028年基準)採用後の最高を更新するとともに、2008年11月の8.1%以来、14年ぶりの高インフレとなった。また、中央銀行の直前予想(7.4%~8.2%)の上限近くへと上昇、民間エコノミストらの直前予想コンセンサスの7.8%を上回った。

 項目別では、食品・非アルコール飲料の上昇率が10.0%と、前月の9.4%から加速したことなどが響いた。項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料3.8%(うち食品3.6%)、住宅・水道光熱費1.5%、交通・輸送1.1%、外食・宿泊サービス0.6%、酒類・たばこ0.2%、パーソナルケア類0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%だった。特定食品・エネルギー関連品目等変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は6.5%(前月5.9%)であった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏は7.5%に減速(前月7.7%)、地方は8.0%に加速(前月7.6%)した。最も高かった地域はダバオ地域の9.7%、次いで西ビサヤ地域の9.6%。一方、最も低かったのは、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の6.0%だった。
 
 <2022年年初11カ月>
 2022年11カ月間の平均総合インフレ率は5.6%で、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限をかなり超えている。マニラ首都圏は4.9%上昇、地方は5.8%上昇した。項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料2.1%(うち食品2.0%)、住宅・水道光熱費1.4%、交通・輸送1.2%、外食・宿泊サービス0.4%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。11カ月間の平均コアインフレ率は3.7%となった。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年11月 2022年10月 2022年11月 2022年1-11月
全国   総合インフレ率 3.7 7.7 8.0 5.6
      コアインフレ率 2.4 5.9 6.5 3.7
首都圏 総合インフレ率 2.2 7.7 7.5 4.9
地方   総合インフレ率 4.0 7.6 8.0 5.8
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 総合CPI上昇率  (2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年 2022年
11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
総合 3.7 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1 6.4 6.3 6.9 7.7 8.0
食品・非酒類 2.2 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0 6.9 6.3 7.4 9.4 10.0
酒類・タバコ 6.9 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8 8.5 9.3 9.8 10.4 10.6
衣料・履物類 2.0 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2 2.5 2.8 2.9 3.1 3.6
住宅・水道光熱費 4.8 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6 5.7 6.8 7.3 7.4 6.9
家具・住宅管理 2.1 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9 3.1 3.4 3.5 3.8 4.5
健康・医療 3.6 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6 2.4 2.5 2.4 2.6 2.8
交通・輸送 9.8 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1 18.1 14.6 14.5 12.5 12.3
情報・通信 0.6 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5 0.5 0.4 0.5 0.5 0.7
娯楽・文化 1.6 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.2 2.4 2.7 3.0 3.3
教育 0.7 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 3.8 3.5 3.4 3.6
外食・宿泊サービス 3.7 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8 3.4 4.2 4.6 5.7 6.5
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.2 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6 2.8 3.3 3.4 3.7 4.2
首都圏 2.2 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6 5.1 5.7 6.5 7.7 7.5
地方 4.0 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3 6.8 6.5 7.0 7.6 8.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
7月 7.1 2.1 27.6 3.6 5.6 9.9 9.2 4.5 18.4 17.6 5.2
8月 6.5 2.2 26.1 3.9 -2.7 9.6 7.2 6.5 19.6 26.0 5.8
9月 7.7 2.4 26.2 3.8 3.5 9.0 9.1 7.6 20.1 30.2 6.7
10月 9.8 2.5 27.4 4.9 16.0 11.5 9.4 8.7 20.4 34.4 8.1
11月 10.3 3.1 27.0 6.2 25.8 8.6 8.3 9.4 19.8 38.0 8.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年11月の主要品目のインフレ率(2018年=100)と寄与度(インフレ率:%、寄与度:%ポイント)
項目 物価指数
構成比
11月 1-11月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 8.0 8.0 5.6 5.6
食品・非酒類 37.75 10.0 3.8 5.5 2.1
   うち食品のみ 34.78 10.3 3.6 5.7 2.0
酒類・煙草 2.16 10.6 0.2 7.7 0.2
衣料・履物類 3.14 3.6 0.1 2.5 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 6.9 1.5 6.3 1.4
家具類・住宅管理 3.22 4.5 0.1 3.1 0.1
健康・医療 2.89 2.8 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 12.3 1.1 13.0 1.2
情報・通信 3.41 0.7 0.0 0.6 0.0
娯楽・文化 0.96 3.3 0.0 2.1 0.0
教育 1.96 3.6 0.1 1.7 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 6.5 0.6 3.8 0.4
金融サービス 0.03 0.0 0.0 9.0 0.0
パーソナルケア類 4.46 4.2 0.2 2.9 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)

 フィリピンのインフレ率推移(2012年基準と2018年基準との比較)

2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予  2024年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  5.8%  4.3%  3.1% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4% 2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年以降の予想はBSPの2022年11月17日時点の予想)