債券取引所、22年の新規上場5千億ペソで過去最高大幅更新

前年比2.4倍、上場残高1兆3,800億ペソ(53社の196銘柄)に

2023/01/10

 2022年に発行・新規上場された社債は30銘柄でその総額は5,086億6,000万ペソに達した。低調であった2021年の年間新規上場額2,134億5,000万ペソを138%上回った。すなわち、約2.4倍へと急増した。そして、これまでの年間過去最高記録であった2020年の3,878億3,000万ペソを31%上回る最高記録となった。

 2022年の上場案件で目立ったのは、規模では、12月のサンミゲル(証券コード:SMC)の個人向け社債600億ペソ、7月のサンミゲル発電子会社であるSMCグローバルパワー ホールディングスの400億ペソの社債、4月のSMプライムホールディングス(SMPH)の個人向け社債300億ペソ、3月のサンミゲル社債300億ペソ、1月のバンク オブ ザ フィリピン アイランズ(BPI)の社債270億ペソ、10月のメトロポリタンバンク&トラスト(メトロバンク、MBT)の1年半物社債237億ペソなど。

 特定の用途・目的や発行形態で目立ったのは、上記の個人向け社債のほか、2月のリサール商業銀行(RCB)のグリーンボンド147億5,626万ペソ、9月のアヤラ財閥傘下の発電企業であるACENコーポレーション(ACEN)のグリーンボンド100億ペソなどの環境・温暖化対策社債。また、6月のユニオンバンク オブ フィリピン(UBP)による初のデジタル社債110億ペソも特筆される。デジタル社債は、ブロックチェーン基盤の分散型台帳技術(DLT)を活用した社債原簿の管理と、従来型の社債と同様に流通市場を確保しつつ、従来型の社債では困難だった社債権者の継続的な把握等を可能にするとされている。そして改ざんなどの不正を防止するとともに、利払いの自動化に寄与するとのことである。

 近年の社債類新規上場額は、2016年1,365億ペソ、2017年2,074億ペソ、2018年2,564億ペソ、2019年3,756億ペソ、2020年3,878億3,000万ペソと急ピッチで増加してきた。2021年は市場環境が不透明になってきたこと、高水準であった2019年と2020年の反動という要素もあって2,134億5,000万ペソへと減少した。しかし、2022年は急回復、7月には950億ペソの社債が新規上場され、月間記録を更新した。

 これらの結果、2022年末のPDEx債券取引所における上場社債残高は1兆3,800億ペソ(53社の196銘柄)に達した。債券類は満期が到来すると上場廃止となるので、新規上場額と上場残高が必ずしも連動するわけではないが、2021年末の1兆3,000億ペソ(54社の191銘柄)からは約6%拡大している。

 なお、フィリピンでは、株式や株式に絡んだ派生商品(ワラントなど)の上場、売買はフィリピン証券取引所(PSE)が管轄している。一方、債券やその他の固定利付き金融商品の上場、売買に関しては、PDSグループのPDEx債券取引所が担当している。現在のPDSの株主構成は、フィリピン銀行協会(BAP)21.01%、PSE 20.99%、シンガポール証券取引所(SGX)20%、タタ コンサルタンシーサービス(TCS)アジア8%、ウィスラー テクノロジーサービス8%、サンミゲル4%、フィリピン アメリカンライフ&ジェネラルインシュアランス(フィーラムライフ)4%などである。