22年12月の総合インフレ率8.1%、年間平均5.8%に加速

月間と年間ともに14年ぶり高水準、年間コアインフレ率3.9%

2023/01/06

 フィリピン統計庁(PSA)は1月5日、2022年12月の消費者物価(インフレ)統計を発表した。それによると、2022年12月の総合インフレ率(消費者物価指数{2018年=100}の前年同月比)は8.1%となり、2カ月連続で8%台を記録した。前月の8.0%から一段と加速し、現行基準(2018年基準)採用後の最高を更新。そして、2008年11月の9.1%以来、14年ぶりの高インフレとなった。ただし、中央銀行の直前予想(7.8%~8.6%)圏内に収まり、エコノミストによる直前予想コンセンサス(中間値)8.3%を下回った。

 米、果実、野菜、砂糖など農作物の値上がりで食品・非アルコール飲料の上昇率が10.2%と、前月の10.0%からさらに加速したことなどが響いた。総合インフレ率8.1%への項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料3.8%(うち食品3.7%)、住宅・水道光熱費1.5%、交通・輸送1.1%、外食・宿泊サービス0.7%、酒類・たばこ0.2%、パーソナルケア類0.2%、家具・住宅設備管理0.2%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、教育0.1%だった。

 総合インフレ率を地域別で見ると、マニラ首都圏は7.6%に加速(前月7.5%)、地方は8.2%に加速(前月8.0%)した。最もインフレ率が高かった地域は西ビサヤ地域の10.5%、次いでダバオ地域の9.3%。一方、最も低かったのは、ムスリム・ミンダナオ・バンサモロ自治区(BARMM)の6.3%だった。

 特定食品・エネルギー関連品目など変動の激しい品目を除いたコアインフレ率は6.9%で、前月の6.5%から更に加速、2021年12月の1.8%からは大幅加速した。

 <2022年>
 2022年年間の平均総合インフレ率は5.8%で、2021年の3.9%、2020年の2.4%から加速、政府の2022年のインフレ目標(2.0%~4.0%)の上限を大幅に上回った。そして、年間平均ベースでも2008年の平均8.2%以来、14年ぶりの高水準となった。

 地域別では、マニラ首都圏が5.1%で前年の2.7%から加速、地方は6.0%で同4.2%から加速した。項目別寄与度は、食品・非アルコール飲料2.2%(うち食品2.1%)、住宅・水道光熱費1.4%、交通・輸送1.2%、外食・宿泊サービス0.4%、酒類・たばこ0.2%、家具・住宅設備管理0.1%、健康・医療0.1%、衣料・履物類0.1%、パーソナルケア類0.1%だった。年間の平均コアインフレ率は3.9%で、2021年の3.0%から加速した。

 総合消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率:2018年基準、前年同月比%)
項目 2021年12月 2022年11月 2022年12月  21年年間 22年年間
全国   総合インフレ率 3.1 8.0 8.1  3.9 5.8
      コアインフレ率 1.8 6.5 6.9  3.0 3.9
首都圏 総合インフレ率 2.1 7.5 7.6  2.7 5.1
地方   総合インフレ率 3.4 8.0 8.2  4.2 6.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 CPI上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 21年 2022年
12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
総合インフレ率 3.1 3.0 3.0 4.0 4.9 5.4 6.1 6.4 6.3 6.9 7.7 8.0 8.1
食品・非酒類 1.6 1.7 1.2 2.6 3.8 4.9 6.0 6.9 6.3 7.4 9.4 10.0 10.2
酒類・タバコ 6.2 5.6 4.7 4.8 5.9 6.8 7.8 8.5 9.3 9.8 10.4 10.6 10.7
衣料・履物類 1.9 2.0 1.9 1.9 2.0 2.1 2.2 2.5 2.8 2.9 3.1 3.6 3.9
住宅・水道光熱費 5.1 4.5 4.8 6.2 6.9 6.5 6.6 5.7 6.8 7.3 7.4 6.9 7.0
家具・住宅管理 2.1 2.4 2.3 2.6 2.6 2.5 2.9 3.1 3.4 3.5 3.8 4.5 4.8
健康・医療 3.2 3.1 2.7 2.5 2.4 2.4 2.6 2.4 2.5 2.4 2.6 2.8 3.1
交通・輸送 6.6 7.0 8.8 10.3 13.0 14.6 17.1 18.1 14.6 14.5 12.5 12.3 11.7
情報・通信 0.6 0.7 0.6 0.7 0.7 0.7 0.5 0.5 0.4 0.5 0.5 0.7 0.7
娯楽・文化 1.6 1.5 1.6 1.5 1.6 1.7 1.9 2.2 2.4 2.7 3.0 3.3 3.9
教育 0.7 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 3.8 3.5 3.4 3.6 3.6
外食・宿泊サービス 3.2 3.0 2.9 3.0 2.8 2.8 2.8 3.4 4.2 4.6 5.7 6.5 7.0
金融サービス 43.3 43.3 43.3 43.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
パーソナルケア類 2.1 2.2 2.2 2.2 2.3 2.5 2.6 2.8 3.3 3.4 3.7 4.2 4.5
首都圏 2.1 1.3 1.9 3.4 4.4 4.7 5.6 5.1 5.7 6.5 7.7 7.5 7.6
地方 3.4 3.5 3.4 4.1 5.1 5.5 6.3 6.8 6.5 7.0 7.6 8.0 8.2
コアインフレ率  1.8  1.8  1.9  2.2  2.5  2.8  3.1  3.9  4.6  5.0  5.9  6.5  6.9
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 フィリピンのインフレ率(2018年基準と2012年基準との比較)とインフレ目標の推移
2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年予 2024年予
2018年基準 2.9% 5.2% 2.4% 2.4% 3.9% 5.8% 4.5% 2.8%
2012年基準 2.9% 5.2% 2.5% 2.6% 4.5% N.A. N.A. N.A.
インフレ目標 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4% 2~4%
(出所:BSP資料より作成、2023-24年はBSPの12月15日時点の予想)

 食料物価上昇率 (2018年基準、前年同月比%)
項目 食品 コーン 果実 野菜 肉類 魚類 乳製品・卵 油・油脂 砂糖・菓子類 その他食品
22/1月 1.6 1.0 27.7 -5.7 -10.8 4.3 6.2 0.9 8.5 2.8 1.9
 2月 1.1 1.6 31.3 -4.9 -8.4 1.4 2.9 0.7 8.9 4.9 2.0
3月 2.8 1.6 31.3 -4.0 -0.1 2.9 4.3 0.8 9.1 6.2 2.3
4月 4.0 1.6 27.1 -4.6 9.2 4.2 5.0 1.1 11.7 7.3 2.9
5月 5.2 1.5 24.4 -2.4 15.2 5.4 6.2 1.5 13.6 8.7 3.5
6月 6.4 2.0 24.7 1.1 14.4 8.1 6.7 2.7 15.5 10.9 4.3
7月 7.1 2.1 27.6 3.6 5.6 9.9 9.2 4.5 18.4 17.6 5.2
8月 6.5 2.2 26.1 3.9 -2.7 9.6 7.2 6.5 19.6 26.0 5.8
9月 7.7 2.4 26.2 3.8 3.5 9.0 9.1 7.6 20.1 30.2 6.7
10月 9.8 2.5 27.4 4.9 16.0 11.5 9.4 8.7 20.4 34.4 8.1
11月 10.3 3.1 27.0 6.2 25.8 8.6 8.3 9.4 19.8 38.0 8.9
12月 10.6 3.4 26.3 7.6 32.4 7.4 6.3 9.9 19.2 38.8 9.4
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)

 2022年12月の主要品目のインフレ率(2018年=100)と寄与度(インフレ率:%、寄与度:%ポイント)
項目 物価指数
構成比
12月 1-12月
インフレ率 寄与度 インフレ率 寄与度
総合 100.00 8.1 8.1 5.8 5.8
食品・非酒類 37.75 10.2 3.8 5.9 2.2
   うち食品のみ 34.78 10.6 3.7 6.1 2.1
酒類・煙草 2.16 10.7 0.2 7.9 0.2
衣料・履物類 3.14 3.9 0.1 2.6 0.1
住宅・水道光熱費 21.38 7.0 1.5 6.4 1.4
家具類・住宅管理 3.22 4.8 0.2 3.2 0.1
健康・医療 2.89 3.1 0.1 2.6 0.1
交通・輸送 9.03 11.7 1.1 12.9 1.2
情報・通信 3.41 0.7 0.0 0.6 0.0
娯楽・文化 0.96 3.9 0.0 2.3 0.0
教育 1.96 3.6 0.1 1.8 0.0
外食・宿泊サービス 9.62 7.0 0.7 4.1 0.4
金融サービス 0.03 0.0 0.0 8.2 0.0
パーソナルケア類 4.46 4.5 0.2 3.0 0.1
(出所:フィリピン中央銀行資料より作成)