日立、南北鉄道で1千億円超を正式契約

デジタル信号含むシステム全般、30日に調印式

2023/01/31

 日立製作所の鉄道システム事業におけるグループ会社である日立レールSTSは、昨年11月、フィリピン政府運輸省(DOTr)から、ソリス−マロロス間の新しい通勤鉄道向けに、デジタル信号を含む、鉄道システムの提供および軌道工事に関する契約パッケージ(CP04)を受注と発表済みであるが、1月30日、CP04調印式が実施された。

 昨年に発表された契約金額は約1,140億円(466億ペソ相当)である。このプロジェクトでは、マニラ首都圏と近接する地域を南北に結ぶ南北通勤鉄道(カランバークラーク間)147kmの内、約35.4km、9駅の区間を新設する。国際協力機構(JICA)の円借款の資金が使用される。フィリピンでの急速な持続可能性推進の流れの中で、このプロジェクトは温室効果ガス排出を削減し、自動車に比べて環境に優しい公共交通の利用を促進する。

 日立レールSTS(本社:イタリア・ジェノバ)は、革新的な欧州列車制御システム(ETCS)レベル2を南北通勤鉄道に導入する。ETCSの信号システムは、列車の動きと制限速度を監視するとともに、列車の効率的な運転を可能にしてエネルギー消費を削減する。ETCSレベル2の信号システムは緊急時または制限速度を上回った場合に適用される緊急ブレーキなどを自動的に作動させることにより、安全性を大幅に高めることができる。

 日立レールSTSはデジタル信号のグローバルリーダーであり、英国、イタリア、スペイン、スウェーデン、フランスといった欧州において、また競争が激しい中国やインドでETCS技術を最初に導入した会社の一つである。日立レールは、信号システム、電化、通信システム、車両基地用機器、料金徴収システム、軌道工事を含むフルターンキー契約を通じて、世界で培ったデジタル信号の経験をフィリピンで初めて導入する。

 調印式に際して、DOTrのハイメ・バウティスタ大臣は、「多くのフィリピン人に便益をもたらす事業であり、スケジュールどおりの完工を期待する」とコメントした。越川和彦駐フィリピン日本国大使は「日本は、フィリピンのインフラ開発支援に深くコミットしている。南北鉄道は、多くの人々に計り知れない利益をもたらす旗艦プロジェクトである。日本政府は、これまでも約束を忠実に履行してきたし、今後もそうし続けるだろう」とコメントした。