2022年のGDP成長率7.6%、46年ぶりの高成長に

前年5.7%から加速、サービス業9.2%成長、個人消費8.3%増

2023/01/26

  フィリピン統計庁(PSA)は1月26日(木)午前10時より、2022年第4四半期(10月~12月)及び年間の国内総生産(GDP)など国民勘定統計を発表した。

<2022年第4四半期の動向>
 2022年第4四半期のフィリピンの国内総生産(GDP)実質(以下同様)成長率は7.2%で、前期(2022年第3四半期)の7.6%、前年同期の7.8%から鈍化したが、依然高い成長率であり、直前予想コンセンサスの6.8%を上回った。これまでに第4四半期GDP統計を発表したASEAN主要国や周辺国の中では、フィリピンの成長率が最も高く、2位のベトナムの5.9%を上回った。また、中国の2.9%を大幅に上回った。

 国家経済開発庁(NEDA)は、「第4四半期の高成長は堅調な国内需要を反映している。労働市場の状況改善や観光客の増加、対面授業の再開等が経済に対する消費者及び投資家の信認を回復させた」とコメントした。

 セクター別では、農林水産業業がマイナス0.3%、鉱工業が4.8%、サービス産業が9.8%で、サービス産業の高成長ぶりが目立った。支出別では、家計最終消費支出(HFCE、個人消費)の伸び率が7.0%で牽引役となった。輸出は14.6%増加した一方、GDPのマイナス勘定となる輸入は5.9%増加にとどまった。海外からの純所得(NPI)が57.5%増加したことで、国民総所得(GNI)成長率は9.3%に達した。

<2022年の年間動向>
 2022年年間の実質GDP成長率は7.6%となり、政府目標の6.5%~7.5%の上限を上回る結果となった。また、現行基準(2018年基準)での遡上記録が残る2001年以降で最高の成長率であり、基準年は異なるが1976年の8.8%以来46年ぶりの高成長である。

 セクター別成長率は、農林水産業が0.5%、鉱工業が6.7%、サービス業が9.2%といずれもプラス成長だった。支出別では、家計最終消費支出(HFCE)が8.3%増加、政府最終消費支出(GFCE)が5.0%増加、総資本形成(GCF)が16.8%増加した。輸出は10.7%増加、輸入は13.1%増加した。NPIが76.4%増と大幅プラスに転じ、その結果GNI成長率は9.9%となり、前年の1.9%から急拡大した。
 
 産業・支出別実質GDP成長率(年率)の推移(2018年基準:単位:%)
項目 構成比 四半期成長率  累計成長率 
22年 2021年 22年  21年  22年
期間 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 年間 年間
GNI(国民総所得) 100.0 -10.5 6.8 2.8 8.1 10.6 9.3 10.5 9.3 1.7 9.9
GDP(国内総生産) 94.0 -3.8 12.1 7.0 7.8 8.2 7.5 7.6 7.2 5.7 7.6
NPI(海外からの純所得) 6.0 -75.9 -55.7 -52.4 16.0 105.4 65.3 95.1 57.5 -51.3 76.4
産業別
農林水産業 9.4 -1.3 0.0 -1.7 1.4 0.2 0.2 2.1 -0.3 -0.3 0.5
鉱工業 30.5 -4.2 21.3 8.7 9.6 10.5 6.4 5.8 4.8 8.5 6.7
 鉱業 0.6 2.0 4.2 4.0 10.7 20.3 -6.6 10.0 1.7 5.0 5.3
 製造業 19.7 0.8 22.4 7.0 7.3 9.8 2.2 3.8 4.2 8.8 5.0
 電気/水道/廃棄物処理業 2.8 1.1 9.5 3.0 4.3 5.6 5.1 4.2 5.6 4.5 5.1
 建設業 7.4 -22.6 27.4 18.0 18.6 14.7 19.5 11.7 6.3 10.0 12.7
サービス産業 60.1 -4.0 9.9 7.7 8.0 8.3 9.1 9.2 9.8 5.4 9.2
 卸小売業/自動車バイク修理業 19.5 -3.4 5.4 6.5 7.1 7.0 9.7 9.0 8.7 4.2 8.7
 運輸保管業 3.5 -19.9 24.3 15.5 18.7 26.3 27.4 24.6 19.2 6.3 23.9
 宿泊飲食サービス業 1.8 -22.5 56.7 12.4 20.2 20.3 30.8 41.6 36.1 7.2 31.8
 情報通信業 3.4 6.6 12.6 8.6 8.7 7.4 10.6 7.7 5.6 9.2 7.8
 金融/保険業 9.0 4.3 5.2 3.9 5.4 7.7 3.7 7.9 9.8 4.7 7.2
 不動産/賃貸業 5.1 -11.7 16.8 3.9 3.4 5.9 4.4 3.6 7.4 2.2 5.3
 専門/業務サービス業 5.9 -3.6 9.7 10.6 7.2 8.3 7.8 8.9 10.0 6.2 8.8
 公務/国防/義務的社会事業 4.9 7.5 5.1 5.4 5.0 0.8 9.1 0.7 3.4 5.7 3.8
 教育 3.4 0.3 12.5 13.6 7.3 8.5 5.5 5.7 11.3 8.3 7.6
 保健衛生/社会事業 1.7 13.0 14.0 16.1 13.6 1.4 1.7 5.1 6.3 14.1 3.6
 その他のサービス業 1.9 -38.7 37.6 19.6 29.6 22.7 40.0 39.0 18.3 2.0 28.3
支出側
家計最終消費支出 75.3 -4.8 7.3 7.1 7.5 10.0 8.6 8.0 7.0 4.2 8.3
政府最終消費支出 12.7 16.1 -4.2 13.8 7.8 3.6 11.1 0.8 3.3 7.1 5.0
総資本形成 21.7 -13.9 83.7 20.8 14.2 20.4 21.1 21.8 5.9 20.3 16.8
 総固定資本形成 21.3 -18.2 39.7 16.0 10.8 11.8 13.6 9.9 6.3 9.9 10.4
輸出 25.7 -8.4 28.6 9.1 7.7 10.4 4.4 13.4 14.6 8.0 10.7
輸入(控除) 34.4 -7.5 40.3 12.7 14.3 15.4 13.8 17.8 5.9 13.0 13.1
(出所:PSA資料より作成、産業/支出構成比:対GDP)

比GDP実質成長率の推移と政府目標(2018年基準、単位:%、予想は2022年12月6日のDBCC設定目標)
14 15 16 17 18 19 20 21 22  23予 24-28予
伸び率 6.3 6.3 7.1 6.9 6.3 6.1 -9.6 5.7 7.6 6.0-7.0  6.5-8.0
(出所:フィリピン統計庁資料より作成)