インフレ目標、2026年まで「2.0%~4.0%」継続を決定

中央銀行最新予想は今年5.8%、23年4.5%で目標未達に

2022/12/18

  このほど開発予算調整委員会(DBCC)は、フィリピン中央銀行(BSP)との協議により、既に設定されている2023~2024年のインフレ目標3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)の継続を決定した。そして、2025~2026年のインフレ目標についても、2.0%~4.0%とすることを決定した。

 DBCCは政府の経済関係部署の横断機関であり、マクロ経済目標決定の役割を担っている。インフレ目標はBSP金融委員会の方針に沿って、DBCCが最終決定することになっている。インフレ目標は2015年から2022年まで2.0%~4.0%が継続されてきているが、2026年まで更に4年間2.0%~4.0%が継続されることになった。

 フィリピンでは、金融政策を導く基本的枠組みとして、インフレ目標が2002年から正式に導入された。インフレ目標が比較的シンプルな枠組みであり国民にも分かりやすい、中央銀行の重要使命である物価安定に集中しやすい、インフレ目標を発表しそれを基準とした金融政策を履行することは金融政策に関する透明性や国民からの信頼性を高めるなどから、フィリピン政府はインフレ目標導入に踏み切ったのである。

 なお、インフレ率予想(Forecast)とインフレ目標(Target)が混同されることが多いが、両者は異なるものである。予想は単純な見通しであり環境が変化すればその都度変更されるものである。インフレ目標(Target)は金融政策の基本的枠組みであり、それを基準として各種政策が決定されるものであり、頻繁に変更されるものではない。

 ちなみにBSPは、12月15日の0.50%追加利上げ決定に際して、2022年の年間平均インフレ率予想をそれまでの5.8%に据え置いたが、2023年予想についてはそれまでの4.3%から4.5%へと再上方修正した。ただし、2024年についてはそれまでの3.1%から2.8%へと下方修正した。

 フィリピン統計庁(PSA)は、2022年1月分(2月4日発表)から、インフレ統計の基準年(指数を100とする年)をそれまでの2012年(旧基準)から2018年(現行基準)に変更した。2021年のインフレ率は、2018年基準では3.9%でインフレ目標(2%~4%)に収まったように見えるが、目標設定時の2012年基準では4.5%であり、2018年の5.2%以来の高水準に達し、インフレ目標は達成できなかった。

 フィリピンのインフレ目標は、2015年以降、3.0%±1.0%(2.0%~4.0%)が継続されてきている。下表のとおり、2015年は0.7%、2016年は1.3%とインフレ目標の下限以下にとどまり、目標未達成となった。2017年は2.9%で目標を達成したが、2018年は5.2%と急上昇、インフレ目標の上限を大きく上回ってしまった。2019年と2020年は2年連続で目標達成となったが、2021年は3年ぶりに未達成で、この7年間の目標達成率は43%にとどまっている。そして、上記のように、2022年は2年連続で未達成となることが確実となっている。2023年については、今回の予想上方修正で、インフレ目標の上限突破の可能性が高まったと見ている。すなわち、インフレ目標は3年連続で未達成となる可能性が高まった。


 フィリピンのインフレ率(2012年基準と2018年基準)とインフレ目標推移
2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年  2022年予  2023年予  2024年予
2018年基準 N.A.    N.A.   N.A.  N.A.   2.4%  2.4%  3.9%  5.8%  4.5%  2.8% 
2012年基準 0.7% 1.3% 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A.    N.A.     N.A.   
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%  2~4%  2~4%  2~4%
(出所:PSA資料などより作成、2022年以降の予想はBSPの2022年12月15日時点の予想)